前ロッテヘッドコーチの今岡真訪氏(47)に在籍4年間の挑戦を聞いた。【取材・構成=酒井俊作】

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大局的に見て、勝てる組織をつくる。この4年間、僕が前ロッテヘッドコーチの今岡真訪氏と会話を重ねたなかで感じてきたスタンスだ。

井口体制で優勝するため、チーム作りに尽力してきた。近年のロッテのドラフト1位は輝かしい顔ぶれがそろう。19年佐々木朗を筆頭に安田、藤原ら才能豊かな若手が注目される。

だが、1年前の秋、今岡氏は言った。「このチームは中村奨吾。彼が柱にならないといけない」。今季プロ7年目、29歳で生え抜きの主力内野手だ。その後、キャプテン就任でリーダーの自覚をうながし、全試合出場。不動の二塁手としてチームを支え続けた。「組織が人を育てる」と話す通りのマネジメントだろう。

「個に生きる」。阪神での現役時代から今岡氏が貫くプロフェッショナルの本質だろう。やるか、やらないかは自分次第。思い悩めば、自ら指導者に聞きに行くはずだ。だから教えることと見ることの「1対9」の考え方に行き着くのだろう。選手に声を掛ける光景はほとんどなく、一見、突き放しているように映るが実は選手の自覚を重んじている。「放っておいても育つよ、いい選手は」とは、放言ではなく、一流になる選手の姿をとらえている。

僕にとって耳の痛い言葉だ。かつて、名コーチが有望株を熱心に教えれば「○○コーチに弟子入り」などと安直な記事を書いては、選手とコーチの“美しい関係”を持ち上げてきた。だが、冷静にグラウンドを見れば、組織のコーチなのに売り出し中の若手だけを教えたり、特定の選手とのおかしな関係が浮き彫りになり、果てには試合前に対戦相手と長時間、談笑しているコーチもいたりする。

コーチ主導ではなく、自分を背負った選手は目の色を変える。数年前、今岡氏は言った。「選手にコーチがマンツーマン指導しない環境なら、選手はメチャクチャ練習するよ」。言い訳や逃げ道を断つ。自ら人生を背負う。今岡氏の考え方は、あるべきプロフェッショナルの姿を示す。安田、藤原、山口…。今岡氏はこの4年間、彼らが来季以降、主力でロッテを引っ張るための道を整えてきたようにも映った。【酒井俊作】