≪2020/12/7≫
“メンタル”、“修正力”、“思考力”の向上が見えたロッテ・山本大貴
一軍で12試合に登板
「もっともっと自分のレベルをあげて、一軍で呼ばれて投げる時に経験不足だから仕方がないとかはしたくなくて、一発目からバシッとあわせられるぐらい自信をもって投げたいと思っていました。そういう意味では1年間悔しいシーズンで終わったなと思います」。
昨季終了後にこのように話していたロッテの山本大貴。悔しい1年を経て、今季はビハインドゲームを中心に12試合に一軍登板し、防御率2.63と、“左”のリリーフが手薄な中で存在感を示した。
今季を振り返れば、春季キャンプでは思うようにアピールできていなかった。2月9日の楽天モンキーズとの国際交流試合に登板し、1イニングを投げ、4四死球、2失点の大乱調。その後は一軍の練習試合、オープン戦での登板はなく、ファームでの調整が続いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が遅れたが、一軍の練習試合での登板機会はなかった。ただ、二軍公式戦の映像をみると、ボールが先行する場面もあったが、ストレートは145キロ以上投げるなどかなり力強さを増した印象を受けた。
7月14日に一軍昇格を果たし、17日の日本ハム戦(札幌ドーム)で久しぶりに一軍のマウンドに上がった。四球と二塁打で二、三塁のピンチを招くも、1回を無失点に抑え、ストレートは最速147キロで常時140キロ台中盤から後半を計測。変化球も、中島卓也を空振り三振に仕留めた3ボール2ストライクから投じた外に逃げるボールは素晴らしかった。初登板から5試合連続で無失点に抑えていたが、7月29日に一軍登録を抹消。
8月28日に再昇格を果たすと9月22日の楽天戦で1イニングを投げて4失点したが、そのほかの登板はいずれも無失点に抑えた。9月17日の西武戦では先発・岩下大輝が完封目前の9回に1点を失い、無死二、三塁という場面で登板し、栗山巧を三邪飛、山川穂高を空振り三振、森友哉を三ゴロで岩下が残した走者を還すことなく、試合を締めた。
昨季までコーチに頼りすぎる場面も
山本は昨年のシーズン序盤まで、コーチ陣に頼りすぎるところがあった。大隣憲司二軍投手コーチは昨年6月の取材で「最近、山本とかにも言っているんですけど、『俺がいなかったらどうする?』と。毎回(全体練習が終わったあとに)キャッチボールとかしているじゃないですか。それもいいけど、『もし、一軍に行きましたずっと投げています。俺おらんで』と。最近こうなっているなとか自分で気づけるようにならないと変われないよ。今変われても実際、次に同じ場面を迎えたとき、またあかんかったらファームになる。そういうのも含めてやらないといけないよと言っていますね」と話していた。
確かに昨年の春先は全体練習後に大隣コーチとキャッチボールすることが多かった。大隣コーチを取材後の19年7月以降、山本の練習後の動きに注目すると、同年の夏頃からはファームのブルペン捕手と全体練習後にキャッチボールし、キャッチボール後にコミュニケーションを取る場面が増えていった。
山本自身も昨季終了後に「最初は頼っていたんですけど、いざ一軍にあがったことを考えると、大隣コーチは二軍の投手コーチなので、隣さんに「俺がいないとき、どうするんだ!」と言われました。そこから自分で考えるようになりました。本当に迷ったときに一言自分で聞きにいくというスタンスがある程度固まってからいい方向に向かっていきました」と明かした。
小野二軍投手コーチも昨年11月の取材で「自分でやっている姿が(19年)8月くらいからあった。ファームでやられて、自分のなかでなんとかしなくちゃというものが、おそらくあったと思う」と変化を感じ取っていた。
切り替え力
昨季の終盤から自分で考えられるようになったことに加え、失点した後の登板でも、ズルズルと引きずらなくなり、“切り替え”がうまくできるようになったように見える。昨季でいえばフェニックスリーグの広島戦で打ち込まれたが、次の登板ではしっかりと抑えた。今季も9月22日の楽天戦で4失点したが、24日の楽天戦は1回を13球、三者凡退に打ち取った。
小野二軍投手コーチも昨年11月の取材で、「映像で(フェニックスリーグの広島戦で)やられている姿を見ましたが、その次の試合はしっかり自分の投球ができていた。自分のなかで修正ポイントを見つけ、切り替えられているのかなと感じています」と分析していた。
オフにプエルトリコのウインターリーグを経験した山本は、“切り替え”について、今年1月の取材でこのように話している。
「周りの外国人選手は、切り替えが上手。楽観的というか、そういう面では周りの空気が自分をそうさせていたという感じだったので、勉強になりました。悪くても、良くても何がよかったのか、何が悪かったのかを反省して、次の日にチーム移動で普通に話しかけてくれる。どれだけ悪くても次やれよ、みたいな雰囲気でした」。
「そういう雰囲気を味わえただけでも、いいところは日本でもやっていかないともったいないかなと思いましたね。そういった面では、さらに勉強になったというか、自分の切り替えが、まだまだそこまでできていなかったんじゃないかなと思うくらいの経験ができたのでよかったです」。
新型コロナウイルス拡大の影響で直接取材はできていないので、ここからは私の推測だが、今季一軍で走者を出しながらも粘りの投球ができていたのも、昨年終盤からの“メンタル面”、“修正力”、“思考力”の向上、自身に今何が足りていないのかを客観的に分析できるようになったことも大きいのではないだろうかーー。それだけに、新型コロナウイルスの濃厚接触者により10月6日に一軍登録抹消されたあと、再昇格できなかったのはもったいなかった。
昨季まで7年連続40登板以上果たした左腕・松永昂大が国内FA権を行使し、来季もマリーンズでプレーするか不透明な状況。来季は、一軍で自身の居場所を確立したい。
文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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≪2020/12/8≫
スタメン、代打で結果を残し続けたロッテ・清田育宏
ライバル加入も
ソフトバンクからFAで福田秀平が加入し、外野のレギュラー争いが熾烈になったが、スタメンでときには代打でロッテ・清田育宏の存在感の大きさが改めてわかる1年となった。
ソフトバンクとの開幕3連戦は開幕戦がレフト・荻野貴司、センター・福田秀、ライト・マーティン、2戦目と3戦目はレフト・角中勝也、センター・荻野、ライト・マーティンがスタメン出場したため、清田はベンチスタート。それどころか、開幕3連戦は1試合も出番がなかった。
ホーム開幕戦、チーム4試合目となった6月23日のオリックス戦で、出番が回ってくる。『3番・レフト』でスタメン出場した清田は、初回一死一塁で迎えた今季初打席、アルバースが2ボール1ストライクから投じた3球目のツーシームを振り抜くと、打球は無観客の左中間スタンドに突き刺す今季第1号2ランとなった。
シーズン序盤は今季初打席で本塁打、6月30日の楽天戦で第1打席に2ランを放つなど1打席目に滅法強かった。開幕から7月19日までの1カ月間の打率は.255だったが、第1打席に限っては打率.438(16-7)、2本塁打、7打点と打ちまくった。
代打の打率は.500
“1打席”でいえば、今季も一振りに勝負をかける代打で抜群の存在感を見せた。昨季代打で打率.296(27-8)、1本塁打、8打点の成績を残したが、今季も打率.500(16-8)、0本塁打、2打点、出塁率は驚異の.619を記録した。
特に8月は代打で6試合に出場したが5試合で出塁し、8月16日の日本ハム戦から9月13日の西武戦にかけて代打で出場した5試合全て出塁。8月23日のソフトバンク戦から代打で出場した試合は3試合連続で安打を放った。
9月13日のオリックス戦では、2-2の7回二死満塁で代打で登場し、山田修義が投じた外角の変化球に食らいつき、ショートへの勝ち越し内野安打。同月19日の日本ハム戦では3点を追う9回に、フェンス直撃の適時二塁打を放つなど、代打での得点圏打率は.333だった。
昨季の取材で清田は「代打だと割り切りというか、積極性のなかにも冷静さをもたないといけない」と代打の心構えを語っている。
頼りになった10、11月
クライマックスシリーズ進出を争うシーズン終盤は、チーム全体に当たりが止まっているなか、一人気を吐くような働きぶりだった。
清田は新型コロナウイルス感染により10月6日に一軍登録を抹消されたが、16日に再昇格を果たすと、18日の日本ハム戦、20日の西武戦は代打で出場し、四死球を選ぶ。21日の西武戦から先発復帰すると、23日のオリックス戦では2打席連続本塁打を放つなど3安打2打点の大暴れ。
27日のソフトバンク戦ではチーム全体で5安打のなか、清田が一人3安打。10月31日の楽天戦では、安田尚憲に変わって4番に座り、11月1日の楽天戦、3日のソフトバンク戦ともに1本塁打2打点の活躍を見せた。
10、11月のチーム打率が.213(1001-213)、19本塁打、93得点、出塁率.296だったなか、清田の10、11月は打率.327(49-16)、4本塁打、7打点、出塁率は.431と、まさに“清田頼み”という状態だった。
試合前の打撃練習
スタメンでも代打でも結果を残し続けた清田。昨季は試合前の打撃練習では、速い球に目を慣らすため、川崎雄介打撃投手に最後の数球は速いボールを投げてもらいより実戦に近い形で、試合に向けた準備を行った。取材制限があったため直接本人に確認はできなかったが、今季の試合前の打撃練習を見ても、川崎打撃投手に最後の数球速いボールを投げてもらっているように見えた。
また今季の打撃練習中、レフト、センター、ライトに広角に打ちわけることが多かったが、9月27日のソフトバンク戦の試合前の打撃練習ではライト方向中心に打てば、10月18日の日本ハム戦の試合前打撃練習はレフトへ引っ張った打球を中心に打つという日もあった。またある時は、足をあげずにややノーステップ気味に打っていたことも。
道具に注目すると、7月29日の楽天戦の試合前練習では、最初白木のバットで打ち始めるも、途中で白と黒のバットに変更し、また白木のバットで打っていた。今季の打撃練習では、シーズン中盤までは白木のバットと白と黒のバット、シーズン最終盤は白と黒のバットに時折、黒色のバットで打っていたように思う。バッティンググローブも7月下旬の試合前練習では、右の打撃投手のときだけ左手に手袋をし、左の打撃投手のときには両手に手袋をはめていた。
その日の自身の状態に応じてバットや打球方向など、工夫を凝らしていたのだろう。
来季もマリーンズ
振り返れば、昨季終了直後の取材で清田は2020年シーズンに向けて、「井口監督になってからAクラスに入っていない。今年(2019年)Aクラス争いができたというのは、僕たち選手全員にとってプラスになると思う。来年(2020年)はAクラスというよりか優勝争い。最低でもAクラスという高い目標をもってやっていきたいと思います」と決意を述べたが、シーズン終盤、打線では清田の頑張りが大きく、優勝こそ逃したが4年ぶりにクライマックスシリーズ進出を果たした。
12月4日にはFA権を行使せず残留も決まった。清田は球団を通じて「ロッテに入った時から尊敬をして目標にしてきた井口監督を胴上げをしたいという気持ちが強いです。その戦力になりたいという想いが自分の中で一番。ロッテのためにこれからも頑張りたいです」とコメント。来季もマリーンズの勝利のため、勝負強い打撃を披露してくれることだろう。
文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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≪2020/12/8≫
【千葉魂】平沢悔しいプロ5年目 1軍出場ゼロ、来季の雪辱誓う
悔しい一年となってしまった。平沢大河内野手のプロ5年目は1軍に上がることなく終わった。10月15日、横浜市内の病院で右肘の骨棘(こっきょく)切除・遊離軟骨除去術を行いスローイングが再開できるまで2カ月。チームが熾烈(しれつ)な優勝争いをしている中で無念のリタイアとなってしまった。
「思うようにいかない一年でした。悔しい気持ちでいっぱいです」
12月3日、平沢は契約更改を終え、会見に臨んだ。公の場で話をするのは久しぶりの事だった。会見の中で悔しかった一年を少しずつ振り返った。
□ ■ □
今年はルーキーで大学卒業の同じ年の選手たちがプロ入りしてきた。4年先にプロの世界に入り1軍で236試合に出場してきた自負があった。しかし、1軍で結果を出したのは同じ年のルーキーたちだった。オープン戦では同じ内野手の福田光輝がアピールを続けた。シーズンが始まると佐藤都志也捕手が6月27日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)でサヨナラ安打を放つなど60試合に出場して2本塁打12打点を記録。積極的な打撃で代打を中心にチームの勝利に貢献した。
そんな同じ年の選手たちの活躍を平沢は「1軍で同じ年の選手が活躍しているのはうれしいし刺激になった。でも、やっぱり負けられない想(おも)いが強かった」と話した。年下の選手の活躍も目立ったシーズンでもあった。若くして4番に座った3年目の安田尚憲内野手。終盤に1軍昇格し3本塁打を放つなど大きな輝きを見せた2年目の藤原恭大外野手。同じ高卒ドラフト1位として本来であれば先頭を走らなくてはいけない平沢は、しかし2軍にいた。ただひたすら黙々と練習に明け暮れファームで結果を出そうと、もがいた。そして10月。かねてから気になっていた肘の手術に踏み切った。万全の状態で来年を迎えるための決断だった。
□ ■ □
福岡で行われていたホークスとのクライマックスシリーズはリハビリ中。テレビで試合を観戦した。「悔しくて見ていないという選手もいるかもしれないけどボクは見ました。レギュラーシーズンも含めて見るようにしていました。今、こういう気持ちなのかなあとかボクだったらこの場面でどうするか、この打席でどんなボールを待つかなどを考えながら見ていました」と平沢。リハビリでは上半身はあまり動かせないため下半身を中心に鍛え上げた。気づけば下半身は一回り大きくなった。それは来年に向けての収穫の一つとなっている。
「下半身のトレーニングをして体が大きくなりました。手術前も課題にしていた守備を2軍で徹底的に練習をして良くなっているという実感もあった。ミスが減った。下半身を使ったスローイングができていた。悔しい一年でしたけど収穫はあった。だから今は先を見ています。来年、この悔しさをぶつける。応援してくれているファンの期待に応えたいと思う」
人生において何がマイナスで何がプラスなのか。その時は誰にもわからない。大事なのはどんなことが起こっても自分の人生において必要な大切な経験をしていると感じながら前を向いて生きることだ。平沢が注目を集めてマリーンズに入団してから5年の月日が流れた。その過程は決して満足いくものではなく思い通りにはいかない日々。ただ懸命に前を向いていて過ごしてきたことだけは確かだ。
来年はまた熾烈な競争が待っている。新人も加入する。虎視眈々(たんたん)と遊撃の定位置獲りを狙うライバルがひしめき合う中で春のキャンプから存在感を見せようと燃える。悔しい想いは背番号「13」が誰よりも強い。想いが若者を強く後押しする。
(千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)
(千葉日報)
“メンタル”、“修正力”、“思考力”の向上が見えたロッテ・山本大貴
一軍で12試合に登板
「もっともっと自分のレベルをあげて、一軍で呼ばれて投げる時に経験不足だから仕方がないとかはしたくなくて、一発目からバシッとあわせられるぐらい自信をもって投げたいと思っていました。そういう意味では1年間悔しいシーズンで終わったなと思います」。
昨季終了後にこのように話していたロッテの山本大貴。悔しい1年を経て、今季はビハインドゲームを中心に12試合に一軍登板し、防御率2.63と、“左”のリリーフが手薄な中で存在感を示した。
今季を振り返れば、春季キャンプでは思うようにアピールできていなかった。2月9日の楽天モンキーズとの国際交流試合に登板し、1イニングを投げ、4四死球、2失点の大乱調。その後は一軍の練習試合、オープン戦での登板はなく、ファームでの調整が続いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が遅れたが、一軍の練習試合での登板機会はなかった。ただ、二軍公式戦の映像をみると、ボールが先行する場面もあったが、ストレートは145キロ以上投げるなどかなり力強さを増した印象を受けた。
7月14日に一軍昇格を果たし、17日の日本ハム戦(札幌ドーム)で久しぶりに一軍のマウンドに上がった。四球と二塁打で二、三塁のピンチを招くも、1回を無失点に抑え、ストレートは最速147キロで常時140キロ台中盤から後半を計測。変化球も、中島卓也を空振り三振に仕留めた3ボール2ストライクから投じた外に逃げるボールは素晴らしかった。初登板から5試合連続で無失点に抑えていたが、7月29日に一軍登録を抹消。
8月28日に再昇格を果たすと9月22日の楽天戦で1イニングを投げて4失点したが、そのほかの登板はいずれも無失点に抑えた。9月17日の西武戦では先発・岩下大輝が完封目前の9回に1点を失い、無死二、三塁という場面で登板し、栗山巧を三邪飛、山川穂高を空振り三振、森友哉を三ゴロで岩下が残した走者を還すことなく、試合を締めた。
昨季までコーチに頼りすぎる場面も
山本は昨年のシーズン序盤まで、コーチ陣に頼りすぎるところがあった。大隣憲司二軍投手コーチは昨年6月の取材で「最近、山本とかにも言っているんですけど、『俺がいなかったらどうする?』と。毎回(全体練習が終わったあとに)キャッチボールとかしているじゃないですか。それもいいけど、『もし、一軍に行きましたずっと投げています。俺おらんで』と。最近こうなっているなとか自分で気づけるようにならないと変われないよ。今変われても実際、次に同じ場面を迎えたとき、またあかんかったらファームになる。そういうのも含めてやらないといけないよと言っていますね」と話していた。
確かに昨年の春先は全体練習後に大隣コーチとキャッチボールすることが多かった。大隣コーチを取材後の19年7月以降、山本の練習後の動きに注目すると、同年の夏頃からはファームのブルペン捕手と全体練習後にキャッチボールし、キャッチボール後にコミュニケーションを取る場面が増えていった。
山本自身も昨季終了後に「最初は頼っていたんですけど、いざ一軍にあがったことを考えると、大隣コーチは二軍の投手コーチなので、隣さんに「俺がいないとき、どうするんだ!」と言われました。そこから自分で考えるようになりました。本当に迷ったときに一言自分で聞きにいくというスタンスがある程度固まってからいい方向に向かっていきました」と明かした。
小野二軍投手コーチも昨年11月の取材で「自分でやっている姿が(19年)8月くらいからあった。ファームでやられて、自分のなかでなんとかしなくちゃというものが、おそらくあったと思う」と変化を感じ取っていた。
切り替え力
昨季の終盤から自分で考えられるようになったことに加え、失点した後の登板でも、ズルズルと引きずらなくなり、“切り替え”がうまくできるようになったように見える。昨季でいえばフェニックスリーグの広島戦で打ち込まれたが、次の登板ではしっかりと抑えた。今季も9月22日の楽天戦で4失点したが、24日の楽天戦は1回を13球、三者凡退に打ち取った。
小野二軍投手コーチも昨年11月の取材で、「映像で(フェニックスリーグの広島戦で)やられている姿を見ましたが、その次の試合はしっかり自分の投球ができていた。自分のなかで修正ポイントを見つけ、切り替えられているのかなと感じています」と分析していた。
オフにプエルトリコのウインターリーグを経験した山本は、“切り替え”について、今年1月の取材でこのように話している。
「周りの外国人選手は、切り替えが上手。楽観的というか、そういう面では周りの空気が自分をそうさせていたという感じだったので、勉強になりました。悪くても、良くても何がよかったのか、何が悪かったのかを反省して、次の日にチーム移動で普通に話しかけてくれる。どれだけ悪くても次やれよ、みたいな雰囲気でした」。
「そういう雰囲気を味わえただけでも、いいところは日本でもやっていかないともったいないかなと思いましたね。そういった面では、さらに勉強になったというか、自分の切り替えが、まだまだそこまでできていなかったんじゃないかなと思うくらいの経験ができたのでよかったです」。
新型コロナウイルス拡大の影響で直接取材はできていないので、ここからは私の推測だが、今季一軍で走者を出しながらも粘りの投球ができていたのも、昨年終盤からの“メンタル面”、“修正力”、“思考力”の向上、自身に今何が足りていないのかを客観的に分析できるようになったことも大きいのではないだろうかーー。それだけに、新型コロナウイルスの濃厚接触者により10月6日に一軍登録抹消されたあと、再昇格できなかったのはもったいなかった。
昨季まで7年連続40登板以上果たした左腕・松永昂大が国内FA権を行使し、来季もマリーンズでプレーするか不透明な状況。来季は、一軍で自身の居場所を確立したい。
文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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≪2020/12/8≫
スタメン、代打で結果を残し続けたロッテ・清田育宏
ライバル加入も
ソフトバンクからFAで福田秀平が加入し、外野のレギュラー争いが熾烈になったが、スタメンでときには代打でロッテ・清田育宏の存在感の大きさが改めてわかる1年となった。
ソフトバンクとの開幕3連戦は開幕戦がレフト・荻野貴司、センター・福田秀、ライト・マーティン、2戦目と3戦目はレフト・角中勝也、センター・荻野、ライト・マーティンがスタメン出場したため、清田はベンチスタート。それどころか、開幕3連戦は1試合も出番がなかった。
ホーム開幕戦、チーム4試合目となった6月23日のオリックス戦で、出番が回ってくる。『3番・レフト』でスタメン出場した清田は、初回一死一塁で迎えた今季初打席、アルバースが2ボール1ストライクから投じた3球目のツーシームを振り抜くと、打球は無観客の左中間スタンドに突き刺す今季第1号2ランとなった。
シーズン序盤は今季初打席で本塁打、6月30日の楽天戦で第1打席に2ランを放つなど1打席目に滅法強かった。開幕から7月19日までの1カ月間の打率は.255だったが、第1打席に限っては打率.438(16-7)、2本塁打、7打点と打ちまくった。
代打の打率は.500
“1打席”でいえば、今季も一振りに勝負をかける代打で抜群の存在感を見せた。昨季代打で打率.296(27-8)、1本塁打、8打点の成績を残したが、今季も打率.500(16-8)、0本塁打、2打点、出塁率は驚異の.619を記録した。
特に8月は代打で6試合に出場したが5試合で出塁し、8月16日の日本ハム戦から9月13日の西武戦にかけて代打で出場した5試合全て出塁。8月23日のソフトバンク戦から代打で出場した試合は3試合連続で安打を放った。
9月13日のオリックス戦では、2-2の7回二死満塁で代打で登場し、山田修義が投じた外角の変化球に食らいつき、ショートへの勝ち越し内野安打。同月19日の日本ハム戦では3点を追う9回に、フェンス直撃の適時二塁打を放つなど、代打での得点圏打率は.333だった。
昨季の取材で清田は「代打だと割り切りというか、積極性のなかにも冷静さをもたないといけない」と代打の心構えを語っている。
頼りになった10、11月
クライマックスシリーズ進出を争うシーズン終盤は、チーム全体に当たりが止まっているなか、一人気を吐くような働きぶりだった。
清田は新型コロナウイルス感染により10月6日に一軍登録を抹消されたが、16日に再昇格を果たすと、18日の日本ハム戦、20日の西武戦は代打で出場し、四死球を選ぶ。21日の西武戦から先発復帰すると、23日のオリックス戦では2打席連続本塁打を放つなど3安打2打点の大暴れ。
27日のソフトバンク戦ではチーム全体で5安打のなか、清田が一人3安打。10月31日の楽天戦では、安田尚憲に変わって4番に座り、11月1日の楽天戦、3日のソフトバンク戦ともに1本塁打2打点の活躍を見せた。
10、11月のチーム打率が.213(1001-213)、19本塁打、93得点、出塁率.296だったなか、清田の10、11月は打率.327(49-16)、4本塁打、7打点、出塁率は.431と、まさに“清田頼み”という状態だった。
試合前の打撃練習
スタメンでも代打でも結果を残し続けた清田。昨季は試合前の打撃練習では、速い球に目を慣らすため、川崎雄介打撃投手に最後の数球は速いボールを投げてもらいより実戦に近い形で、試合に向けた準備を行った。取材制限があったため直接本人に確認はできなかったが、今季の試合前の打撃練習を見ても、川崎打撃投手に最後の数球速いボールを投げてもらっているように見えた。
また今季の打撃練習中、レフト、センター、ライトに広角に打ちわけることが多かったが、9月27日のソフトバンク戦の試合前の打撃練習ではライト方向中心に打てば、10月18日の日本ハム戦の試合前打撃練習はレフトへ引っ張った打球を中心に打つという日もあった。またある時は、足をあげずにややノーステップ気味に打っていたことも。
道具に注目すると、7月29日の楽天戦の試合前練習では、最初白木のバットで打ち始めるも、途中で白と黒のバットに変更し、また白木のバットで打っていた。今季の打撃練習では、シーズン中盤までは白木のバットと白と黒のバット、シーズン最終盤は白と黒のバットに時折、黒色のバットで打っていたように思う。バッティンググローブも7月下旬の試合前練習では、右の打撃投手のときだけ左手に手袋をし、左の打撃投手のときには両手に手袋をはめていた。
その日の自身の状態に応じてバットや打球方向など、工夫を凝らしていたのだろう。
来季もマリーンズ
振り返れば、昨季終了直後の取材で清田は2020年シーズンに向けて、「井口監督になってからAクラスに入っていない。今年(2019年)Aクラス争いができたというのは、僕たち選手全員にとってプラスになると思う。来年(2020年)はAクラスというよりか優勝争い。最低でもAクラスという高い目標をもってやっていきたいと思います」と決意を述べたが、シーズン終盤、打線では清田の頑張りが大きく、優勝こそ逃したが4年ぶりにクライマックスシリーズ進出を果たした。
12月4日にはFA権を行使せず残留も決まった。清田は球団を通じて「ロッテに入った時から尊敬をして目標にしてきた井口監督を胴上げをしたいという気持ちが強いです。その戦力になりたいという想いが自分の中で一番。ロッテのためにこれからも頑張りたいです」とコメント。来季もマリーンズの勝利のため、勝負強い打撃を披露してくれることだろう。
文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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≪2020/12/8≫
【千葉魂】平沢悔しいプロ5年目 1軍出場ゼロ、来季の雪辱誓う
悔しい一年となってしまった。平沢大河内野手のプロ5年目は1軍に上がることなく終わった。10月15日、横浜市内の病院で右肘の骨棘(こっきょく)切除・遊離軟骨除去術を行いスローイングが再開できるまで2カ月。チームが熾烈(しれつ)な優勝争いをしている中で無念のリタイアとなってしまった。
「思うようにいかない一年でした。悔しい気持ちでいっぱいです」
12月3日、平沢は契約更改を終え、会見に臨んだ。公の場で話をするのは久しぶりの事だった。会見の中で悔しかった一年を少しずつ振り返った。
□ ■ □
今年はルーキーで大学卒業の同じ年の選手たちがプロ入りしてきた。4年先にプロの世界に入り1軍で236試合に出場してきた自負があった。しかし、1軍で結果を出したのは同じ年のルーキーたちだった。オープン戦では同じ内野手の福田光輝がアピールを続けた。シーズンが始まると佐藤都志也捕手が6月27日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)でサヨナラ安打を放つなど60試合に出場して2本塁打12打点を記録。積極的な打撃で代打を中心にチームの勝利に貢献した。
そんな同じ年の選手たちの活躍を平沢は「1軍で同じ年の選手が活躍しているのはうれしいし刺激になった。でも、やっぱり負けられない想(おも)いが強かった」と話した。年下の選手の活躍も目立ったシーズンでもあった。若くして4番に座った3年目の安田尚憲内野手。終盤に1軍昇格し3本塁打を放つなど大きな輝きを見せた2年目の藤原恭大外野手。同じ高卒ドラフト1位として本来であれば先頭を走らなくてはいけない平沢は、しかし2軍にいた。ただひたすら黙々と練習に明け暮れファームで結果を出そうと、もがいた。そして10月。かねてから気になっていた肘の手術に踏み切った。万全の状態で来年を迎えるための決断だった。
□ ■ □
福岡で行われていたホークスとのクライマックスシリーズはリハビリ中。テレビで試合を観戦した。「悔しくて見ていないという選手もいるかもしれないけどボクは見ました。レギュラーシーズンも含めて見るようにしていました。今、こういう気持ちなのかなあとかボクだったらこの場面でどうするか、この打席でどんなボールを待つかなどを考えながら見ていました」と平沢。リハビリでは上半身はあまり動かせないため下半身を中心に鍛え上げた。気づけば下半身は一回り大きくなった。それは来年に向けての収穫の一つとなっている。
「下半身のトレーニングをして体が大きくなりました。手術前も課題にしていた守備を2軍で徹底的に練習をして良くなっているという実感もあった。ミスが減った。下半身を使ったスローイングができていた。悔しい一年でしたけど収穫はあった。だから今は先を見ています。来年、この悔しさをぶつける。応援してくれているファンの期待に応えたいと思う」
人生において何がマイナスで何がプラスなのか。その時は誰にもわからない。大事なのはどんなことが起こっても自分の人生において必要な大切な経験をしていると感じながら前を向いて生きることだ。平沢が注目を集めてマリーンズに入団してから5年の月日が流れた。その過程は決して満足いくものではなく思い通りにはいかない日々。ただ懸命に前を向いていて過ごしてきたことだけは確かだ。
来年はまた熾烈な競争が待っている。新人も加入する。虎視眈々(たんたん)と遊撃の定位置獲りを狙うライバルがひしめき合う中で春のキャンプから存在感を見せようと燃える。悔しい想いは背番号「13」が誰よりも強い。想いが若者を強く後押しする。
(千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)
(千葉日報)
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