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知らないことや気になることをいろいろと調べて記録していきます
 




世の中はあらゆる分野でデジタル化が進んでいる。
その中で我々は比喩的に、デジタル = ハイテク、科学的 アナログ = ローテク、経験、勘 といった捉え方をしていて、極端に言うと「デジタル = 新しい、アナログ = 古い」と考えてしまいがちだが、これはさすがに正しくない。
情報処理の観点からは、デジタルは状態を示す量を数値化して処理すること、アナログは連続した量を他の連続した量で表示することで、時計、体重計、温度計などを例に取ればわかりやすい。
そしてデジタルの象徴のようなコンピュータ (=計算機) にもアナログがある。デジタル化の流れにに対抗してアナログコンピュータについて、技術的な内容には極力触れずに展開してみよう。

アナログコンピュータ (ここでは広義でアナログ計算機とする) は、物理量によって実数値を表現し、それを変換する装置によって問題を解く計算機である。入力と出力にはアナログ値が用いられる。
歴史は古く、紀元前3500年頃から利用された日時計まで遡ることができる。1620年頃に発明された計算尺もアナログコンピュータだ (これに対してそろばんはデジタルである)。

アナログコンピュータは、機械式アナログ計算機と電子式アナログ計算機に分類することができる。

機械式アナログ計算機には先述の日時計や計算尺も含まれるが、この代表的なものは、1876年に発明され1930年頃に実用化された微分解析機だ。




微分解析機
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%AE%E5%88%86%E8%A7%A3%E6%9E%90%E6%A9%9F

これは数値を物の長さや電流の強さに置き換えて計算するもので、大小の金属回転盤やギアをモーターで動かし、積分に相当する作業をやらせて微分方程式の解を求めるというものだ。その後の戦争において軍事目的の弾道計算などにも用いられた。

そして昨年12月に東京理科大学 近代科学資料館にて、当時の微分解析機を70年ぶりに再生するプロジェクトの完成報告会が行われた。
太平洋戦争中に日本国内で3台製作された微分解析機のうち現存する唯一の機械を、一年半かけて再生したもので、積分機3台、入力卓2台、出力卓1台から成る3x3mほどの機械だ。
以下の記事に入力操作、微分解析実演などの動画がある。

PC Watch 東京理科大、機械式アナログコンピュータ「微分解析機」を70年ぶりに再生
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20141202_678367.html

この再生はたいへん大きな功績であり、今後のさまざまな分野の研究において貴重な資料となりそうだ。 一般公開もしているので是非足を運んでみたい。

もうひとつの分類は電子式アナログ計算機で、コンピュータ = 電子式計算機 とするのであれば、電子式アナログ計算機は狭義に「アナログコンピュータ」と呼ぶことができる。

Computer History Museum / Analog Goes Electronic
http://www.computerhistory.org/revolution/analog-computers/3/150

The analog computer’s evolution from mechanical to electronic began during World War II. The innovation brought greater computing speed, although that didn’t always make electronic analog computers better than their mechanical forebears.

Nonetheless, by the 1950s electronic machines had largely replaced mechanical. Companies began producing diverse models, and electronic analog computers remained a bedrock of engineering and scientific calculating for a generation.
Reeves Instrument was one of the earliest firms to offer fully-assembled, electronic analog computers.

During World War II, Germany’s V-2 rockets heralded the arrival of a frightening new weapon. The missiles used an op-amp analog computer for their onboard guidance systems, though they still proved too inaccurate to be a serious military threat.

America, recognizing the potential of guided rocketry, launched Project Cyclone immediately after the war. Funded by the U.S. Navy, Project Cyclone used the Reeves Electronic Analog Computer (REAC) developed by Reeves Instruments to simulate, develop, and test guided missile systems.
A commercial version of REAC soon followed, with more than 60 installed by 1950.




このようにProject Cycloneとして当時のReeves Instrument Corporationによって開発・実用化された"REAC"が、アナログコンピュータの祖と言うことができるようだ。その後1960年頃までいくつかのメーカーによってアナログコンピュータが開発・発売された。

しかし当然ではあるが、アナログコンピュータには(理論上ではなく) 現実の特性上の限界があり、ほとんどの計算はデジタルコンピュータによって行われることになった。
その一方で、アメリカ・イリノイ州にあるcomdyna Incは現在でもアナログコンピュータの製造・販売を行っている。

Comdyna Analog Computer
http://www.comdyna.com/

何とも"アナログ"な感じのホームページで、しかも1968年から36年生産を続けてきたGP-6という機種の製造を中止するというお知らせであり、とても残念だ。
そのGP-6の動作は以下の動画のようなもので、何とも言えない味がある。



上記の微分解析機再生プロジェクトの会見において、情報通信研究機構理事長の坂内正夫氏は「量子コンピュータにはアナログ的コンピュータの要素がある。また時代を経るとアナログコンピュータの時代が来るかもしれない。これ(微分解析機)が捨てられることなく活用されるのを期待している」と述べられている。
まさにそのとおりで、技術は日々の進歩の積み重ねであり、どのような高い技術が求められることになっても、その基礎となった理論や技術を大事にしなければならない。コンピュータや先進の技術はアナログがもととなっていることを忘れてはいけない。



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