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映画は20世紀に飛躍的に発展した文化だ。総務省統計局の資料によると日本国内の映画の封切本数は年間で800本を超えている。1日2本以上であり、これまでに世に出た映画は星の数ほどになるだろう。
http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y2316000.xls

映画は観る人の好みがあり、みな自分にとっての最高の映画があるだろう。しかし万人が認める史上最高の映画というのはなかなか決められるものではない。
一方でハリウッドでは史上最低の映画については共通の見解がある。それはエド・ウッド監督による「Plan 9 from Outer Space」(プラン9・フロム・アウター・スペース)だ。

エド・ウッド (「Plan 9 from Outer Space」DVDの解説とWikipediaをもとに編集)

1924年10月10日、ペンシルバニア生まれ。22歳で海兵隊を除隊後、演劇に興味を持ち巡回ショーの一員となる。1948年に「The Casual Company」という芝居の脚本・演出・製作・主演を担当するが失敗に終わる。同年「The Street of Laredo」という短編西部劇で映画界デビューするはずだったが、ラッシュを観たプロデューサーがあまりの内容のなさに怒り手を引いてしまったため、未完成・未公開に終わる。ハリウッドで仕事を探す毎日を送っていたエド・ウッドは落ち目の存在だったベラ・ルゴシと出会い、彼のネームバリューを前面に押し出して「グレンとグレンダ」(1953)を監督する。
自身が最高傑作と信じた「プラン9・フロム・アウタースペース」に全く買い手が付かず、それどころか彼のフィルムを営業していたプロデューサーが疲労と絶望のうちに死んでしまう。この事態にはさすがのエド・ウッドも打ちひしがれ、アルコールに依存、酒浸りの生活を送るようになった。1978年12月10日に他界。

没後は暫く忘れられていたが、映画の上映権を安く買いたたかれた結果、深夜テレビの映画枠で繰り返し放送されることになった「プラン9・フロム・アウタースペース」が一部でカルト的な人気を得て評論家の目に止まり、1980年に「ゴールデンターキー賞」という本の中で「歴代最低映画」として紹介され、再評価が始まった。彼の映画の出来が一義的には「最低最悪」であることに異論をはさむものは少ない。彼が再評価されたのは、最低最悪の出来の映画ばかり作り、評価も最悪であり続けた(というよりも評価対象以前だった)にもかかわらず、映画制作に対する熱意やほとばしる情熱を最後まで失わなかったためである。このことをもって「ハリウッドの反天才」「芸術の突然変異」との称号(?)で称されることもある。


Plan 9 from Outer Space
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B39%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9

<あらすじ> 物語のナレーター、クリズウェルの予言から始まる。クリズウェルは未来への注意を呼びかけ、「あの運命の日に何が起こったか」を語りだす。
アメリカン・フライト812のパイロット、ジェフ・トレントは飛行中に突如強風に煽られる。外を見るとそこには「この世のものとは思えない」空飛ぶ円盤が出現していた。一方で、ひとりの老人(ベラ・ルゴシ)の妻の葬式のあと、二人の墓掘り人夫が奇妙な音を聞いた。墓を出ようとしたそのとき、死んだはずの女性が歩いているのに出会ってしまう。その後、妻を亡くした老人も(おそらく)交通事故によって死亡してしまう。なぜか地下墓地に埋葬された老人の葬式の帰りに、参列客が二人の墓掘り人夫の死体を発見し、ダニエル・クレイ警視(トー・ジョンソン)の率いる警察が現場に到着した。だがクレイ警視もまた死者に襲われ…

この作品には、普通の商業作品には見られないようなミスや手抜きと思われる箇所がいくつも存在し、それがカルト的な魅力ともなっている。

製作当時は、あまりのつまらなさに上映権の買い手がまったくつかず、結局テレビ局に権利を安く買いたたかれることとなった。そのため深夜テレビで繰り返し放送され、一部でカルト的な人気を得る。やがて1976年に「ゴールデン・ターキー・アワード」という本の中で「史上最低の映画」として紹介され、映画『エド・ウッド』である意味での脚光を浴びることとなった。


いい機会なので「Plan 9 from Outer Space」をDVDで観てみた。You Tubeにもいくつか映像があるので載せておこう。



うーん、これはひどい。脚本・撮影・効果などむちゃくちゃだ。Wikipediaからいくつかリストしてみると、
- 俳優が台詞を棒詠み。
- 同じシーンなのに、ショットごとに昼と夜が入れかわる。
- ショットの使い回し。
- ホイールキャップか灰皿に見えてしまう模型の円盤。それを台詞では「葉巻型」と表現する。しかもその円盤を吊るしている糸が見えてしまっている。
- コントのようなセット。椅子とカーテンしかない飛行機操縦席、机と無線機しかないUFO司令室。
- UFOと遭遇するシーンで、急上昇するマイクの影が操縦席の壁に映ってしまっている。
- 墓石がダンボール製。
などなど。

もうひとつティム・バートン監督による「エド・ウッド」(1994)も観てみた。この映画でエド・ウッドの人となりや生涯がわかる。



この作品はとても凝っており、特に「Plan 9 from Outer Space」のシーンを見事なまでに再現しており驚かされる。(従って「Plan 9 from Outer Space」→「エド・ウッド」の順で観たほうがいい)
オリジナルの映画にそこまでの価値があるとは全く思えないが、それほどティム・バートン監督のエド・ウッドへの思い入れは強いようだ。ジョニー・デップが演じるエド・ウッドに思わず感情移入してしまった。

エド・ウッドが面白い(すばらしい)のは、映画を作ることは明らかに下手だが、映画への情熱は人一倍だったことだ。たまたま(?)映画のセオリーや世の中の感覚と合わずに不遇の映画監督人生を送ってしまったが、その姿勢が没後に一部のファンの心を捉え「史上最低」という名誉ある(?)評価に繋がったものと思う。さぁ次はデビュー作の「グレンとグレンダ」を観てみよう。



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