恵庭岳(1320m)

【写真左が恵庭岳、右は空沼岳、手稲山より望む】

１９９６年８月２５日の山行記録から

　恵庭岳は支笏湖を囲む山々の一つとして、樽前山と並び活火山として今も火山活動を続けている。恵庭市方向から見ると、火口が大きく口を開け噴煙もみえ、勇壮な光景が展開する反面、苫小牧方向からの姿は突き立った独立峰的な存在の山でもある。
　標高は１３２０ｍと支笏湖周辺の山の中では一番高く、登山口からの標高差が千メートルを超えることから中級向けの山でもある。どのガイドブックでも頂上からの展望を絶賛しており、札幌近郊では空沼岳とならび魅力と人気がある。

　この山への登山時間は、一般的には３時間半前後で紹介されているが、２時間～２時間半が私の目安である。もっとも、このような急峻な山は個人の体力差が歴然として登山タイムに出ると思われ、大学の山岳部あたりでは一時間半を切る時間でも登山可能ではないだろうか。当初、中級クラスに分類され標高差千メートルのこの山を敬遠して登らない時期があったが、十勝岳、富良野岳、夕張岳などの中級クラスに分類される山々をのぼるにつれてこの山を無視できなくなっていた。しかも、前評判どおりの秀峰であり、夏の天候のいい日を敢えて選んで訪れるたくなる、私にとって近郊の山々の中では特別な山なのである。但し、高山植物はあまり期待できたない。

　前年に続き、二回目の恵庭岳登山となった。ゆっくり家を出たため登山口の駐車場は満杯となりサイクリングロードに路上駐車となった。室蘭同様、支笏湖もすばらしい快晴で、この時期としては夏というよりは秋晴れのようなすがすがしい絶好の天気となったこともあり、すごい人気である。早い人は６時頃から来ていたようだ。

　大方の人は７時３０分から８時３０分の出発、大変な混みようで、ところどころ前がつかえて先に進めない。見晴台に躍り出るロープの張られた個所は順番待ち。しかし驚いたことにあきらかに素人としか見えない登山者もこの山に集まっているのである。はたして恵庭岳の魅力とはいったい何なのであろうか。
　天候のいい日の大展望とスリルのある登山と思われる。しかも札幌近郊で味わうことの出来る手軽なちょっぴり上級気分の登山は魅力的である。

　登りは最初からリズム良く二時間もかからず登頂を果たすことが出来た。今日の登山者は非常に多く、頂上は居場所を確保するのがやっとである。このまましばらくじっとしていたいが、次から次ぎへと途中で追い越した他の登山者が登ってくることから、早めに引き上げた。

  頂上からの大展望を鑑賞中、爆裂火口の見晴台方向の壁が突如として大崩落して、我々登山者を驚かせた。スリルを感じるが恐ろしい出来事である。たまたま、持ち合わせたカメラで煙のあがる崩落現場を撮影し、ちょっとしたスクープに遭遇できた。滅多に見れない展望とスクープだねの出来事に遭遇できたことはまことにラッキーである。
  頂上付近の通過が恐ろしく感じる出来事であった。  恵庭岳は生きている証拠である。

  頂上からの展望は素晴らしい。漁岳、空沼岳、樽前山、紋別岳、風不死岳は双眼鏡があれば登山者まで見えそうな透明度である。羊蹄山、ホロホロ山、無意根山、余市岳、札幌方向のそれぞれの山々、太平洋、石狩湾、オコタンペ湖のエメラルドブルー、支笏湖の素晴らしさ。札幌市街、夕張岳、芦別岳、の意外性。まさに大展望である。特に頂上石塔から見る高度感のあるスリルのあるこれら風景は他の山では中々味わうことはできない。

  本日の登山は今までで最高の登山であった。夏ということもあり花は少なく単調な登りであるが、スリルと展望が全てである。これが登山なのかもしれない。２時間を切る早いペースで上り切れるとは思いも寄らなかった。人が少なければもっと早く登れたであろう。

　帰りの下山は、頂上ドームを恐る恐る眺めながらの下降となった。
ドーム直下を下山中、３０名近い登山隊と遭遇したが、登り優先が当然とでも言わんばかりに悠然とダラダラ登り続け、道を譲らない。リーダーの質を疑いたくなるグループである。ここで約５分、前を歩いていた単独行の男性と苦笑いして小休止となってしまった。この手のグループは時々見掛けるがもう少し自分たちの技量を見据えて、周りに迷惑をかけないよう配慮して頂きたいものである。

  下山後に味わうことが出来る丸駒温泉の露天風呂は最高である。最近は、入浴料金が千円と高価な値段となっているが、露天風呂は清潔で設備も大変整っている。この年にはサウナが併設されたようで、最近の露天風呂ブームに真っ向から対抗してるようだが、支笏湖と山々の風景がどこかの作られた絵画よりも勝っており、人気はうなぎ上りだ。昔からの秘湯ムードも未だに醸し出しており、しばらくは健在であろう。
入浴後はおみやげに“さくらんぼ餅”を購入することをすすめたい。

【恵庭岳は現在頂上部の崩壊が続き、8合目以降は入山禁止である】