ウォーク更家の散歩(東海道・中山道など五街道踏破、首都圏散策)

バスで行く「奥の細道」(その6)(「白河の関」:福島県)    2017.10.11

(写真は白河関跡)
 
”都をば 霞とともに 立ちしかど  秋風ぞ吹く 白河の関”

(春霞の季節に京都を発って、秋風が吹く頃にようやく
白河関に着いた。)

今回は、上の能因法師の句で有名な「白河関」を訪れます。

「白河関」(しらかわのせき)は、奈良時代から平安時代に
機能していた”国境の関”で、蝦夷(えみし)の南下を
防ぐために築かれていました。

太平洋岸の「勿来(なこそ)の関」、日本海岸の「念珠
(ねず)が関」と並ぶ”奥羽三古関”の一つです。

その後、律令制の衰退と共に関所としての機能を失いました
が、辺境「みちのく」の入口としてのイメージは、 その後も
「歌枕」として残り、ずっと多くの歌人に詠まれ続けました。

ここを通過した能因法師など、時代を代表する歌人たちは、
必ずここで歌を残しています。

そういう訳で、芭蕉としても、歌枕の聖地として、

どうしても訪れねばならない場所でした。

 

しかし、驚くことに、江戸時代には、関の跡がどこなのか

全く判らくなってしまっており、芭蕉は、関跡を探し

ながら、あちこち尋ね歩くハメになってしまいました。
(曽良の随行日記)

芭蕉は、 ”白河の関越えんと”と、意気込んで来たものの、
結局、白河関跡がどこなのか最後まで判明せず、期待に
反して、分からないままで白河の関を超えざるを得なくなり
ました・・・

張り切って、「白河関」を目指して来た芭蕉にとっては、
白河関跡がどこか判明しなかったのは、さぞやショック
だったでしょうねえ~。

芭蕉がここでの句を残していないのは、ホントに不本意

だったからでしょう。

代わりに、曽良が次頁の句を詠んでいます。

 ”卯の花を かざしに関の 晴着かな”  (曽良)

 (「白河関を越える際には正装する」、という故事に
   基づいて、白を連想させる卯の花をかざして、晴着を
   着たようにして関を越えよう。)

現在の「白河関跡」の場所を、「白河の古関跡」と認定した
のは、松平定信で、芭蕉から100年も後のことです。

知恵伊豆と呼ばれた定信が、場所を断定して石碑を建てた
くらいですから、現在の「白河関跡」の位置は、間違いない

と思われます。

私は、「白河の関」は、奥州街道の「白河宿」の中にあると
思っていました。

 

しかし、調べてみると、白河宿から南に10キロも離れた
ところにあり、何と!、白河宿からバスで30分も かかる
ことが分かりました。

という訳で、1日徒歩5キロ制限の私は、今回の「奥の細道」
の「白河の関」も、バスツアーのお世話になります。


我々の乗る「バスで巡る奥の細道」のバスは、「白河の関」

に着きました。

白河の関跡の入口を入った右手に、松平定信が建立した上の

写真の「古関蹟碑」があります。

当時、白河藩主だった松平定信が、1800年に、この場所が、
「白河関跡」に間違いないと断定した際に建立した碑が、
前頁の写真の「古関蹟碑」(こかんせきひ)です。


上の写真は、「幌掛けの楓」で、前九年の役で、源義家が、
白河関を通過する際に、「幌(ほろ)」(注)を、 この
カエデの木に掛けて休憩したそうです。

(注)次頁の写真の様に、馬上の武者は、背後からの矢を
吸収するために、背中に大きな袋状の布を背負っていますが、
この布を「母衣(ほろ)、または幌(ほろ)」と言います。

(NHK歴史秘話ヒストリアから)

右手に「古関蹟碑」を見て、石段の参道を上ると写真の
「白河神社」があります。

社殿は、仙台藩主・伊達政宗が奉納したものだそうです。

白河神社の社殿の脇には、能因法師、平兼盛、梶原景季の
3句を刻んだ上の写真の「古歌碑」 が建っています。

 ”都をば 霞とともに 立ちしかど  秋風ぞ吹く 白河の関” (能因)  

 ”たよりあらば いかで宮こへ告げやらむ 今日白河の 
  関を越えぬと” (平兼盛)

 (平兼盛が、歌枕の白河関を越えた感激を、都の知人に
   どうやって知らせようか、と詠んだもの。)

 ”秋風に 草木の露を はらわせて 君がこゆれば 
  関守もなし”  (梶原景季)  

(源頼朝が、1189年、奥州平泉の藤原氏を攻める途上、

    側近の梶原景季が、白河関の社殿で詠んだもの。)



白河神社に参拝した後、ぐるっと遊歩道を廻って、「白河関

の森公園」へ向かいます。


遊歩道沿いの写真の土塁や空堀は、古代の白河関の関所

としての防禦施設の遺構だそうです。

 

「白河関の森公園」は、白河関跡に隣接した公園として整備
されています。



この公園の入口近くには、芭蕉と曽良の像が置かれています。
白河の関は、別名「二所の関」とも呼ばれていたそうで、

相撲の「二所ノ関部屋」は、ここから名付けられそうです。
その関係でしょうか、白河関の森公園には、「相撲の
稽古場」がありました。

我々のバスは、昼食をとるため、白河関跡の近くの「南湖
(なんこ)公園」へ向かいます。

南湖公園は、1801年、白河藩主・松平定信が、大沼と
呼ばれていた湿地帯に堤を作って水を貯め、松、桜、楓
などが 四季折々に楽しめる庭園として築造しました。

 

南湖公園は、これまでの大名庭園と異なり、武士から農民

まで身分に関係なく、全ての領民に開放されたことから

”日本で最初の公園”と言われています。

大正13年、「南湖公園」として国の史跡名勝となりました。





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コメント一覧

ウォーク更家
予想外の展開
http://blog.goo.ne.jp/mrsaraie
ええ、芭蕉が白河の関がどこだったか分からずにがっかりするという展開は私も予想外だったし、松平定信が場所を確定させたというのも驚きだったので、歴史の先生のこれらの説明を聞いて面白いと思いました。

そうですよね、旧街道歩きが趣味の我々は、地元の人々に聞いても、史跡の場所がわからないことが多いですよね。
こもよみこもち
こんばんは。
https://blogs.yahoo.co.jp/ya3249
芭蕉が白河の関がどこだったか、地元の人に聞いて回り、それでもわからずがっかりする光景が想像できて面白いです。
自分も、史跡の場所を探し回ることはよくあるので。

松平定信が場所を確定させたんですね。
ウォーク更家
白河城
http://blog.goo.ne.jp/mrsaraie
白河城の桜、素敵なんでしょうね。

お褒めのコメント、ありがとうございます。

これからも、奥の細道のバス旅行に同伴して下さっている歴史の先生に色々と質問して、このブログでご報告したいと思いますので宜しくお願いします。
kasane
こんばんは
http://blog.goo.ne.jp/shasin328
読者登録ありがとうございました。

今まで白河に行っても桜の花を鑑賞したりお城を見るくらいだったので色々勉強になりました。
ウォーク更家
勿来の関の地名の由来
http://blog.goo.ne.jp/mrsaraie
仰せの通り、都の人は、白河の関の名を耳にしただけで、遠い蝦夷との国境をイメージして憧れたのでしょうね。

私も勿来の関へは行ったことがあるのですが、だいぶ昔なので、ほとんど記憶になく、八幡太郎義家の騎馬像は覚えていません・・・

そうでしたか、勿来の関では、小野小町や和泉式部も和歌を詠んでいましたか。

蝦夷に対して「来る勿(なか)れ」が、勿来の地名の由来ですか、勉強になります。
iina
白河の関
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/97d754586d820779f70f241f4a0c567e
白河の関は、むかしの都の者がこの名を耳にするだけで遠い蝦夷たちの住む地に郷愁を感じて憧れたともいいます。

> 太平洋岸の「勿来関」、日本海岸の「念珠が関」と並ぶ”奥羽三古関”の一つです。
「念珠が関」に行ったことはありませんが、「勿来関」にはアンコウと温泉を求めて冬場に参りました。
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/b068f4ba2605d472e0787e4cd97a15ba


> 相模国の一之宮である寒川神社なのに、未だ行った事がありません。
それは残念なことです。遠方よりも近場の宮を忘れてはなりませぬぞ。^_^;
熊澤酒造は宮山駅下車し、寒川神社の方へ戻りながら10分ほどで着きます。仲間たちと4時間も過ごしました。^^

ウォーク更家
もう1か所の白河の関
http://blog.goo.ne.jp/mrsaraie
そう、栃木、福島の堺にある神社の所に、二所ノ関址の看板が出ていますね。

関所破りを防ぐために、関所は1か所とは限らないらしいので、こちらの方が間違いという訳ではなくて、こちらにも何か関所関係の施設があったのかもしれませんね。
hide-san
白河の関
http://blog.goo.ne.jp/hidebach
懐かしい映像ですね。

二所ノ関址は、栃木、福島の堺にある神社の所にあると看板が出ていました。

白河の関の場所が特定できなかったからでしょうね。
(参考:境の神社https://blog.goo.ne.jp/hidebach/preview?eid=0e960283cca69901fe88a7443c828a8f&&t=1427688145a9692b72facc?0.8519940796020916
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