想い出はグラスの中に_1

ザザザザザザ。

バチバチバチ。

ザーッ。

雨が車窓を叩き始めた。

高速で走る新幹線だ。

雨が叩きつけると相当にうるさい。

新大阪を過ぎ、急に天気が変わった。

目的地まであと僅か。

東京駅発8:33「のぞみ」に乗り込んでから約3時間だ。

参ったなあ。

急に雨に祟られるなんて。

高霧は、新幹線社内で今までずーっと読んでいた本をしまった。

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2ヶ月程前のことだ。

業界新聞社に勤める高霧は仕事に忙殺されていた。

彼には行きつけの店がある。

とあるスナックだ。

別に誰が好きだということはない。

ただ、店に入り、適当に酔えて、話せて、それだけだ。

それ以上のものでも、それ以下のものでもない。

よく行っているのでママやチイママとは馴染みだ。

どうと言う事はない。ただ、それだけの話しだ。

その日、高霧は迷っていた。

たまには行くか。ただなあ。今晩は24時横浜集合で協力会社と一緒に現地入りだ。

まあ、俺が運転をする訳でもないし、今日、この機会を逃すと出張続きになるので暫くは行けない。

思い切って行くか。

家を出て店に向かった。