愛国日報

不動産屋・電気制御システム屋の思いつき・出来事。

リターンマッチ

2007-05-25 19:58:17 | Weblog
その日、東京は朝から湿っぽかった。

晩秋の昼下がり、日曜日、俊夫と芙由子は皇居周辺の公園に居た。

少し、霧がかかっていた。

この時期でも緑が多いこの辺りには、妙に霧と緑がマッチしていた。

何度目のデートだろう。

つきあい始めてそろそろ2ヶ月が過ぎようとしていた。

間もない二人だ。

先週会ったときに俊夫は言われていた。

「あたし達ってどういう関係なんでしょうね。」

・・・・・・・・・・・・

何も言わなかった。言えなかったのかも知れない。

千鳥が淵付近だった。

「これからどうする?。」

・・・・・・・・・・・・

女性に言ってはいけない台詞だったが、若い俊夫には分かっていなかった。

「帰ろう。」

・・・・・・・・・・・・

流石の俊夫も気が付いた。

「分かった。」

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4ヶ月前。

友達同士、3対3でトリプルデートをした。

とは言ってもあとの4人はダシだ。

実は芙由子は、俊夫の友達が狙っていた、ダシではない女性だった。

会話が弾んでも俊夫には苦痛だった。

『あれは、法宏が狙っている女だろう。面倒くせえ。早く帰ろうぜ。』

・・・・・・・・・・・・『でも、奴の気持ちも分かるな。いい女だもんな。

まあ、俺には手が出ねえから関係ねえや。』

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「ねえねえ、俊夫君ってどこに住んでいるの?。」

「自由が丘。」

「ええ!?。あたし、学芸大学。近いじゃん。」

「そうだね。」

・・・・・・・・・・・・続かない。『でも、俺には無理だな。』

『でも帰り道、一緒の方面だ。』

チョット期待した。

お開きになった。

じゃ、ここで。

彼女は友達と去って行った。

××××なんでえ。

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どうだい。あいつら。

高校生にしては割といいだろう。

『俺達だって高校生じゃねえか。このタコ。』俊夫は思った。

法宏がみんなに声をかけた。

その後、何度か法宏は彼女とデートした。

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ある時、法宏から電話があった。

「俊夫、お前、芙由子のこと覚えているか?。」

「誰?。」

「ほら、前に赤坂見附でお茶したじゃねえか。」

「ああ、Y女子高の。」

「そうそう、あの子がお前に会いてえってうるせえんだよ。」

「お前、狙ってたんじゃ。」

「おお、そうだけどよ。あんまりお前のことばかり言っているから。もうどうでもよくなった。お前にくれてやるよ。」

くれてやるって・・・、そんな言い方するなよ。

俊夫は妙にむっときた。

「別に・・・いいよ。俺にはむかねえよ。」

「そう言うなって。」

「じゃ、電話番号、メールするからよ。」

「お前、必ず電話しろよ。そういう約束になってるんだからな。」

「分かった。分かった。」

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2週間が過ぎた。

俺も興味が無い訳じゃなかった。

やっぱり電話してみよう。

心臓がドキドキした。

出てくれるかなあ、俺の番号なんて登録してる訳ねえだろうし、きっと出てくれねえだろうなあ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いっか、死ぬ訳じゃねえし、電話してみよう。

とは言っても、なかなかの勇気を振り絞った。

電話してみる。

呼び出し音がする。

1回、2回、3回、・・・やっぱ切っちゃおうかな。でも着信表示は行ってるだろうし。

「はい。芙由子です。」

「もしもし、俊夫ですけど。」

「ああ、この前の・・・うん、電話くれたのね。」

「法宏からの紹介で・・・。」

「俊夫君、パソコン得意なんだって。」

「ああ、どっちかって言うとオタッキー系だからね。」

「今度教えて。」

「いつでもいいよ。」

こうして付き合いが始まった。

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「あたし達ってどういう関係なんでしょうね。」

・・・・・・・・・・・・

何も言わなかった。言えなかったのかも知れない。

千鳥が淵付近だった。

「これからどうする?。」

・・・・・・・・・・・・

女性に言ってはいけない台詞だったが、若い俊夫には分かっていなかった。

「帰ろう。雨も降ってきそうだし。」

・・・・・・・・・・・・

流石の俊夫も気が付いた。

「分かった。」

二人の家は近かった。

赤坂見附から銀座線に乗った。

渋谷で。

「じゃ、ここで。」

『チョット待って。同じ東横線じゃん。ここで分かれるの?。』

俊夫は勇気を振り絞った。

「いや、もう少し散歩しない?。」

・・・・・・・・・・・・

「いいよ。」

公園通りを上っていった。

「どうするの?。」

「代々木公園でも行かない?。」

『行って何するの?。でも、あんまり言うと"いじめ"だわ。』

芙由子は黙って頷いた。

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ベンチに座った。

相変わらの曇り空だ。俺にはぴったりだ。

こういうとき、寄り添うってどうやるんだ?。

俊夫には分からなかった。

ベンチの二人の間には微妙な距離が存在した。

「ねえ、俊夫君。私、答えをまだ聞いてないわ。」

何のこと?。とは言わなかった。

分かっていた。

僕と付き合って下さい。

でも、言えなかった。

でも、勇気を振り絞った。

「あ~、俺~。」

その時、急に晴れてきた。

「あっ、晴れてきたわ。」

『話の腰を折るなよ。』俊夫は思った。

少し休憩しよう。何が休憩だか分からないが俊夫にとってはとても長い時間に思えた。

「なんだか少し暑くない?。」

「ああ、暑いね。」

太陽がギラギラ照りつける。

場が白けてきた。

秋だというのになんなんだこの暑さは。

二人の会話が途切れた。

「海でも行けばよかったね。」

「ああ、そうだね。」

『何、この人、あたし、挑発してるのよ。』芙由子はむっとした。

『この子、なにふざけたこと、言ってんだ』俊夫も少々白けた。

暫く沈黙した。

「帰ろっか?。あたし、チョット用があるから。」

「ああそう。」

『えって。』俊夫はあせった。

「あれ、でもチョット待って。」

俊夫が言った。

今度は急に曇ってきた。

「なんだか寒くなってこない?。」

「そうねえ。」

急に日が陰り、風が冷たくなった。

「一体どうしたのかしら。」

「やっぱり海へ行かなくてよかったね。」

「この時期だもの。冗談よ。」

再び話が弾んできた。

寒い。段々お互いの距離が近づいてきた。

「そう言えば、さっき言いかけた答えは何?。」

更に気温が下がってきた。

「寒くなってきたね。」

「うん。」

俊夫は芙由子の肩を抱いてみた。チョットのことだ。

こういうふうに抱かなくてもいいけど、腕でも組んでくれないかなあ?。俊夫は密かに思った。

芙由子は案外素直だった。

「もっと寄って。」

微妙な距離が無くなった。

芙由子が俊夫の上着の中に腕を滑らせた。

「寒い。」

彼女を抱きしめる格好になった。

いや、抱きしめた。

風が更に冷たくなった。

俊夫は言った。

「僕の彼女にならない?。」

「うん。」芙由子は頷いた。

ますます冷たくなる風。

二人は更に抱きあった。

「暖かい場所に行かないか?。」

「うん。」

こうして二人は宇田川町へ消えて行った。

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「太陽君。どうだい。旅人のコートを脱がせるのは負けたが、若い恋人達の服を脱がせるのは僕の勝ちだったね。」

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誰に聞いたんだっけかなあ。