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『日本の地政学 日本が戦勝国になる方法』 北野幸伯 著

 2020/12/20発売、扶桑社。
 ソニーReader Storeの50%引きクーポーンがあったので昨年3月に買っていたのだが、今月に入ってようやく読んた。


 株や為替をやっていれば地政学リスクという用語を見聞きすることも多いだろう。国の地理的な条件をもとに他国との関係や国際社会での行動を考えるアプローチが「地政学」で、その観点から特定の地域の政治的・軍事的な緊張の高まりがその地域の経済や世界経済全体の先行きを不透明にするリスクが「地政学リスク」だ

 私は株式投資等を長年やっているので馴染みのある用語だったし、経済関連の書籍に出てきたりはしていたが、地政学に係る書籍は読んだことがなかった。本書は、地政学の基礎的な内容と、現在の日本の置かれた状況と、第二次世界大戦等の歴史も踏まえて地政学的の観点から日本はどうしていくのがよいかについての道筋が書かれている。一読の価値は十二分にあると思う。

 表紙と目次は以下の通り。右開きの本で、目次も含めて1枚にコピペしたので見にくいが。




 改めて目次で章だけ書いておく。
序章 国家の大戦略を示す地政学
第1章 日本の地政学 ―「東洋のイギリス」としての日本
第2章 中国の地政学 ―「東洋のドイツ」としての中国
第3章 勝利の地政学 ― 英独関係からわかる日本の大戦略
第4章 これから世界で起こること
第5章 未来の繁栄のために
終章 目覚めつつある日本


 著者の北野幸伯さんをご存じの方は多いかもしれない。19歳でモスクワに留学し、1996年にロシアの外交官養成機関であるモスクワ国際関係大学を日本人として初めて卒業(政治学修士)したというチャレンジングな人だ。モスクワに28年滞在して帰国、今は国際関係アナリストとして、メールマガジンや書籍の執筆等をされている。ロシア連邦の一つカルムイク共和国の大統領顧問をされていた時期もあって、 ロシア等の政治エリートの考え方を日本で一番よく理解している人ではないかと思っている。


 序章では、私たちは米中覇権戦争の時代に生きているので、世界で何が起こっているのかを知り、日本は戦勝国としてこの時代を通過しないといけない、という著者の問題意識が書かれている。そして、本書ではその方法を地政学的に考察している。

 地政学者の奥山真司氏は、「国の地理的な条件をもとに、他国との関係や国際社会での行動を考えるアプローチ」と地政学を定義している。代表的な地政学者たちが語ったことは、自国の発展や自国を守るための政策あるいは大戦略であり、地政学は国の進むべき方向性を示す実践的、実用的学問だ。
 

 第1章では、まず地政学の父マッキンダーの地理観の紹介がある。特殊な用語でそれを知らないと訳がわからなくなるので。世界島(ユーラシア大陸とアフリカ大陸を合わせた地域)、ハートランド(世界島の心臓地帯で旧ソ連、ロシア地域)、内周ないし周縁の半月弧=リムランド(ユーラシア大陸の沿岸地帯でハートランドを包み混むように存在する欧州、中東、インド、中国)、外周ないし島嶼性の半月弧(リムランドのさらに外側にあるイギリス、アメリカ、カナダ、日本など)。

 マッキンダーは世界征服を恐れ、第1次世界大戦の頃、世界征服の公式を語った。東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する。

 地政学的位置は、イギリスと日本は西と東の違いはあっても外周ないし島嶼性の半月弧にある。ギリスは19世紀の覇権国家で、日本は20世紀にアジアの最強国家だった。私たちは日露戦争勝利の意義を過小評価しているが、世界史的事件だった。

 日本はイギリス同様、「水の抑止力」に守られているので攻撃されにくい。ロシアの南下政策を恐れ、朝鮮や満州を緩衝国家にしようとする必要はなかった。イギリスは大陸への進出はしようとしなかった。海洋国家のイギリスは、シーパワーとして行動し続けた。


 この調子で書くと長くなり過ぎるので、第2章以降はもっと簡略化しておく。

 第2章地政学的位置では中国はドイツと同様リムランドに属する大陸国家(ランドパワー)であり、中国は東洋のドイツである。時期はずれているが、ドイツと中国の歴史を振り返ると約30年間平和政策を維持することで地域最強国家になった。その後、覇権国への挑戦を始めた。ナチス・ドイツと中国共産党政権は、共に一党独裁体制であり、世界政策には共通点も多い。

 第3章。中国が2012年11月に打ち出した反日統一共同戦線戦略。これで第2次日中戦争がはじまった。2015年のAIIB事件は米中覇権戦争の前哨戦でアメリカは中国が最大の脅威であることを理解し、2018年10月のペンス副大統領演説で米中覇権戦争が始まった。安倍前総理がアメリカ、ロシア、韓国との関係を改善させ、反日統一共同戦線戦略の無力化に成功した。

 第4章。2019年1月のダボス会議でのジョージ・ソロス氏のスピーチから、国際金融資本が「習近平はもっとも危険な敵」と認識した可能性が高い。米中覇権戦争では3つの理由で中国は勝てない
・中国経済は、もはや高成長をつづけることができない。
・中国の政治体制が脆弱である。共産党の一党独裁体制が崩壊する。
・戦闘以外の戦争-情報戦、外交戦、代理戦争で中国に勝ち目はない。

 第5章。日本は20世紀のイギリスが勝利した方法をまねて米中覇権戦争の戦勝国になることができる。ただし、アメリカ側につくなら、覇権戦争後に備えて同盟国としての義務を果たさないといけない

 国際社会における大国の地位を維持したければ、大国の3条件(人口、経済力、軍事力)を意識した政策を進める必要がある。
 出生率を上げるのに成功した例としては、ロシアでは母親資本の制度がある。子供を2人産むと田舎で家が買えるほどの大金がもらえる。
 経済成長は必要であり、一つの方法は全国一律の最低賃金の段階的引き上げで、日本全体が豊かになる。イギリスで18年間上げ続けても問題はなかった。
 軍事的自立を進めるには、アメリカの負担を軽減しますと言いながら強化していくのがよい。

 終章。安倍前総理は、事実を確認していけばアメリカの言いなりではなく、自立外交をしたことが分かる。また、「自由で開かれたインド太平洋構想」という大戦略を提示し、アメリカにも採用された。菅総理も熱心に進めている。


 まとめが的確でなかったりするかもしれませんが、ご容赦を。
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