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『そうだったのか! FX大相場の真実』 著者:吉田 恒

 著者は現在マネックス証券のチーフFXコンサルタントをされており、この本は昨年のプレゼント企画でもらっていた。



 この本は最新の情報をまとめたり分析した本ではなく、過去の大相場について解説した本であるため、少し古くなっても内容の有用性は変わらない。著者のスタンスは一貫していて、過去の大相場=歴史を学んで、為替相場の先読みの参考にしようというものだ。そのために、目次にある大相場について解説している。

 大相場はそれなりの理由があって発生しているのだが、どこまで行くかに関しては長期的なトレンドである5年移動平均線(少し短めなら52週移動平均線)からの乖離率(+-20%超が目安)を見れば行き過ぎがだいたい分かるという考え方が基本になっている。直接的なドル円の相場の他、円の実効相場、米10年債利回り、日米10年債の金利差といったもので見る場合もあるので、これさえ見れば確実という話ではないが、それらは相互に関係しているし、いくつかの面から確認してみるのはいいことだろう。

 何かのショックが起きて円高に行くことが多いが、円安に行ったこともある。それまでの相場の動きが背景にあったりする。各国の金融政策、景気の状況、原油相場などが影響を与えることもある。本書で解説されていた大相場をごく簡単にまとめると次の通り。

 トランプ・ラリー(2016年11月)では、米景気は回復していたのに事前に円高(8月には100円割れ)に行き過ぎていたために、トランプ当選後は円安に進んだ。

 アベノミクス相場は2度の黒田バズーカ(2013年4月と2014年10月)に代表される政策相場で円安が大幅に進み、その後、総裁自らの発言で円安(125円台)の幕引きを図って成功したが、それは円安が行き過ぎていたから成功した。

 ユーロを守ったドラギ・マジック(2012年7月)も行き過ぎた悲観論で逆バブルの様相になっていたから成功した。

 リーマンショックの約1年前から信用バブル崩壊が展開していたが、リーマン破綻が引き金となって大恐慌以来の危機に陥った。ドル円は2007年6月の124円から2009年末の84円まで劇的に円高が進んだ。豪ドル円はさらに激しく2008年7月の100円超から10月の54円台まで、たった3ヵ月で一気に半値近くまで下げた。豪ドル円は原油バブルとともに5年移動平均線を20%上回る上がり過ぎだったのが、原油バブル崩壊で一気に5年移動平均線を30%下回る下がり過ぎになったからである。

 ちなみに、この時の為替変動で複数あった私のFX口座はすべて強制決済をくらい、当時の年収を超える実現損を出したことは以前記事に書いた。それでも何とか生き延び、プチFIREできた。

 ドル円の5年移動平均線からの乖離率で見ると、自社さ連立政権時の1995年4月の80円割れの超円高は-30%、その後は日本の経済悲観論や金融機関の危機で1998年8月には147円の円安で+30%になった。その後LTCMの破綻でドルが暴落した。2011年3月に日本大震災があり、民主党政権末期の2011年10月には75円台になったが、その時の乖離率は-20%超だった。

 ITバブル崩壊では米ナスダック指数が2000年3月から2020年10月にかけて最大7割以上も下落したが、ドル円は101円から135円まで円安に進んだ。リスクオフの円高にならなかった理由は、ITバブル崩壊前に急激な円高が起こっていたからだった。


 なお、吉田さんの為替見通しについてはマネクリの為替ウイークリーや為替デイリーで読むことができ、本書の知見を踏まえた解説が載っている。私もしばしば読んでいる。ドル円の5年移動平均線からの乖離率についても、例えば1月30日の為替デイリーを見れば載っている。


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