脳内ネタです。
先回の件で、ある意味、某バカップルを超えた気もしなくはない(爆)
…ま、内容的に色々途中だけど、ネタの旬が過ぎちゃうので、取り敢えず出すだけ出すという事で。
付いて来れる方だけ、続きをどうぞ。
「こうやって、掌でコロコロと転がしながら真ん丸に…ね」
朝から台所はコンロがフル回転状態。
ダイニングテーブルを作業台に、捏ねた団子生地を丸めて幾つも並べていく。
「…こう、ですか?」
「うんうん、まぁ丸くなればいいのよ、丸く」
コンロとテーブルを往復しながら、作業を手伝っている兄さんの手に乗っているお団子を見る。
転がすのが上手くいかないのか、若干潰れたような形になっていた。
「…それにしても、凄い量ですね」
100個近い数の白く丸いお団子を眺めながら、兄さんが感心したように手を止める。
「うちの分だけじゃないからね~」
私はまな板の上に蒸しあがったお団子生地を広げながら、からからと笑った。
「お団子屋さん出来るかもよ。って、あっつ」
「ま、マスターっ」
蒸し器の縁にうっかり指が触ってしまい、私が思わず声をあげたのを見て、丸めかけの生地を放り出した彼が、私の腕を掴んで強引に流しの前へ移動する。
「平気だから、これくらい何ともな…」
「駄目ですっ、痕が残ったらどうするんですか」
大丈夫だと言う私の声を遮って、勢いよく流れる蛇口の水に患部が当たるように、腕をがっちり掴んだまま彼が言う。
あまり力が入っていないようにも見えるのに、その実、少し力を入れたくらいでは振り解けないほどしっかり掴まれていた。
「あ~、も~、生地が冷めて丸まり難くなっちゃうでしょうが~」
「だったら、そこでちゃんと冷やしてて下さい。残りは僕がやっておきますから」
にべもないくらいバッサリ言われて口を尖らせる私を軽く無視して、彼はテーブルの方へと戻って作業を再開し始める。
作業と言っても、残りは蒸しあがった生地をつやが出るまで水を付けながら練って、丸めて直径2,3センチ位のお団子にするだけ。
幾ら慣れないと言っても出来ない事ではないだろうから、それはそれでいいのだけど。
分量が分量なので、三回ほどに分けて生地を蒸しながら作っていたのが、逆にあだになった感じだ。
「兄さん、一言いい?」
「何ですか?」
「…過保護」
「マスターがそそっかしいのがいけないんです」
いちいちお小言っぽいのが、彼が歳よりも老成した印象を与える要因の一つだとは思う。
「むぅ…」
「気を付けて頂かないと、困るのは貴女なんですから。…まぁ、そこが可愛らしいとも思いますけれど」
小さく息を吐いて、ポツリと付け足された言葉に、聞いてるこっちが赤くなる。
「に、兄さんっ」
「いけない、口が滑りました」
本人は至って真面目なのに、素でたまにこういう発言をするのが難だ。
こんな事を言いながら、それでもクスッと微笑って手を動かし続けている。
言ってて歯が浮かないのだろうか。
別に格好を付けようとして言っている訳じゃないから凄いとも言うが。
「今のを麒麟さんが聞いてたら〝蕁麻疹出る〟とか言って、のた打ち回られるよ」
「…そうですか?」
「〝甘い、甘過ぎる~っ〟て絶対言うと思う」
「大丈夫ですよ。僕とマスターよりも、ずっと甘ったるいのが、近くに居るじゃないですか?」
「こっちだって負けてないと思うけどね…」
甘いって、自覚はあるのか。
「火傷、大丈夫ですか?」
「おかげ様で。Ⅰ度といったところで済んだわ」
Ⅰ度の火傷…要するに赤くなっただけの軽症だ。
「こちらはほとんど終わりです。後は丸めてしまえばいいだけですから」
「ん~、じゃあ、使い捨て容器に入れ始めるかな~」
お供えとしての月見団子は、十五夜だと十五個お供えする。
でも数としては何となく物足りないので、最少で二十個くらいずつ入れる事にした。
後は人数で多少増やすとして…。
やっぱり、つまみ食いしたくなる人も居るだろうし、ね。
「…何だか、パックの数が多くないですか?」
「そう?」
「麒麟さんの所と、exrayさんの所と…まさか」
「うん、そのまさか」
「か、勘弁して下さいっ。森尾さんのところもですかっ」
察しのいい兄さんに頷いてみせると、分かりやすいくらいの反応をみせる。おまけに声まで裏返ってた。
「あ、あのお家のMEIKOさんは、ちょっと…」
苦手だ、とばかりに困った顔をする。
「そう言えば初対面でいきなり、可愛い~と言われつつ、窒息しそうな勢いであの胸に顔埋めさせられたもんね…グリグリと撫でられながら。…窒息はしないだろうけどさ、実際には」
苦手なのは、何気にあちらの姉さんに〝うちの弟より小さいKAITOは初めて見た〟と言われた事もこっそりと効いているような気がしたけど、それは黙っておく事にする。
きっと連休中だから、この後訪ねて行ったら間違いなく鉢合わせる事になるんだろう。
「ある意味、役得だったと思うけどな。男の子的には、ああいうのって天国なんじゃないの?」
「…ば、場合によります。それに…」
「それに?」
反芻するように尋ねたら、大仰に咳払いして誤魔化されてしまった。
追究しても、そのままだんまりを極められそうだったので、話題の方向を少し変えてみる。
「…あの家はボカロ人口増えたから、前より賑やかかもね」
「そうですね。あれだけの人数でも充分賑やかだと思うのに、更にですからね…」
「長居しなければ、それ程じゃないでしょ」
「…だといいです」
どうやら、流石にあの環境は、彼にも厳しいらしい。
でもあれはちょっと賑やかを少々通り越してると私でも思うのだから、仕方ないかも知れないような気もする。
昼過ぎ、大量の月見団子を詰めた袋を持って、彼が出掛けて行くのを見送って、私はふぅ…と息を吐くと、床にぺたんと座り込んだ。
朝からの作業で、のんびりなんてしていなかったからだ。
にも拘らず、人の行動の先を読んで、パッパと片づけまでこなして、しかも届け物までしている彼は、間違いなくマメなんだろう。
帰って来たら、本日の労をねぎらって少しサービスしてあげないとな、と思いながらソファーに寄りかかって目を閉じた。
数時間後、空になったエコバックを手に、彼が帰ってきた。
「あ、おかえり~」
それをにこにこと出迎える。
「ただいま、マスター」
答えつつ、兄さんは当然とばかりに私に歩み寄って、抱き寄せつつ軽くキスをしてきた。
出掛けにも同じ調子でして行ったのだが、ここまで習慣化して来るとまるで抵抗がなくなってくるから困る。
…しかも、嫌じゃないから尚の事だ。
既に新婚のノリのような気がしてきているけど、考えたら負けかも知れないなとも思う。
背中側に回した腕を少し緩めて、額がくっ付きそうな至近距離で彼が私の目を覗き込んでくる。
緩めても放さない辺り、小一時間はこうしている気なんじゃなかろうか。
でもまぁ、柔らかく微笑まれると、それでもいいやと思ってしまう辺り、私もかなりの重症だ。
「お疲れ様。お遣いありがと」
「いえ、お役に立てて何よりです」
「…でも、その割に早かったよね、帰って来るの」
時計は16時半を回ったかどうかというところだ。
コンスタントに事が運んだとしても、戻って来るのは18時を回るだろうと思っていたのに。
「…それが、その…」
疑問を口にした途端、彼はふいっと視線を逸らして言い淀んでしまった。
「ん?」
小首を傾げつつ、じっとその顔を見る。
生真面目そのもののような彼が、途中で任務を放棄するとも思えない。
むしろ自ら苦労を買って出るようなタイプなのだから、余計な仕事を請け負う事が合っても、その逆は考え難かった。
「カイトが森尾さんのところへ持って行く分を、自分たちで持って行くと言って…」
「…つまり、楽させて貰っちゃったんだ」
「…結果的には、そうなりますね」
「ヤツも嫌われたいのか、好かれたいのか、分かんないよね…ホント」
「そうですね。あの厭味がなければ、僕の方も、もう少し真っ当な対応をしようと思えるんですけれど…」
「素直じゃないよね~、まったく」
呆れながらそう言って、二人でクスクスと苦笑する。
「ね、出歩く気力、まだある?」
「…どこか、出かけるんですか?」
「折角の〝中秋の名月〟だから、お団子だけじゃなくて、果物もお供えしようかと思って、兄さん出てる間に行って来ようと思ったら…ついつい、昼寝しちゃってさ」
「いつものスーパーですか?」
「うん、…一緒に来てくれる?」
「はい、何処へとなりともお供します」
本当は疲れているだろうに、おくびにも出さず、彼はふわりと笑んだ。
「少し待っていて下さいね」
そう言ってリビングの方へと向かい、5分ほどで私室まで戻って来た。
恒例のやや茶がかった黒髪のウィッグに、白いTシャツ、色の抜けたデニムのパンツ…ちょっと近所へふらりと出掛けるのにいいかと、何着か用意していた安手の普段着だ。
少なくとも、格好で目立つという事はないだろう。
十人並みとは言えない程の美少年である事を除けばだが。
自宅からバス停4つほど離れた場所にある、スーパーまで一緒に歩く。
手を繋いでいる程度なら、遠見には「仲のいい姉弟」と思われるくらいだ、と開き直った。
下手におどおどしていると、余計に勘ぐられるのがオチだろう。
「果物って、何を買うんですか?」
「そうだな…葡萄とか梨かなぁ、この時期と言ったら。あ、運が良ければ無花果あるかも」
「林檎とかじゃないんですね」
「通年あるからね…何だかんだと」
「…空、曇ってますね」
「うん…今年はあんまり見られないかもな」
「…残念です」
「まぁまぁ、来年もあるし~」
「マスターは、月が好きですよね」
「うん、見てると惹かれるものがあるというか、ホッとする」
「実物の月は、マスターを迎えに行くようになって、初めて見たんです」
私の言葉を受けて、穏やかに言を継ぐ。
「不思議ですよね、見るたびに形も見える位置も、大きさまでまちまちで…初めて見た時に、何となくマスターに似ているような気がしたんですよ」
「…似てるって、何処が?」
「あの時はマスターの事を見上げてばかりでしたから、イメージが被ったんだと思います」
「私、あんなに綺麗じゃないよ…」
「そうですか?…そんな事、ないと思うんですけれど」
「ちょっ、んもう…何度人を赤面させれば気が済むのよ」
真顔でそんな恥ずかしくなるような事をまぁ、ぬけぬけと…。
「言っちゃ駄目なんですか?」
「だ、駄目とかじゃなくて、言ってて恥ずかしくないの?」
「…マスター、耳まで真っ赤ですよ」
「う~」
わざとだ、絶対人の反応見てわざと言ってる…。
私の右手を取って歩く彼は、ほんのりと頬を染めながら、私を見てクスリと笑っている。
それが意地悪い笑みなら完全に拗ねてしまうところだが、むしろその反対だから困ってしまう。
「…すみません、でも、何て言うか…」
たぶんまた、可愛いって言いたいんだろう。
「むぅ」
むくれた表情でプイと横を向いてみた。
「ま、マスター、あの…」
可愛いといわれるのが嫌なのではない、照れ臭過ぎて適わないのだ。
そこのところが分かっているのか。
拗ねた理由が分からないのだろう、隣でおろおろする彼に目を遣って、息を吐いた。
「そういう兄さんこそ可愛いよ、うん」
「そ、それはもう言わないって…」
「だって、本当に可愛いんだもん仕方ないよ」
あははは、と笑ってみせる。
「怒るかも知れないけど、そういうの全部込みで全部受け入れてるっていうのも、忘れないで欲しいな」
「…やっぱり、これ以上成長しない方がいいんですか?」
「これくらいちっちゃかったのが、あっという間にこんなに大きくなって…少し急いで大きくなっちゃったなとは、思ってるよ?」
「…マスター」
「これからもずっと一緒なんだから、急ぐ必要なんてないでしょ?」
繋いだ手とは反対の手で髪を撫でる。
でも、手触り的な意味でもウィッグなのが惜しまれた。
「大丈夫、私は面食いなんだから、ちゃんと男前になるって」
笑い飛ばす私に、彼が脱力する。
「だから…ね」
私はそう言って、人差し指で手招きのジェスチャーをする。
「?」
彼が首を傾げながら、覗き込むようにこちらに半歩分ほど近寄ってきたのを見て、私は素早くその頬に口付けて一気に駆け出した。
された方はほんの数秒、突然の事に呆然と立ち尽くした後我に返り、キスされた自らの頬に手を沿わせると、顔中が真っ赤になっていた。
「そ、外ではこういう事しないんじゃなかったんですかっ」
声を上ずらせながら、彼は慌てて私を追い駆けて来る。
逃げるようにして走りながら、私は頬が緩むのを堪え切れなかった。
ぐだぐだなまま終了。オチがつかんかった