Myselves

言葉と音楽に隠された魔法を探して放浪中。
そんな『自分自身』たちの旅の様子は?

【実験的SS】眠れない夜

2011-10-16 02:52:15 | Weblog
同じ出だしで違うジャンルを書けるのか?
という実験。





『眠れない夜』

【GS3 ver.】

「眠れない……な」
「ああ」
白い影の独り言に、黒い影が相槌を打った。
「なんか話して」
「話すことなんてありゃしねえよ」
「……そっか」
ひとつ伸びをして白い影は月を見る。
月の綺麗な夜だった。

琥一は月明かりに照らされた弟の横顔を見た。
素直に、綺麗だ、と思う。
手を伸ばしてその髪に触れると、弟はくすぐったそうに笑った。
「なんだよ、コウ」
「……なんでもねぇ」
美しくて、儚い。
月の光に溶けていきそうだ――と思った。

今夜は月が綺麗だ。
琉夏はそう思った。
ふと視線を横にずらすと、同じように月を見ている兄の姿が目に入った。
月の光に照らされた兄は、いつもより穏やかに見えた。
「……あン?」
「なんでもないよ」
琉夏はそう答えてまた月を見た。

再び、黒い影――琥一の手が伸びて白い影――琉夏の髪に触れる。琉夏はまたくすぐったそうに笑った。
ふと、2人は見つめ合った。
どちらからともなく微笑むと、2つの影がゆっくり重なった。

「俺たち、地獄に堕ちるかな」
「さあな。
 ――オマエと一緒だったら、どこへでも行ってやる」

それから、2人は再び唇を求め合った。





【Les Miserables ver.】

「眠れない……な」
「ああ」
アンジョルラスの独り言に、コンブフェールは相槌を打った。
今日は遅いから、話の続きは明日にしよう――そう言ったのはコンブフェールの方だった。
視線をずらすと、アンジョルラスは月を見ていた。
素直に、綺麗だ、とコンブフェールは思う。そして儚い。

「……月は平等なんだけどな」

アンジョルラスが唐突に言った。
「えっ?」
まるでプルヴェール――詩人である彼らの仲間の1人――のような表現に、コンブフェールは少なからず戸惑いを覚えた。アンジョルラスは、どちらかというと散文的な人間である。
「月も、星も、太陽も、平等に僕らを照らしている。
 ――なのに、自由は、」
そこでアンジョルラスは言葉を切ると、ふぅっとため息をついた。
「……すまない」
「構わないよ、アンジョルラス」
コンブフェールは目を閉じた。

――自由は平等には与えられていない……

アンジョルラスが言いたかったであろう言葉を考える。
そうだ、だからこそ、僕たちは――

それぞれの思いを胸に秘めた2人を、月の光が照らしていた。




――――――――――――――
深夜のノリと勢いで書いてみました。
1本目、コウ→ルカでも良かったんですが、好きに動かしてみたらこうなりました。もっと色っぽい方が良かったかなあ。
2本目もBLっぽくしてもよかったんですが、誰×アンジョルラス? と思ってやめました(←右側は決まっている)。ちなみにコンブフェールは参謀的存在です。アンジョルラスが部長ならコンブフェールは副部長といったところ。

実験結果は……さあどうでしょうか。
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