●「この本の面白さは夢中になること間違いなし。私は一晩で一気に読んじゃいました」というような話をときどき聞く。
だが私はどんなに面白い本でも必ず眠くなる。眠くなるまでの時間が、多少遅かったり早かったりするだけのことで「面白くて夜も眠れない」という経験をしたことは残念ながら一度もない。
●むしろ一晩で一気に読めてしまう本は、どちらかというとつまらない本か、あるいは、中味がすべて我が意を得ていて心地よい本かのいずれかである。
ガツーンと人生に影響を与える本に出会った時は決して一気に読み通すことなどできないはずだ。
●人生を変える言葉や文章、主張に出会うと、それは身体の奥の奥にある髄の部分にまでドスーンと響くので、そこでしばらく立ち尽くしてしまう。
だから、物理的にも精神的にもスラスラ読めなくなり、数行読んでは唸り、もう数行読んではコーヒーをいれながら考える。そんなことをくり返しているうちに、一冊読み終わるのに何週間、時には何ヶ月もかかる。
●いろんな会社の経営計画書を拝見して、それに似た気分になることがある。サクサク読めて何も残らない経営計画か、悪文で読むのが辛い経営計画がまだまだ多い。
従来と同じ意識と発想で計画を作っても、根底から企業を揺さぶるものにはならない。サラサラと作り、サクサクと読めて、スラスラと忘れられていく三文小説のような経営計画であってはならないと思うのだ。
●松下幸之助さんの奥様 "むめの" さんは一冊だけ本を書かれた。
『難儀もまた楽し』という。 → http://www.amazon.co.jp/dp/4569544703/
PHP本社の清水取締役のお話によれば、むめのさんはこの本で次のよう
なことを書かれているそうだ。
「世間では幸之助を"経営の神様"などと持ちあげてくださるが、妻からみて彼を"神様"と思ったことは一度もありません。ただ、いつも感心していたのは、彼の計画力の凄さです」
(現在、むめのさんの本は発注中につき、この発言の文責・武沢)
●奥様も脱帽したという幸之助の計画力とはどの程度のものだろうか。
端的な例が、有名な「命知元年」の話だろう。
昭和7年5月、昭和恐慌の影響がのこり、世間ではまだ不況風が吹いていた。そんなある日、ある宗教団体の本殿建築現場に遭遇した幸之助は、そこで嬉嬉として働く人たちの姿や表情をみて、おどろく。
「この人たちは心から喜んで無償の奉仕をしている。それは、宗教が人々に精神の安定をもたらし、人々を幸せにしているからに他ならない。宗教は崇高な使命に立つ聖なる事業だ。これは、なんとすぐれた経営ではないか。松下電器の事業も崇高で聖なるものにすることができれば、そこで働く人たちはもっと生き生きとしてくれるに違いない」
そう考えた幸之助は松下電器の綱領(経営理念)をまとめ上げ、「水道哲学」を考案し、それを実現するための250カ年計画をとりまとめた。
更にはその翌年にはその遂行組織として日本初となる事業部制組織を作りあげるにいたる。
●PHPの清水取締役のお話によれば、幸之助の250カ年計画は25年を1スパンにしたものが10節あるという。
1スパン25年あるうち、最初の10年が「建設の10年」、次が「活動の10年」、最後が「貢献の5年」となっている。それが10節あるわけだ。
しかもその10年、5年はそれぞれに細分化されていて事業の方向性や数字などが書き込まれているという。
●清水取締役が新入社員だったころ、講話で幸之助にこう言われたそうだ。
「仕事は知識でやるもんやない。知恵でやるもんや。知恵とは知識×想い、である。君たちの知識は私の二倍はあるだろう。だけど、想いはぼくのほうが四倍はあるから、君たちに負けへん」
幸之助が語る「想い」とは、目標や計画に対する思い入れの深さと熱さではないだろうか。そこから知恵が生まれるのだ。
私たちも、一晩で読める計画をつくるのではなく、自分と会社を根底から変えるような気宇壮大で骨太な計画を作ってみようではないか。
だが私はどんなに面白い本でも必ず眠くなる。眠くなるまでの時間が、多少遅かったり早かったりするだけのことで「面白くて夜も眠れない」という経験をしたことは残念ながら一度もない。
●むしろ一晩で一気に読めてしまう本は、どちらかというとつまらない本か、あるいは、中味がすべて我が意を得ていて心地よい本かのいずれかである。
ガツーンと人生に影響を与える本に出会った時は決して一気に読み通すことなどできないはずだ。
●人生を変える言葉や文章、主張に出会うと、それは身体の奥の奥にある髄の部分にまでドスーンと響くので、そこでしばらく立ち尽くしてしまう。
だから、物理的にも精神的にもスラスラ読めなくなり、数行読んでは唸り、もう数行読んではコーヒーをいれながら考える。そんなことをくり返しているうちに、一冊読み終わるのに何週間、時には何ヶ月もかかる。
●いろんな会社の経営計画書を拝見して、それに似た気分になることがある。サクサク読めて何も残らない経営計画か、悪文で読むのが辛い経営計画がまだまだ多い。
従来と同じ意識と発想で計画を作っても、根底から企業を揺さぶるものにはならない。サラサラと作り、サクサクと読めて、スラスラと忘れられていく三文小説のような経営計画であってはならないと思うのだ。
●松下幸之助さんの奥様 "むめの" さんは一冊だけ本を書かれた。
『難儀もまた楽し』という。 → http://www.amazon.co.jp/dp/4569544703/
PHP本社の清水取締役のお話によれば、むめのさんはこの本で次のよう
なことを書かれているそうだ。
「世間では幸之助を"経営の神様"などと持ちあげてくださるが、妻からみて彼を"神様"と思ったことは一度もありません。ただ、いつも感心していたのは、彼の計画力の凄さです」
(現在、むめのさんの本は発注中につき、この発言の文責・武沢)
●奥様も脱帽したという幸之助の計画力とはどの程度のものだろうか。
端的な例が、有名な「命知元年」の話だろう。
昭和7年5月、昭和恐慌の影響がのこり、世間ではまだ不況風が吹いていた。そんなある日、ある宗教団体の本殿建築現場に遭遇した幸之助は、そこで嬉嬉として働く人たちの姿や表情をみて、おどろく。
「この人たちは心から喜んで無償の奉仕をしている。それは、宗教が人々に精神の安定をもたらし、人々を幸せにしているからに他ならない。宗教は崇高な使命に立つ聖なる事業だ。これは、なんとすぐれた経営ではないか。松下電器の事業も崇高で聖なるものにすることができれば、そこで働く人たちはもっと生き生きとしてくれるに違いない」
そう考えた幸之助は松下電器の綱領(経営理念)をまとめ上げ、「水道哲学」を考案し、それを実現するための250カ年計画をとりまとめた。
更にはその翌年にはその遂行組織として日本初となる事業部制組織を作りあげるにいたる。
●PHPの清水取締役のお話によれば、幸之助の250カ年計画は25年を1スパンにしたものが10節あるという。
1スパン25年あるうち、最初の10年が「建設の10年」、次が「活動の10年」、最後が「貢献の5年」となっている。それが10節あるわけだ。
しかもその10年、5年はそれぞれに細分化されていて事業の方向性や数字などが書き込まれているという。
●清水取締役が新入社員だったころ、講話で幸之助にこう言われたそうだ。
「仕事は知識でやるもんやない。知恵でやるもんや。知恵とは知識×想い、である。君たちの知識は私の二倍はあるだろう。だけど、想いはぼくのほうが四倍はあるから、君たちに負けへん」
幸之助が語る「想い」とは、目標や計画に対する思い入れの深さと熱さではないだろうか。そこから知恵が生まれるのだ。
私たちも、一晩で読める計画をつくるのではなく、自分と会社を根底から変えるような気宇壮大で骨太な計画を作ってみようではないか。