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伊東光晴アベノミクス批判

2015-01-15 14:13:03 | 経済
 あの「ケインズ理論」で知られる伊東光晴さんがアベノミクスを批判されている。
伊東光晴さんと言えば、まだ経済学の右も左も判らぬ頃に何冊かの経済の本で
教えて頂いた方で、40年も経ったいまも尊敬する方である。

 その伊東さんが15.1.7日の毎日の夕刊の「この国はどこへ行こうとしているのか
に "「戦後の自由」を諦めない" のタイトルでアベノミクス批判をされている。
安倍首相は強い経済を取り戻すというが、まだ殆ど何もやっていないとして、以下
のように批判する。
 1.中・低所得者は税負担を重いと感じていて、負担の割りに報われていないと
   思っている。そのため減税を言うものが当選し、税負担を主張するものは落
   選する。消費税延期を訴えた首相は勝利した。しかし急務な財政再建が必須
   だが人気取りで法人減税を言い出した。財政の好転が条件のアベノミクスの
   第二のである公共投資がこれで続けられ訳が無い。

 2.非正規社員が増加し続けていることは重大な問題で、雇用が増えたと言って
   も格差を助長する非正規の増大と正規の減少では社会の不安定さが増すば
   かりである。(昨年末には非正規社員が2,000万人を超えた)
   また、一定以上の正規社員については残業手当も無い無制限の労働を強い
   ることを容認しようとしている。

これら2つの問題への処方箋も無しにアベノミクスが成功しているかの如き言動を
する者には怒りすら覚えるという。

税負担と社会制度が並立するような仕組みを構築しないといづれ日本は立ち行か
なくなる。そのためには、脱税と租税回避を減らし、年金受給者をも含めた皆納税
制にする必要がある。

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2014年8月10日 日刊ゲンダイとのインタビューで「アベノミクス批判 四本の矢を
折る(岩波書店)」に関して以下のように応えている。

→専門家がアベノミクスを評価していますが。
 
 エコノミストは理論を知らない。経済学者は現実を知らない。そんなのが新聞社
 で御用を務めている。理論も現実も知っている日本人はいない。

→3本の矢だと言われているが?
 
 アベノミクスには戦後の政治体制の改変という第4の矢が隠されている。アベノ
 ミクスはすべてを壊そうとしています。

→第一の矢はどうか?

 第一の矢だと言うが、本質的には日銀の国債引き受けです。それをやらないと、
 予算が組めない。これ以上国債を出すと、国債金利が上がってしまうからです。
 金利が1%上がれば、予算編成ができなくなる。財務省の役人のクビが飛んじ
 ゃう。そこで言うことを聞く人物を日銀総裁にしたのです。

→異次元緩和で投資や消費が増えるもくろみでしたが?

 根拠なき政策効果への期待です。日銀の岩田規久男副総裁は異次元緩和をす
 ると、人々は物価が上がるだろうと考え、設備投資が増加し、景気浮揚の力が働
 くとしていますが、人々の期待は多様なのです。物価が上がれば、生活が困ると
 考え、生活を切り詰める人もいるかもしれない。金利が低くなったところで設備投
 資をするかというと、過去に経済企画庁の企業行動調査は否定的な調査結果を
 出しています。

→株価が上がって人々は幻想に惑わされている

 安倍首相は政権に就いた時に、「15年間の長期の不況からの脱却」と言った
 でしょう。これにカチンときました。この前提からしてウソだからです。汚染水コ
 ントロール発言もそうでしたが、彼は平気でウソをつく。なぜだかわかりますか? 
 すべてが聞きかじりだからですよ。学者の間では2002年からリーマン・ショッ
 クまでは好景気だったのは常識です。15年不況と言っていたのは岩田氏だけ
 ですよ。

 それに日本株が上がったのは政権交代やアベノミクスとは全く関係がないメカ
 ニズムが働いたからです。外国人投資家には分散投資に代表される投資原則
 があって、米国枠、EU枠が決まっている。米国株が上がり、その枠を超えれば、
 その分は第三国、つまり日本市場に流れてくる。分岐点は2012年6月で、日本
 株の上昇は野田政権が続いても起こりましたよ。


→10年で200兆円、1年間で20兆円の国土強靭化政策ですが、国債の累積状
 況からみてもできる余地はないと。


 それなのに、人気取りで法人減税とか言い出すんだからね。税収の減少と支出
 の上昇の折れ線グラフを「ワニの口」と言いますが、財務省の役人も開いた口
 がふさがらないと言いたいでしょう。


→こうした場当たり政策を続けて、どうなるのか? 特に日銀引き受けです。い
 つまで続けるのか。異次元緩和に出口戦略はあるのか? 


 出口戦略なんて、まったくありません。短期間はごまかしができても長期間は
 できません。バランスを崩し、大きなインフレーションを起こす。だから、大イン
 フレを経験したドイツは決して、こういうことをやらないのです。

→成長戦略はどうですか? TPPも心配です

 TPP交渉に参加している10カ国は、地域的にも拡散しており、産業特性、制度、
 伝統、発展の度合い、所得も異なっています。そんな中で、あらゆる規制をともに
 できますか。戦後、アメリカは世界経済体制のルールをつくる際、理想主義に燃え
 ていました。それで発足したのが「GATT」ですが、あれは製造業のルールなん
 です。各国で自然条件の異なる農業、制度が異なるサービス分野は除外した。そ
 こまで一律にしたら、世界は先進国工業、後進国は農業だけになってしまうから
 です。そういう根本を押さえておかないといけません。

→安倍首相は原発をトルコに熱心に売り込んでいますね。

 原発問題も無責任の極みですよ。原子力発電の最大の問題は廃棄物の処理がで
 きないことです。福島の除染が行われていますが、汚染物を流して移動しているだ
 けなんですよ。現在、放射性物質を除去する、分解する技術がない。どうにも処理
 ができないのです。それなのに安倍首相はトルコに原発を売り込む時、「廃棄物は
 モンゴル高原に埋める」と言ったそうですね。アメリカがIAEAを通じてそう言ってい
 ますから、その“口マネ”をしたのでしょうが、モンゴルの同意を得たわけではない。


→福島第1にも行かれたそうですね。
 電気事業審議会の委員を20年間やり、福島第1原発の現場の実態を歩いて調
 べたことがあります。原子力工学の専門家は原子炉の原理はわかっても現場の
 ことはまったくわかりません。

→経済学者と同じ?

 電線が30キロメートル、パイプは10キロメートルもあるんですよ。原発を建設
 した日立、東芝、三菱の技術者以外はわかるはずがありません。資源エネルギ
 ー庁もそうです。安倍首相は「政府が責任を持って」と言いますが、できっこあ
 りません。

→「第4の矢」の危険性です

 日中問題で私は日中国交回復に側面から関係したんです。その経緯をいささか
 でも知る者として、言っておきたいのは、尖閣列島の領有問題は「棚上げ以外
 にない」ということです。田中角栄、周恩来とともに、外務省の条約局長として日
 中国交正常化をやり、後に中国大使になった故中江要介さんがこう言っていま
 した。「先人たちが日中双方で長い友好関係を持続してきた努力を無にしてはな
 らない。政治のトップがナショナリズムに固執してそういうことをしてはならない」と。

→安倍政権はナショナリズムをあおり、抑止力の重大性を強調し、自衛隊の役割
 を拡大させ、それを積極的平和主義と言っていますよ。


 中国に侵略した時も日本は「東洋平和のため」と言ったのです。紛争の解決手
 段として武力を用いるという本質は変わらない。武力で紛争を解決できないの
 は、米国がイスラエル問題で手を焼いていることをはじめ、歴史の示すところな
 んです。イスラエルがある限り、アラブ諸国は米国と戦いますよ。そんな米国が
 やっている喧嘩に首を突っ込むのが集団的自衛権です。日本はアラブ諸国から
 憎まれていいんですか。日本は過去の戦争の反省から、「国際紛争解決の手段
 として武力を使わない」と憲法9条で定めた。その精神の先見性は普遍的で、
 いまこそそれが生かされるべきだと思います。



 昨年の8月の頃のインタビューであるが、今読んでも全くその通りではないか。
 日銀の黒田総裁の異次元の金融緩和で円は安くなる一方だし、株価も相当下
 げた。イスラムとの対立は激化し、第四の矢のための防衛費の増加は着実に
 進められており、減ったとは言うが37兆もの国債発行である。1,035兆円の
 天文学的債務残高は誰がどうやって払うのだろうか?対GDP比債務残高は
 234%で、あのギリシャ、イタリア、スペインの200%以下を抜いて断然な1位
 なのである。

   

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