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Moon Dogs Blog

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グリーンブック

2019-03-05 22:32:00 | 映画


※ネタバレ注意

今日は「グリーンブック」を鑑賞。

この作品は実在した黒人ピアニスト、ドン・シャーリーと彼の運転手兼用心棒となったイタリア系の白人トニー・バレロンガが黒人用旅行ガイド"グリーンブック"を頼りにアメリカ南部を旅するロード・ムービー。

監督&脚本はピーター・ファレリー。
出演はヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ。

先日行われた第91回アカデミー賞で作品賞&助演男優賞&脚本賞の3冠に輝いた話題作がいよいよ公開!(アカデミー賞授賞式の翌週すぐに公開とは何というタイミング!)

舞台は1962年。
1876年から1964年まで存在したアメリカ南部の州法"ジム・クロウ法"という人種隔離政策によって一般の公共施設の利用を禁止された黒人ドライバーが利用するガイドブックが本作のタイトル。

ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリによる鰍ッ合いが最高で、予想していた内容とは違い素晴らしいバディ&ロード・ムービーでした。

随所に登場するドン・シャーリーとトニー・バレロンガのやり取りによるコメディ要素が実にスマート。
ピーター・ファレリー監督にしては意外なほど綺麗なコメディ描写にも驚き。(代表作は「メリーに首ったけ」や「ジム・キャリーのMr.ダマー」などコメディ作品を多く手がけた人物で、いわゆる"おバカ・コメディ"を作る監督といったイメージ)

主演男優賞にノミネートされたヴィゴ・モーテンセンの作品は個人的に"ハズレ無し"と思っていて、ヴィゴの持つ"危険な雰囲気"を上手く出したキャラクターがトニー・バレロンガにピッタリ。
しかも本作の為に14kg体重を増やしての役作りにも注目。(一番好きなヴィゴ作品は「ザ・ロード」。)
※他にも危険な雰囲気を持つ俳優だと感じるのはライアン・ゴズリングなど。

助演男優賞を授賞したマハーシャラ・アリは先日観た「アリータ:バトル・エンジェル」にも出演していましたが、コメディからヴィランまで演技の幅が広すぎ!
もうすぐ公開の「スパイダーマン:スパイダー・バース」にも声の出演をしていて、ここ最近は出まくり状態!
凄すぎます…。

で、この作品。
驚いたのがトニーの息子であるニック・バレロンガが脚本と製作に関わっていて、本作はトニー視点の描写が中心で話が進んでいきます。

アカデミー賞作品賞を授賞した効果は絶大で、普段ほとんど客がいない松山の劇場も今回は8割のお客さんが埋まるほどの人気。(あんなに入ったのは「カメ止め」以来か。)
しかしこの作品、スパイク・リー監督をはじめとするアフリカ系アメリカ人にはかなり批判が相次いでいて、ドン・シャーリーの遺族までもが否定的に見ているのだとか。

それはやはりドン・シャーリーの(映画における)立ち位置。
"白人に守られている黒人"という描かれ方が否定的な要因。

この"白人に守られている黒人"という表現は映画の歴史でも度々問題になっていて、最近でも「それでも夜は明ける」で物議を呼びました。(ャXター問題やアカデミー賞授賞式での騒動など様々な問題が出た。)

これ(本作)によく似た作品が1989年の「ドライビング・MISS・デイジー」。
ユダヤ系の老婦人とアフリカ系黒人運転手の交流を描いた作品。
しかし、本作が違うのはドン・シャーリーが黒人で白人に差別を受けながらも黒人の中でも居場所がなかった点。

それを最も象徴していたのが、レコード会社から借りたキャデラックがオーバーヒートして停車していたシーン。(柵の向こう側には農作業する黒人たち。)

これまでドン・シャーリーは自分自身を封印して周りと共存していくように振る舞っていました。(ドンは本当はジャズを演奏したかったが教師に言われクラシックを学ばさせられたり、ゲイであることを隠したり、バンドのメンバーやモーテルの客に声をかけられても決して輪の中に入ろうとしなかったりなど自分の意に反して生きてきた。)

ラストではトニーと一度別れたドンが再びトニーの家に訪れます。
自分から踏み出して歩みよる勇気を気の利いたオチで締めるのですが、劇中でのトニーのセリフ「待つのではなく、自分から歩みよるんだ!」という伏線がここで綺麗に回収されます。

移民や人種、LGBT問題はどれも根深く、この作品はそれらを意識するにはうってつけの作品でした。(特に移民や人種問題に関しては意識の低い日本人にとっては。)

ディア・ハンター 4Kデジタル修復版

2019-03-04 22:30:00 | 映画

今日は「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」を鑑賞。

第51回アカデミー賞で5部門を獲得したマイケル・チノミ監督による作品。
ベトナム戦争により心に傷を持った男たちの苦悩を描いた名作。
今回、製作から40周年を記念して新たに4Kデジタル修復版として復活、日本でも公開される劇場が少ない中ここ松山でも無事に公開されました。

もう何回観ただろうこの作品…。
もちろん劇場での鑑賞は初。(公開当時はまだ6歳くらい…)

スクリーンで観るとより凄まじさが伝わります。

ロバート・デ・ニーロをはじめ、クリストファー・ウォーケンやメリル・ストリープなども皆若くてカッコいい!
これが遺作となったジョン・カザールの姿も何だかジーンときます。(メリル・ストリープと結婚)

ちなみにタイトルの"ディア・ハンター"は"鹿猟師"の意味。
マイケル(ロバート・デ・ニーロ)は徴兵される前日に鹿狩りに向かいます。
マイケルは"鹿を一発で仕留める"というルールを自分に課して狩りをします。
なぜこのルールを守るのかというと狩りにゲーム性を持ち込むためのもの。
命を奪う行為をゲーム感覚で楽しむためのルールな訳です。

その後、徴兵されベトナム戦争で捕虜となったマイケルたちは命の危機に晒されます。
ベトナム兵たちにロシアン・ルーレットでゲームの道具として扱われるのです。
つまりゲーム感覚で鹿の命を奪っていたマイケルは、今度は自分が鹿の立場となってしまう訳です。
ここでマイケルは命を奪うことの重さを知るのでした。

ラストで再び鹿狩りをするマイケルはわざと弾をはずし鹿を逃がします。
命をゲーム感覚で奪う異常な行為(ベトナム戦争)を恥じるのです。
スタンリー(ジョン・カザール)がいつも銃を持ち歩き、腹が立つとすぐに銃を抜く行為さえもマイケルは許せなくなっていきます。

そして本作は命を奪う行為の他に移民問題もテーマに盛り込んでいます。
マイケルたちはロシア系移民。
登場人物たちは移民であることへの後ろめたさがあり、愛国心を示すためにベトナム戦争へ行く訳です。
劇中、結婚式のシーンでベトナムから帰ってきた兵士に敬意を示そうとしたり、ニック(クリストファー・ウォーケン)が病院で名前を見た医師に「ロシア人か」と言われ、即座に「アメリカ人だ!」と言うシーンでも分かるように彼らはアメリカへの愛国心を無理矢理示そうとし、アメリカ人になろうと必死にもがいているのです。
そんなロシア系移民のマイケルたちはロシアで生まれたロシアン・ルーレットにより人生を狂わされていくという描写が何とも皮肉。

ラストでみんなが歌う"God Bless America"のシーンも移民たちの悲しい姿を描いていて、改めて観ると凄い衝撃作です。

そして何が凄いかって、今回これを劇場で観た時、お客さんが誰一人いなくて"貸し切り状態"だったってこと。(ってか、これを誰も観ようと思わないのか???)
いやぁ~贅沢な182分でした。

アリータ:バトル・エンジェル

2019-03-01 12:44:00 | 映画


※ネタバレ注意

今日は「アリータ:バトル・エンジェル」を鑑賞。

この作品は、1990~1995年に「ビジネスジャンプ」で連載された木城ゆきとの漫画「銃夢」を実写映画化した作品。

監督はロバート・ロドリゲス。
製作&脚本はジェームズ・キャメロン。
出演はローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ他。

ギレルモ・デル・トロから勧められて読んだという日本の漫画「銃夢」。
惚れ込んだジェームズ・キャメロンはすぐに映画化権を獲得、悲願の映画化にこぎつけた話題作がいよいよ公開!

予告やCMでやたら"ジェームズ・キャメロン"を推していて、てっきり監督はジェームズ・キャメロンかと思っていたらロバート・ロドリゲスだったんですか…(^^;

ちなみに原作漫画は未読。
なので原作との違いや名シーンの再現などはわかりません。

アリータを演じたのは「メイズ・ランナー」のローラ・サラザール。
大きな目が特徴のキャラクターですが、時間が経つうちに何も違和感が無くなっていくのが不思議。
むしろ次第に可愛く見えてしまいました。
しかし、わざわざローラ・サラザールを使いモーション・キャプチャーで撮影する意味があったのか!?(なぜならアリータがローラ・サラザールによく似てるから。)

内容はどこかで見たような内容。
サイバー医師のイドが亡き娘のために作ったドール・ボディーをアリータに与え、実の娘のように接する描写はほぼ「鉄腕アトム」。(記憶や自我の目覚め、世界観等は「ブレード・ランナー」か!?)

"強い女性"や"メカ"、"サイボーグ"などどれもジェームズ・キャメロン作品に共通な要素がたくさんあり、映画化権をすぐに取ったというのも納得。

ただこの作品は絶対にIMAX版がオススメ!
特にモーターボールのシーンは迫力があり、バトル・シーンも含めビジュアル面では圧涛Iな出来映え。

しかし完全に続編を意識したプロットが逆に中途半端に感じてしまい、観終わった後には物足りなさだけが残ったのが残念。(特に黒幕のノヴァの登場シーン)

ちなみに監督のロバート・ロドリゲス。
"1本の映画で最も多くの役割を兼ねた人物"としてギネスに登録されていましたが(1作品で監督や脚本など11の役割でギネスに。)、2012年にジャッキー師匠がこれを破りギネスに認定されました。(「ライジング・ドラゴン」で1作品15役!!)

第91回アカデミー賞授賞式

2019-02-26 22:41:00 | 映画

今年もやってまいりましたアカデミー賞授賞式。

今回は過去のツイート(同性愛者への差別発言)が問題視されたケヴィン・ハートが司会を降板。
何と30年ぶりに司会者不在で行われた今回の受賞式。

オープニングはQUEEN+アダム・ランバートのライブで幕を開けました!

混戦が予想された注目の作品賞は「グリーンブック」。
話題となった「ボヘミアン・ラプソディ」は受賞ならず!
監督の起こした過去のセクハラ問題が影響するか?と思われましたがやはり強し!
オスカーを手にした製作のチャールズ・B・ウェスラーは2017年に亡くなったキャリー・フィッシャーに捧げるとコメントし会場を沸かしました。
史上初の配信作品受賞か?と期待が高かった「ROMA/ローマ」も各賞レースで強さを発揮しましたが受賞ならず!

監督賞はその「ROMA/ローマ」を監督したアルフォンソ・キュアロンが受賞。
「ゼロ・グラビティ」以来となる2度目の受賞。

主演男優賞は最有力だったクリスチャン・ベイルを抑えて「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリーに成りきったラミ・マレックが受賞。
初ノミネート&初受賞となりました。

主演女優賞は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマンが受賞。
7回目のノミネートとなったグレン・クローズと争う形になりましたが、第75回ベネチア国際映画祭女優賞に輝いたコールマンがやはり強かった!

助演男優賞は「グリーンブック」のマハーシャ・アリ。
ゴールデン・グローブ賞でも助演男優賞を獲得していて、納得の受賞。
「バイス」のサム・ロックウェルが受賞すると昨年の「スリー・ビルボード」に続いて2年連続の快挙となったのですが…。

助演女優賞は「ビール・ストリートの恋人たち」のレジーナ・キングが受賞。
前哨戦総なめで最有力のレジーナ・キングがそのまま受賞という形に。
こちらも初ノミネート&初受賞。
毎回ノミネートはされつつも受賞出来ないエイミー・アダムスは今回も受賞ならず。

細田守監督の「未来のミライ」がノミネートされた長編アニメーション賞はゴールデン・グローブ賞を制した「スパイダーマン:スパイダーバース」がこの部門6連覇中のディズニーを抑えての受賞。

日本でも社会現象にもなった「ボヘミアン・ラプソディ」は主演男優賞をはじめ4冠という結果に。(他に音響編集賞、録音賞、編集賞。)
報道でもやはり「ボヘミアン・ラプソディ」ばかり…。

アルフォンソ・キュアロンやラミ・マレック、スパイク・リー(脚色賞「ブラック・クランズマン」)などの受賞者たちを見ると今まで"白いオスカー"と言われてきた授賞式も今回は何だか特別な雰囲気に。(アルフォンソ・キュアロンはメキシコ人、ラミ・マレックの両親はエジプトからの移民。)

特に念願のオスカー受賞となったスパイク・リーの授賞式は作品賞以上のハイライトのようで、プレゼンターを務めたサミュエル・L・ジャクソンのリアクションから鳥肌ものでした。

今年から新しく新設された部門「人気映画賞」は批判が相次ぎ見送りに。
去年も色々とハプニングがありましたが、波乱を含めアカデミー賞授賞式らしいといえばらしいですが…。

3月からはアカデミー関連の作品が日本でも続々と公開されていき、春から7月くらいまではより楽しみな映画ライフに。
しかし毎回言ってますが、賞レース関連の作品でも愛媛では公開されないものがいくつかあり、それを踏まえるとホント愛媛ってサブカルチャーの発展途上県だなぁと感じるのでした。

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー

2019-02-25 22:40:00 | 映画


※ネタバレ注意

今日は「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」を鑑賞。

この作品は幽霊になっても妻に寄り添い見守り続ける夫の時空を越えた旅を描いた作品。

監督&脚本はデヴィッド・ロウリー。
出演はケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ。

予告映像だけでもその独特な世界観が印象的な作品で、個人的にも注目。
全国公開は昨年11月。
約3ヵ月遅れでの公開となりました。

若い夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラ)。
ある日自宅前で不慮の事故死を遂げたCは成仏出来ず、悲しみに暮れるMに幽霊となって寄り添い続けるという単純なストーリー。

まず驚きなのが画面サイズ。
シネマスコープやアメリカンビスタサイズなど色々ありますが、本作は画面の4隅が丸いスタンダードサイズ!

登場人物のセリフの少なさ、まるでアートのような美しい映像、ほとんどのシーンが長回しによるカット、幽霊のCのヴィジュアルがただ白いシーツを被っただけといった独特な雰囲気の作品で、これだけでも惹き付けられます。

製作はA24。
最近このA24のロゴよく目にしますが、調べてみるとアカデミー賞を受賞した「ムーンライト」をはじめ、「スイス・アーミー・マン」、「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」、「エクス・マキナ」、「ルーム」とどれも斬新な切り口でマニアックな作風のものばかり。

あぁ、納得。

面白かったのが、途中で登場する無神論者の熱弁のシーン。
ベートーベンの第九を例に出し、"どんなに素晴らしいものを作り出してもいずれ世界は終わる"
"神もいなくなる"、"しかし我々が生きている間はベートーベンが居なくなっても第九は残り続ける"というシーン。

この伏線はラストに繋がっていて、一人残されたMが遺品整理をして家を出ていく際に柱の隙間に手紙を入れ、上からペンキを塗り出て行ってしまいます。
Cの幽霊はその手紙を取ろうとするのですが、なかなか取れません。

この手紙が先ほど言ってた無神論者の第九になる訳です。

過去に遡りながらもずっとMを見守り続けるCがラストでようやくその手紙を取り出し読んだ瞬間、Cは消えてしまいます。(成仏した。)

その手紙には何が書いてあるのか観客にもわかりません。
ラストの解釈は全て観客に委ねられている訳です。

賛否が分かれるだろうこの作品。
件p性が高く、感動作。
時空を越え、過去や未来に遡りながらも妻に寄り添い続ける幽霊の姿にグイグイと引き込まれていき、観終わったあとは切なさだけが残る最高のラブ・ストーリーでした。

こんなにシンプルで感情を揺さぶられる作品は久しぶりでした。