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ぱんつの穴(のぞけ、ピーピングトム)

メディカル・ライター紀伊國屋のプログです。主観と偏見で、メディカルトピックスを中心に紹介していきます。

風邪と風邪薬④

2004年12月09日 | よき医療とは…
小児の風邪も抗菌薬は厳禁-小児呼吸器感染症ガイドラインで明示-
小児の呼吸器感染症に関するガイドラインがまとまった。肺炎の重症度分類が小児で初めて示されたほか、成人と同様に肺炎などの急性呼吸器感染症に対する抗菌薬の適正使用を求める内容だ。
(日経メディカル12月号:36-37, 2004)

日経メディカルの最新号で気になる記事をみかけた。ようやく、小児呼吸器感染症ガイドラインがまとまったらしい。このガイドライン中心はやはり成人と同じく肺炎における治療指針の提示である。ただ「肺炎への抗菌薬適正使用のためには、風邪症候群まで検討の幅をひろげる必要がある」との認識から、いわゆる風邪症候群まで網羅するガイドラインとなったということらしい。
 本プログの『
風邪と風邪薬②』でも話してるとおり、風邪に抗菌薬は効かないのに、依然として細菌性肺炎や細菌性上気道炎などの予防目的で処方されている。ただ、この予防効果についても、エビデンスに乏しいのが実情というのは紹介したとおり。今回発表される小児呼吸器感染症ガイドラインでは上気道炎のうち病変が鼻咽頭に限定した鼻咽頭炎については「普通感冒」とする。「感冒に対しての抗菌薬の仕様は有害無益とされ、適応がないとする報告が多い」とはっきり明記されたことは特徴だろうね。なかなか踏み込みんでると思う。。それぐらい風邪に抗菌剤が今だにスタンダードということか。。

そういや、マガジンに連載中の時事問題マンガ『
クニミツの政(まつり)』で、次に取り上げるテーマは医療問題みたいだね(2004年12月9日時点)。たかが風邪ごときに何種類も薬を出す日本医療。風邪薬には、風邪よりも怖い副作用があるっていうところかな・・・。アスピリン脳症、ライ症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、アナフィラキシー・ショックの話などが、いやらしく出てきそうだね。情報提供は賛成だけど、どういうスタンスでやるか興味がある。どこまで原作者が医療問題の本質を把握されてるか、お手並み拝見といきましょうか・・・。冷静かつ正しい情報提供を望む。必要以上に恐怖を煽ることは百害あって一利なし。

京大病院投薬事故の問題点と今そこにある危機・・・①

2004年12月07日 | よき医療とは…
投与ミス 70代男性重体 京大病院、連日投与を指示

京都大医学部付属病院(京都市左京区)は3日、関節リウマチ治療薬の投与ミスが原因とみられる呼吸障害で、近畿在住の70代男性が重体になったと発表した。ICU(集中治療室)で人工呼吸器を付けて治療しているが、予断を許さない状態という。
男性は2000年から関節リウマチと骨粗しょう症で京大病院免疫・膠原(こうげん)病内科(三森経世教授)を外来受診、関節リウマチの治療薬メトトレキサート(リウマトレックス)を服用していた。
10月25日、消化管出血のため同病院の消化器内科(千葉勉教授)に緊急入院。病棟担当の研修医(25)は週に1日、計6ミリグラムを3回に分けて投与するメトトレキサートを、連日投与するよう看護師に指示、5日間にわたって計22ミリグラムが投与された。研修医は指示の際、免疫・膠原病内科の外来担当医に問い合わせていなかったという。
その後、入院時から症状のあった肺炎が悪化した。薬剤の連日投与が原因の可能性が高いため、同病院は2日に医療事故調査委員会を設置し調査を進める。同病院で会見した田中紘一病院長は「治療に全力を尽くしているが、多大な迷惑と心配をかけ深くおわびする」と謝罪した。
メトトレキサートは免疫抑制剤の一つで、過度に投与すると感染症の危険性が高まる。肺炎の患者への投与は一般に避けるという。

 ■基本忘れた治療の結果
投与ミスは、あいまいなカルテを作ったり、投与方法の確認を怠るという両科の基本を忘れた治療の結果だった。
今回の治療薬は服薬のタイミングが独特だったが、免疫・膠原病内科の処方せんやカルテには「一週に1日」という服薬方法が記載されていなかった。
一方、医師1年目の研修医はカルテを見ただけで、担当医への問い合わせはもちろん、薬剤の服薬方法などの確認もせず、大量投与を指示していたという。
研修医が所属する消化器内科の千葉勉教授は▽緊急入院の際、外来で行っていた処方を伝達するシステムがない▽消化器内科の指導医がチェックできなかった-などもミスの原因に挙げる。まさに大病院の投薬管理のずさんな一面が明らかになった。
京大病院は来年1月から、投薬管理も1元化した電子カルテを導入する予定。田中紘一病院長は「電子カルテが導入されていたらミスは防げていただろう」とした上で、「カルテを徹底的に確認するという基本ができていなかった」と話した。
(京都新聞)


・・・・・この記事、なに言ってるかわかりにくい人も多いと思う。一応、この事故の背景を解説させていただきます。(つーか、誰だよ、こんな糞記事を書いた記者は、、、分かりづらいぞ、日本語自体が!!たぶん、取材内容を理解しないままに記事を書いたと見た、。。)

70代男性はリューマチ治療のため、京大病院の膠原病科外来に通院していた。そこで、リウマトレックスを出してもらっていた。そして、この男性は消化管出血のため京大病院の消化器科に緊急入院することになった。そのため、入院中は膠原病科ではなく消化器科が主科としてこの患者を診ることになり、膠原病科で出ていたリウマトレックスも消化器科からまとめて出すようになった。。。
でっ、研修医は、膠原病科から患者に出ていた薬を処方するため、膠原病科のカルテや処方箋を調べそれを元に薬の処方をした。しかし、膠原病科のカルテにはリウマトレックスの用法がきちんと記載されていなかったため、思いこみで誤ったリウマトレックスの用法を設定してしまったと。。

本来、リウマトレックスの正しい用法は、『初日から2日目にかけて12時間間隔で3回経口投与し、残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。』

わかりやすくするとこんな感じ。
Day1:朝、夕 (1日2回、1回1カプセル)
Day2:朝(1日1回、1回1カプセル)
Day3~Day7:休薬
上記を1Weekごとに繰り返すという変形処方。

しかし、この記事を読むかぎり、研修医は『リウマトレックスカプセル2mg 2cap×7 1日2回朝夕』という処方出したみたいだね。。。。でっ、5日後に発覚したと。。。いったい何が問題だったのか、何が原因なのか。次のプログで検証していきたいと思います。
(次回に続く)

風邪と風邪薬②

2004年11月29日 | よき医療とは…
病院の風邪薬と薬局の風邪薬は、どっちを選んだ方がいいのだろうか?答えは、薬局の売薬でも病院の処方薬でも好きなの飲んでください。たいして効き目は変わらないからw。

こういうこと言うと、次の反論があるかもしれない。薬局で売ってる風邪薬を飲んだけど、風邪をこじらせた。そこで、病院でお薬をもらったら、あ~ら不思議、風邪がすぐ治っちゃった。やっぱり、薬局で売ってる薬は効かない。薬は病院でもらう薬の方がいいわ。こういう経験した人は多いと思う。

実は、『風邪をこじらせ後に、病院に行った』というとこがポイントだったりする。風邪で病院にかかる患者さんは、たいてい症状をこじらせた時期に来る。逆に言えば、あとは何もしなくてももう治るだけ。そのため、病院の薬で治ったように見え、病院の薬のほうが効き目があると思ってしまう。実際に、病院と薬局のかぜ薬の成分を比較してみると、病院の薬は、薬局の薬と同じ成分か、もしくは非常に近い同効薬が処方されている。(ただ同じ成分でも、病院のほうがお薬の量を多めに出せる。)

唯一の違いは、病院では抗生物質が処方して貰えることかな。でも、風邪みたいなウィルス性感染症に抗生剤は効果がない。なのに、なぜ風邪に抗生剤が処方されるかというと、肺炎などの細菌性感染症の予防のためである。ただ、この予防投与も効果がはっきりしない点や、耐性菌の増加を引き起こすため疑問が大きい。ハッキリいうと、医者でも風邪に抗生剤が必要と信じている人は多くない、実際のところは患者が欲しがるから出しているというのがホントのところ。(もちろん、感染リスクの高い人への抗生剤使用は否定しません、薬の使用はリスクとベネフィットを考えてがここの趣旨です)。

ついでに、『病院で、点滴打ってもらったから、すぐ治った。』という患者さんもいるかもしれない。だから、点滴を希望する患者さんはけっこう多い。でも、点滴の中に風邪薬は入ってない。中身は電解質とビタミン剤なので、ポカリスエットとビタミン剤で安く代用がききますよ。。

結論
①薬局の売薬でも病院の処方薬でも大して違いがない。
②風邪における抗生剤の使用は、疑問が大きい。
③口からの水分補給が可能なら、点滴はお金と時間のムダ。

次回は、市販の風邪薬の選び方について説明します。なお、参考までに・・・

【私が勤めていた病院の風邪薬】
●粉薬(鼻・咳)
フロモックス、またはメイアクト:抗生剤
ペリアクチン:鼻水・咳止め
ムコダインドライシロップ:痰切り

●粉薬(解熱)
ナパ(アセトアミノフェン)

●黒く甘苦い液剤(ブロコデ)
ブロチン(桜皮エキス):咳止め・痰切り
リン酸ジヒドロコデイン:咳止め
ペリアクチン:鼻水・咳止め
ムコダイン:痰切り薬
キョウニン水:咳止め・痰切り
シロップ

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【市販の風邪薬】
●パブロンSの主な成分
塩酸ブロムヘキシン:痰切り
リン酸ジヒドロコデイン:咳止め
塩酸メチルエフェドリン:咳止め
マレイン酸カルビノキサミン:鼻水・咳止め
アセトアミノフェン:解熱
                      ほか

●ブロコデ咳止め液の主な成分
桜皮抽出物
リン酸
ジヒドロコデイン:咳止め
塩酸メチルエフェドリン:咳止め
グアヤコールスルホン酸カリウム:痰切り
マレイン酸クロルフェニラミン:鼻水・咳止め
                      ほか

風邪と風邪薬

2004年11月28日 | よき医療とは…
この時期は知りあいから結構、風邪薬について質問をうける。つーわけで、風邪薬の功罪について考えてみた。風邪薬とは、風邪のウィルスをやっつけるための薬ではなく、発熱・鼻水・鼻づまり・咳、これらの諸症状を緩和する目的で用いられる。ただ、発熱・鼻水・鼻づまり・咳を抑えることが本当に正しいのかという疑問があることも事実。けっこう勘違いされている人が多いが、風邪の諸症状はウィルスが身体に引き起こす憎むべき症状ではなく、身体がウィルスから身を守るために行っている治癒活動の一種である。

①なぜ発熱するか?
冬に風邪が流行ることからわかるようにウィルスは、お熱いのが苦手。だからウィルスに感染した身体は、体温を上昇させ、ウィルスの活動を低下させようとする。

②鼻水、、鼻づまり、咳はなぜ起こる?
鼻水や咳はウィルスという異物を排せつするために起こる。鼻づまりはウィルスを体内に入りづらくするため起こっていると考えられる。

つまり、風邪の症状を薬で抑えてしまうと、自然治癒が遅れてしまうという可能性がある。風邪はやはり、栄養を十分に摂り、体力が消耗しないよう安静にするのが一番である。ただ、だからといって風邪薬が意味がないわけでない。過剰な発熱は体力低下や脱水症状を引き起こすし、激しい咳も著しく体力を消耗させる。ご老人や幼児、著しく体力が低下している人にとって、これらの体力消耗の影響は無視できない。健康状態と相談しながら、薬が必要な時に飲むようにしましょう。風邪を引いたとき、薬を飲んだだけで安心して静養をおろそかにするのはよくない。
まぁ、一番の問題は、現代社会では、風邪を理由に休養にする時間が貰えないということなんだろうな。。。

次回は、病院の風邪薬と薬局の風邪薬の相違点について説明します。

ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響③

2004年11月27日 | よき医療とは…
VIOXXは薬理学的にコキシブ系選択性COX-2阻害薬に分類されます。では、VIOXXの心血管系の副作用は他のコキシブ系選択性COX-2阻害薬も持っている可能性があるのでしょうか?類薬の臨床試験では重大な心血管系の副作用は報告されておらず。現時点は、VIOXXの心血管系の副作用は、VIOXX固有の副作用で、コキシブ系選択性COX-2阻害薬ではないと判断されているみたいです。しかし、コキシブ系選択性COX-2阻害薬全般に心血管系の副作用をもっているのではないかという考えもあり、FDA(米国食品医薬品局)やEMEA(欧州医薬品審査庁)が、他のコキシブ系選択性COX-2阻害薬の追跡調査が行うことを決定しました。調査結果は早ければ来春には報告されるとのことですので、調査結果の公表が待たれます。結果が報告され次第、ここに紹介させて頂きます。

ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響②

2004年11月27日 | よき医療とは…
VIOXXの発売中止が、アメリカFDA(日本でいう厚生省医薬食品局)からの命令ではなく、販売メーカの自主判断であることはすでに述べました。では、なぜそれが注目すべきことなのでしょうか?

VIOXXは、その販売メーカーの全売り上げの10%を占める戦略薬剤であり、日本での販売も予定されていました。今後の売り上げの急成長も見込まれており、メーカーにとってこの薬剤の販売中止は、経営戦略の変更を強いられるし、株価下落、株主訴訟、医療訴訟などに対処していかないといけません。正直、販売継続をごり押しすることも可能だったでしょう。それでも、最終的には疑わしきもの罰するという形で製造中止を決定した。もちろん、この会社の高い倫理姿勢は評価されるべきでしょう。しかし、理由はそれだけでないでしょう。そこには、患者へのさらなる被害拡大によって、将来的に発生するより大きな損失を回避するためでもあるのでしょう。

日本でも、抗インフルエンザT剤を発売しているT社が、今年のはじめ、攻めの安全性情報の提供を行っています。海外で報告された因果関係不明の副作用情報を日本の医療機関に迅速に提供しました。この、安全性活動も、厚生省医薬食品局から指導が出る前に、自主的に行っています。副作用の被害拡大は、メーカーにとっても損失が大きい。従ってそのリスクを回避するために、安全性情報を積極的に公表していくという方向に変わりつつあります。

おそらく、今後、製薬メーカーが持つべき薬剤の安全性に対する倫理基準はVIOXXのケースが参考にされていくでしょう。それはメーカーにとっても、医療機関にとっても、そして患者さんにとっても非常に好ましいことだと思います。
(次ログにつづく)

ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響①

2004年11月26日 | よき医療とは…

2004年の10月始めにVIOXX(ヴァイオックス)というお薬が全世界での製造中止が発表されました。しかも、販売メーカーが自ら製造中止を決めたため、大きな話題となりました。というのも、VIOXXというお薬は日本では発売されてないものの、2003年には全世界80カ国で発売されており、総額25億$(日本円で2750億円)も売り上げたブロックバスターであり、世界で最も売れているお薬の一つだったからです。このVIOXXというお薬は関節リューマチなどの抗炎症、疼痛緩和を目的に処方され、スーパーアスピリンとして海外では広く認知されてるお薬です。

では、アスピリンと比べて何がスーパーなのでしょうか?アスピリンはご存じの方も多いと思われますが、バファリンの薬効成分で抗炎症作用、疼痛緩和、下熱作用を有しています。ただ、長期に服用すると副作用として上部消化管胃腸障害(胃の痛みから潰瘍、消化管出血)を引き起こす場合があります。リューマチは慢性疾患であるため、アスピリンを長期に服用する場合が多く、胃腸障害の副作用が無視できません。そこで、痛みや炎症を抑え、なおかつ胃腸障害の副作用がほとんどないお薬が求められました。

そこで、登場したのがVIOXXなどを含むスーパーアスピリンといわれるお薬のグループです。有効性が高く、消化器系の副作用がほとんどないVIOXXは、瞬く間に市場を席巻していきました。しかし、今年に入り、心筋梗塞などの重篤な心臓発作のリスクを高める可能性があるというデータが公表されました。
VIOXXは痛み止め作用の他にも抗癌作用を有している可能性があり、結腸直腸腺腫の再発防止効果をみるために行われたプロスペクティブ・スタディー「APPROVe」で投与日数が18ヵ月を超えてVIOXX25mgを投与した場合、心血管イベント(心臓発作など)発症リスクが有意に高くなることがわかったのです。以前に行われたプロスペクティブ・スタディー「VIGOR」の追加試験の所見でも、CVリスクの増加が報告されていました。このため、販売メーカーはVIOXXが継続販売した場合における患者の利益と損失を十分に検討し、その結果、自発的撤廃を決定しました。

では、何が興味深いのでしょうか?
まず最初に、今後の製薬メーカの社会的責任からの観点。メーカーがドル箱の薬を、お役所の決定を待たず、自らの判断で製造中止を決めたということ。

つぎに、薬理学的興味。VIOXXは発売中止になったが、VIOXX以外のスーパーアスピリンと呼ばれる類薬は大丈夫なのだろうかということです。
(次ログに続く)

なお、VIOXXは日本では未発売ですし、また、日本で行われていたVIOXXの臨床試験も速やかに中止になっています。それに、1年半未満の服用では心臓への副作用は現れないので臨床試験に参加された患者さんの場合でも、ほとんど影響はありません。それに、その可能性がある患者さんに対しては治験担当医から迅速な処置をされています。ですから、日本でVIOXXの影響がある患者さんは皆無です。ご安心ください。

薬剤部の責任も問え!!!

2004年11月23日 | よき医療とは…
抗がん剤過剰投与で医業停止処分、取り消し求め提訴

埼玉医大総合医療センターで2000年10月に起きた抗がん剤過剰投与事件で、厚生労働省から今年3月に医業停止の行政処分を受けた当時の主治医(34)が、「処分に納得できない」として東京地裁に処分取り消しを求める行政訴訟を起こしていたことが22日、分かった。

この事件は、埼玉県鴻巣市の高校2年の女性(当時16歳)に対し、本来は週1回の間隔で投与すべき抗がん剤を7日間連続で投与して死亡させたとして、主治医について業務上過失致死罪で有罪(禁固2年、執行猶予3年)が確定。厚労省は、医療過誤の行政処分としては過去30年間で最も重い医業停止3年6か月の処分を決めた。

主治医側は「過誤の事実は認めて反省しているが、『副作用判明後に適切な処置を怠った』などの処分決定理由には納得できない。他の医療過誤事件と比べても3年半は重すぎる」などとして、今年5月に厚労相を相手取り提訴した。
(読売新聞)


この手の報道聞くと、いつも思うんだけどさ。薬剤師アンタらなにしての???本来薬を管理すべき薬剤部が責任問われておかしくないはず。なのに薬剤部の責任はスルー。こういう場合、薬剤師の責任も問わないと、薬剤師のぬるま湯体制は直らんし、この手のくだらない事故は減らないよ。
抗がん剤は劇薬に分類されてるはず、病棟管理なんてありえない。薬剤の払い出しは薬剤部がしてるはず。誰が払い出しの管理してたんだ?誰が処方監査してたんだ???抗がん薬のレジメンはたしかに複雑だけど・・・・大学病院だから実験的処方があるのかもしれん。それでもこういう事故がおこること自体が薬剤部の怠慢だよ。医師と看護婦の名前しか出てこないなんて、薬剤師の存在価値ないじゃないか!!国民もマスコミも薬剤師に何も期待はしていない。責任もなく名誉もない存在価値すら疑問持たれている医療現場の鬼っ子薬剤師。オレも昔は薬剤師として病棟活動してた。いかに臨床現場で居場所がないか、よく知ってる。それでもアンタら薬剤師が前に出て、きちんと薬を管理しないとダメなんだよ。医師とケンカしてでも患者守ってあげなよ。。。。

通性菌嫌気性菌混合感染症かぁ、地味に増えてるのね。。。

2004年11月22日 | よき医療とは…
【通性菌と嫌気性菌の混合感染症が増加-臨床上の問題点と対策を問う-
高齢者,癌患者,重症糖尿病患者など,免疫不全状態にあるコンプロマイズドホスト(易感染宿主)が増加する一方,近年,抗菌薬の使用法がドラスティックに変化したことを背景に,通性菌と嫌気性菌による感染症(通性菌嫌気性菌混合感染症)の報告が相次いでいる。通性菌嫌気性菌混合感染症に対し,嫌気性菌を軽視した治療では重症化を招いて,時に致死的となる一方,嫌気性菌を重視しすぎた治療では常在細菌叢の破綻による腸炎などを引き起こす。適切に治療を進めるためにはきめ細かい細菌学的観察が求められるが,嫌気性菌検査を行う施設はきわめて少ないのが現状だ。
(Medical Tribune 2004年11月11日号 / Vol.37 NO.46 / P.53より)



岐阜大学の渡邉邦友先生によると、通性菌嫌気性菌混合感染症増加の理由は「病原性の高い通性菌のみをターゲットとした抗菌薬の使用」、つまりnarrow spectrum抗菌剤の繁用が原因と言うことらしい。おいおい、broad spectrum抗菌剤乱用のせいで耐性菌が増えまくったという反省から、narrow spectrum抗菌剤が推奨されるようになったんだけど・・・・・、臨床って難しいのね、ホンマに。

まず、この背景を正しく理解するためには、抗菌薬(おもにセフェム系)の歴史について理解しないといけない。抗菌薬が発見される前は、多くの人間が感染症により死亡していた。歴史上の偉大な人物も肺炎、結核、ペスト、など様々な感染症で死んでいったのは有名である。。このようななか、19世紀に英の科学者フレミングが最初の抗菌薬ペニシリンを発見した。発明ではなく発見と書いたのはあくまでこの物質はが青カビという存在している身近な物質だったからである。ペニシリンの発見以後、さまざまな抗菌薬が発見、合成されていった。
というのもペニシリンなどの第1世代セファムは皮膚などに常在するバイ菌、グラム陽性球菌にはよく効くが、腸内に存在する大腸菌以外のグラム陰性桿菌には効きにくい。そのためグラム陰性に抗菌活性をもつセフォチアムなどの第2世代セファムが開発された。さらに第2代よりもグラム陰性桿菌の抗菌活性を高めたセフジニルなどの第3世代セファムが開発された。。
この結果、大体の感染症をカバーできる第3世代セファムが事実上のスタンダートとなった。ここで問題が起こった。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の誕生である。これは第3世代セファムの繁用と関係している。なぜなら第3世代セファムはその強力な抗グラム陰性桿菌活性と引き替えにブドウ球などのグラム陽性球菌の効き目を犠牲にしていたからである。

グラム陽性球菌活性:第1世代セファム>第2世代セファム>>>第3世代セファム
グラム陰球桿菌活性:第3世代セファム>>第2世代セファム>>>第1世代セファム

イメージはこんな感じかも。。
そのため、最近はこのようなbroad spectrum抗菌剤の繁用が耐性菌を増加させる原因と認識され、narrow spectrum抗菌薬をピンポイントで用いるように変わってきた。
でも、単純にnarrow spectrum抗菌剤を用いれば万事OKと言い切れないところが難しい。例えば、腸内細菌が原因の敗血症の患者さんがいるとする。ここで原因菌を特定してnarrow spectrumの薬剤を用いて原因菌をやっつけた場合どうなるか考えてみよう。
腸内細菌は善玉・悪玉含めてたくさんの細菌がお互いに牽制しあいながら共存してる。ここでnarrow spectrumで原因細菌Aだけをやっつけたとする。すると今まで、細菌Aにジャマされて繁殖できなかった細菌Bが急激に勢力を拡大し、細菌Bが新しく人体に悪さをする場合がある。コレは菌交代症といわれ、コンプロマイズドホストでは注意せなあかん現象。通常、健康な人の正常細菌叢では嫌気性菌が好気性菌より10倍~1000倍ぐらい多く存在している。最近では耐性菌を増やさないようnarrow spectrumの使用が増えており、グラム陽性球菌や陰性桿菌の通性菌以外のグループである嫌気性菌による菌交代症が増えているらしい。。。
問題は嫌気性菌がマイナーであり、きちんとした治療を行える専門家が少ないということ。オレも感染症領域は個人的に興味があってそこそこ勉強しているが、嫌気性菌についてはようわからんw。嫌気性菌なんて緑膿菌ぐらししかイメージわかん。緑膿菌の治療ならわかるけど、それ以外の嫌気性菌の治療方針なんて???。嫌気性菌の全てをカバーできるというbroad spectrumな抗菌剤があればいいのだろうけど・・。だからこそ、嫌気性菌の感染症増加は問題が大きいのだろうな。まぁ結論は抗菌薬は適切に使いましょうと言うことなんだろうけどさ、それが難しい。でも、だからこそ面白い領域ではある。。。。

参考文献
オレの脳内
柏崎禎夫監修:臨床医のための抗生物質Q&A
日本感染症学会,日本化学療法学会編集:抗菌薬使用の手引き
岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設ホームページ
日本臨床微生物学会感染症データベース