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ぱんつの穴(のぞけ、ピーピングトム)

メディカル・ライター紀伊國屋のプログです。主観と偏見で、メディカルトピックスを中心に紹介していきます。

注射用抗生剤の事前皮膚反応テストは根拠無し。。。

2004年11月06日 | よき医療とは…
【医薬品・医療用具安全性情報】
注射用抗生物質によるショック、皮内反応では予知できず、問診や救急処置などの備えの方がより重要に


10月末に発表された医薬品・医療用具等安全性情報(206号)は、医療現場に大きな影響を与える情報が盛り込まれていた。その一つが、注射用抗生物質によるショック・アナフィラキシー様症状に対する安全対策の見直しだ。従来は「事前に皮膚反応を実施することが望ましい」とされてきたが、薬事・食品衛生審議会専門委員が「実施する意義が乏しい」と結論、「十分な問診、救急処置の備え、投与の際の十分な観察」などの対策がより重要とされた。
(MedWaveより一部引用)


 まぁ言われてみればそうだよな。ショックなんて、どんな薬剤にもあるのになんで、注射用抗生物だけに皮内反応キットが用意されてたんだ???たしかに、ショック・アナフィラキシーは注射用抗生剤の教科書的副作用だけどね。。
 結局は、全身管理をきちんと行うのがベストということか。。。あたりまえっちゃあ、あたりまえなんだけどさ。なんだかねぇ・・・

すげえぜ、プロテインキナーゼ!!

2004年11月06日 | よき医療とは…
【まずはじめに】
西塚泰美先生のご冥福をお祈り申し上げると共に、先生が残されたご功績に敬意を表します。


元神戸大学長西塚氏が死去。ノーベル賞の有力候補
今年の猛暑元神戸大学長の西塚泰美(やすとみ)氏(72)=芦屋市平田町=が4日午前1時28分、くも膜下出血のため、神戸市内の病院で死去した。芦屋市出身。自宅は芦屋市平田町3の6。通夜と葬儀・告別式は近親者のみで6、7日に執り行われる。後日、しのぶ会を大学関係者で行う予定。
 半世紀近く生化学の研究一筋に歩み、基礎医学の発展に貢献。細胞間の情報伝達に関係する「タンパク質リン酸化酵素C」を発見するなどし、1989年に米医学界で最も権威のあるラスカー賞を受賞。ほかにも95年にウォルフ賞(イスラエル国家賞・医学)、日本人初のシエーリング賞(ドイツ医学生理学賞)など、国内外の賞を多数受賞し、ノーベル賞の有力候補とされていた。
(神戸新聞より引用)
                            

 細胞内のシグナル伝達は主にタンパク質を介して行われている。タンパク質の活性化部位にリン酸がくっつけたり、取り除かれたりすることで、そのタンパクの活性化、非活性化が制御されている。西塚泰美先生が発見されたのは、このようにタンパクにリン酸を修飾する酵素であるプロテインキナーゼC(PKC)。
 ちなみに、オレは大学院で、細胞分裂・増殖機構である細胞周期のG2/Mチェックポイント制御機構の研究をしていた。まぁ、わかりやすくいうと一種の癌抑制機構といってもいいかもしれん。その制御機構にはサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が大きな役割を果たしており、これもプロテインキナーゼの一種である。そして、CDKの活性化を制御しているのも、別の種類のプロテインキナーゼであり、まさに、リン酸化というのは細胞でのシグナル伝達においてスイッチの役割を果たしている。
 プロテインキナーゼCの発見は生化学、分子生物学にとって歴史的な偉業である。先生がノーベル賞をとれないまま、他界されたのは、残念だ。。。

言い訳という名の注釈:
研究の世界から離れて、もう10年以上経ちます。もはや記憶の彼方の話なので専門的に間違った記述があっても、突っ込まないでねw


花粉症は国民病です。対策はお早めに。。。

2004年11月05日 | よき医療とは…
来春の花粉、例年の2倍 猛暑が影響、95年に次ぐ
来春のスギとヒノキの花粉飛散量は、今年の猛暑の影響で全国的に非常に多く、都市によっては過去10年間の平均の2倍を超えるとする予測を、全国の研究者らでつくるNPO法人『花粉情報協会(理事長・佐橋紀男東邦大教授)』が、5日までにまとめた。1965年の観測開始以降最多だった95年に次ぐ規模で、飛散量が少なかった今春の10-15倍になる都市が多い。成人の5-10人に1人とされる花粉症患者にとって受難の春となりそうだ。
同協会の村山貢司理事(気象業務支援センター専任主任技師)らは86年から、花芽が成長する夏の気温や日照量、芽の観察などを基に飛散量を予測し、ほぼ的中させている。来年の予測によると、1月の気温が高めと予想されることから、飛散の開始時期は早め。花粉量は多く爆発的に飛散する。
(共同通信より引用)



佐橋先生や村山先生は、スギ花粉飛散情報の取材をいつも快く引き受けてくださる本当にいい先生です。日本のスギ花粉飛散予測は両先生や花粉情報協会の地道な活動のおかげです。恩恵を受けておられる花粉症の皆様は、花粉情報協会の活動に、ぜひご協力をお願いします。

最近報告された糖尿病と心血管イベントの関連

2004年11月04日 | よき医療とは…
【STOP-NIDDM】Study to Prevent-NIDDM
特徴:
食後高血糖が心血管疾患の危険因子であることを前向き介入試験によって検証した初めての試験

対象:
耐糖能異常(IGT)がある肥満中高年者1429人

方法:
アガルボース群(714例)とプラセボ群(715例)に無作為割り付けされ、平均3.3年間、二重盲検法で追跡した。

結果:
アガルボース群ではプラセボ群に比べ、糖尿病への進展が絶対値で10%、相対リスクで25%(p=0.0015)減少した。
出典:Lancet. 2002 Jun 15;359(9323):2072-7.
オンラインジャーナルリンク先

(サブ解析)
心血管疾患:
アガルボース群ではプラセボ群に比べ、心血管系イベント発症率は絶対値で2.5%、補正後の相対リスクは53%(p=0.02)%減少した。

高血圧:
アガルボース群ではプラセボ群に比べ、高血圧発症率は絶対値で5.3%、補正後の相対リスクは38%(p=0.004)減少した。
出典:JAMA. 2003 Jul 23;290(4):486-94
オンラインジャーナルリンク先

【MeRIA】Metaanalysis of Risk Improvement under Acarbose
対象:2型糖尿病患者2180人

方法:
大規模メタアナリシス、無作為割り付け二重盲検法

結果:アガルボース群ではプラセボ群に比べ、心血管イベントの発症の相対リスクが35%、心筋梗塞発症の相対リスクが64%減少した。
出典:Hanefeld M. et al., European Heart Journal 2004; 25: 10-16



MeRIAはドイツ語の紹介記事(※注3)ぐらいしか見つからなかったため、どこまで正確か不明。もし、記載内容が間違ってたら教えてください。
注3:URL リンク先①リンク先②

糖尿病と心臓病と脳卒中

2004年11月03日 | よき医療とは…
ここ数年、糖尿病の合併症としての心臓病、脳卒中が注目されている。もともと糖尿病の副作用は失明や腎機能障害や神経障害が問題とされてきた。現在、後天的な失明の原因の第一位は糖尿病だし、あと数年で透析導入の原因として糖尿病が第一位となると予測されている。糖尿病という病気は徐々に日常生活を蝕む本当に厄介な病気だ。

さらに、糖尿病・高血圧・高脂血症・内臓肥満などが重なると、心臓病の突然死のリスクがさらに高くなることが分かっている。これらを併発した状態をメタボリックシンドロームと呼び、今は、積極的な治療が必要とされるようになってきてる。つまり糖尿病は心臓病の突然死を引き起こす危険な状態とみなされるようになってきてる。

実際、糖尿病の治療をすると、心臓病の突然死が抑えられるというメタアナリシスが欧米からどんどん報告されてるんだよね。これは欧米では心臓病で亡くなる人が多く、積極的に研究が進められてきたという背景がある。

でもね。欧米と違い、日本は心臓病よりも脳卒中で死ぬ人が多い。だから、日本の場合は糖尿病患者を対象に、脳卒中の発作をエンドポイントとした大規模試験がもっと必要なんじゃないかな。海外の研究報告に頼らなければいけない日本の医療の難しさがココにあるね。もちろん、日本発の優れた大規模試験もあるんだけどね。。。

医療記事に必要なのは客観的事実だ・・・・

2004年11月01日 | よき医療とは…
<大阪>「父はイレッサに命を絶たれた」
肺がんの治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した男性の遺族が、国と製薬会社に対して損害賠償を求めている裁判の初弁論が開かれ、男性の二男が、「父はイレッサに命を絶たれた」と意見陳述しました。
 この裁判は、京都の病院で亡くなった男性の遺族が起こしているものです。男性は、おととし、手術ができない重い肺がん患者の治療薬として輸入承認されたばかりの「イレッサを服用しましたが、1ヵ月後に肺炎を発症して亡くなりました。このため遺族は、「イレッサの副作用で死亡したことは明らかだ」とした上で、「販売元は副作用について警告しなかった。国は十分な調査なしに輸入承認した」として、慰謝料など3300万円を求めています。
 初弁論では二男が意見陳述し、「イレッサは重い副作用があるとされず、当時かぜ薬のように手軽に服用された。まぎれもなく父はイレッサに命を絶たれた」と述べました。
(朝日放送)



ホントに腹が立つ。
イレッサに間質性肺炎の副作用はある、これは間違いない事実。もし、この患者がイレッサを適正使用されていなかったら、それは医療機関の問題。それをイレッサの副作用自体が問題であるかのように扱うマスコミの無知と無責任さにはあきれかえる。
 ここの
サイトに非小細胞肺ガン(NSCLC)に使用される主なケモのレジメンの奏効率、一年生存率、そして、MST(生存期間中央値)の値が載ってるけど、NSCLCに対して効果的な薬剤がほとんどないことが分かる。。だから、リスクとベネフィットのバランスからも切除不能例、再発例、または全身メタの患者にとってイレッサが重要な薬の一つであることは動かせない事実。例え、間質性肺炎の副作用があろうともね。 
 医療機関が十分に間質性肺炎の対策をおこないそれでも発生し死亡された場合、それを過失といえるのか???なんどもいうが、問題は、副作用発生の有無ではない。患者や家族に対しインフォームドコンセントが行われていたか、そして、間質性肺炎の対策がきちんと行われていたかどうかだ。。。争点をぼかすな!!必要以上に薬への希望や恐怖感を煽るな。イレッサは魔法の薬でも悪魔の薬でもない。ただの抗ガン剤だ。

 マスコミは臨床を知ってる人間に記事をかかせろ!!!


リスクとベネフィット

2004年10月11日 | よき医療とは…
【サリドマイド】薬害対策ないまま個人輸入が急増

 1950~60年代にかけて世界的に薬害を起こした鎮静・催眠剤「サリドマイド」が、癌などの治療目的で日本に個人輸入されている問題で、03年度の輸入量が53万錠に上っていたことが、厚生労働省の調べで分かった。実効性のある安全対策が講じられていない中、02年度より9万錠余り増加した。サリドマイド薬害の被害者団体は「国の取り組みが遅い」と不満をあらわにしている。
 サリドマイドは服用した妊婦から手足が極端に短い子が生まれるなどしたため、日本でも62年に販売が禁止された。だが、90年代後半から骨髄の癌骨髄腫などへの効果を認める研究が報告されるようになり個人輸入が増加している。
 被害者らで作る財団法人「いしずえ(サリドマイド福祉センター)」の間宮清事務局長は、「輸入量だけでなく、大きい錠剤の輸入が急増したことが気になる。坂口前厚労相の約束から2年たつが、いまだに実効性のある安全対策は取られているとは言えない。
国レベルの規制が必要が必要」と訴えている。
【須山勉】(毎日新聞)


 このサリドマイド薬害の被害者団体って何様なんだろうね?サリドマイドを根絶させたいのか?
最近では多発性骨髄腫に対する有効性データの報告があり、抗ガン剤として世界的な見直しがはかられている。しかも古い薬だから最近の抗ガン剤と違い安い!!
 にもかかわらず日本では『悪魔の薬』呼ばわりされてタブー扱い。本来、以前販売していたメーカーが適応承認申請すべきだが、薬価に加算がついたとしても、高薬価は期待できないうえに、この手の団体を相手するのはめんどくさいからやらないだろうね。
 でもさ、ほんと冷静に考えてみろよ。サリドマイドなんて催奇形性以外で大きな副作用はあまりないんだよね。逆に言えば、
『妊婦および妊娠している可能性のある女性を禁忌』に設定してしまえば、ほとんど問題は無いんじゃないのか。薬にはリスクとベネフィットがある。効果ある薬は、医療現場で使える環境を整えてやるべきで、悪魔狩りをするべきではない。