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ぱんつの穴(のぞけ、ピーピングトム)

メディカル・ライター紀伊國屋のプログです。主観と偏見で、メディカルトピックスを中心に紹介していきます。

お役所主義、ここに極まりし!!!働けよ、おまえら。

2005年01月07日 | よき医療とは…
「正月休み」検査5日放置 集団胃腸炎で大阪の保健所

大阪府和泉市の和泉保健所(勝本善衛所長)が昨年末、感染性胃腸炎とみられる患者の集団発生の連絡を受けながら、年末年始休暇などを理由に今月4日まで5日間も便の検査などをせず放置していたことが6日、分かった。
 府は同日、対応が不十分だったとして、勝本所長を口頭で注意した。
 府によると、同保健所は昨年12月30日、同府泉大津市の社会福祉施設から「高齢者や職員ら計12人が下痢や嘔吐(おうと)の症状を訴えている」と電話連絡を受けたが、消毒方法などを指導しただけで、府の担当課にも連絡しなかった。
 仕事始めの4日になって患者らの便を検査。ノロウイルス(小型球形ウイルス)による感染性胃腸炎と判明したが、6日までに発症者は67人に上った。
(共同通信より引用)

気持ちわかる。年末なんか、もう仕事したくないよね。。。それに、感染性胃腸炎だから緊急じゃないと予測したんだよね。。
でもさ、やっぱりなんか違うと思う。こういう感染症報告を無視してさ、正月に心休まるのか?オレだったら、気になって正月どころじゃないんだけど。。。

10倍量、個人的には微妙な医療過誤・・・・

2004年12月31日 | よき医療とは…
精神安定剤で8歳男児中毒…誤って10倍調剤

福島県郡山市大槻町のチェーン薬局「クオール薬局おおつき店」が、誤って処方せんの10倍の量の精神安定剤を同県鏡石町の男児(8)に調剤し、男児が中毒症状となって治療を受けていたことが28日、分かった。

福島県やクオール(東京都新宿区)によると、今年9月、医師の処方せんは粉薬「セレネース」28日間分3.36グラムだったが、調剤師が誤って33.6グラムを調合した。
セレネースは精神安定作用があるが、多量に摂取すると昏睡(こんすい)状態になるなどの危険がある。男児は服用の翌日から薬の影響でぐったりとなったが、病院で治療を受け、快方に向かっているという。

県は10月に同薬局を立ち入り調査し、チェック態勢を強化するよう行政指導した。
(zakzakより引用)

この手の調剤過誤のニュースを聞くとついその原因を追及したくなるのは元薬剤師の悪い癖だ。でも他人事とは思えない、だから原因が知りたいんだよ。
まず、この記事はいけない!!調剤ミスの原因を誘発する記載である。『医師の処方せんは粉薬「セレネース」28日間分3.36グラムだった』、これだと1%セレネース散が28日間分3.36グラムなのか、セレネース成分量が28日間分3.36グラムかハッキリしない。もちろん、ミリグラムでなくグラム記載ということから1%セレネース散が28日間分と推測できる。しかし、調剤過誤を防ぐためには曖昧な表記は慎み、きちんと「1%セレネース散」と規格と商品名を共にを記載することが大切である。こんな調剤過誤を誘発するような曖昧な表記を書く記者に医療過誤の記事を書く資格はない!!!!明らかに勉強不足だ。

でっ、1%セレネース散が28日間分3.36グラムということは、1日の力価が1.2ミリグラム。セレネースの錠剤の最小の規格が0.75ミリグラムか・・・・。十倍量だと12ミリグラム。うー、オレの経験からいうと、もし医師が10倍量指示した場合、悩むな。プシ科の処方はムチャ処方も多いから10倍量なら微妙。。ただDo処方以外は疑義の対象だろうな。。ただ、今回は医師の指示ミスではなく、薬剤師側の計算ミスか思いこみ調剤が原因だな。まぁ、きちんと監査すれば拾えるミスだし拾わないといかん。オレ自身、監査でどれくらい救われたことか。。。きちんと監査できる体制を整備していない薬局管理の問題だな、こういう環境で仕事せざる得ない人間に同情する。。すくなくとも薬剤師は常時二人体制で相互チェック体制で監査できる体制の薬局でないとオレは怖くて働けないよ。






踊るNSAIDs/ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響⑦

2004年12月28日 | よき医療とは…
心血管イベントのリスク増加を示唆する予備試験の結果に基づき「Alzheimer's disease prevention trial」を中止
【12月21日】非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のナプロキセンが心血管イベントの増加に関連している可能性がある。

ナプロキセン投与患者では心血管イベントの発生率が50%増加するということが判明し、米国立衛生研究所(NIH)はナプロキセンを使用した大規模な「Alzheimer's disease prevention trial」を中止した(12月20日)。同日、米食品医薬品局(FDA)はナプロキセンを含有する大衆薬を使用している患者に医師との相談なしに10日を超えて使用しないよう勧告する声明を発表した。

この中止された試験は、ナプロキセンまたはcelecoxibの常用がアルツハイマー病の予防に有用であるか否かを確認するために米国立加齢研究所(NIA)の助成を受けて行われた。3年間の試験に組み入れられた約2,500例をナプロキセン群、celecoxib群、プラセボ群に無作為に割り付けたものである。

試験中、70件の心血管イベントが発生した。研究者らはナプロキセン投与患者における発生件数を述べることを避けたが、プラセボ群と比較してナプロキセン群では心血管イベントのリスクが50%増加したと述べた。

この措置はcelecoxib(商品名Celebrex、Pfizer社製造)に対する懸念が生じてからわずか1週間後に講じられた。Pfizer社は消費者向け医薬品広告を自主的に中止し、FDAの勧告に従って製剤に関する医師向け販売促進用資料の内容を変更した。

また、9月にはMerck社が心血管および脳卒中のリスクに関する懸念のため処方薬rofecoxib(商品名Vioxx、Merck社製造)の販売を中止した。

ナプロキセン(Aleve[Bayer社製造]、Naprosyn[Roche社製造]などの商品名でジェネリック医薬品として販売)は一般に最も安全な抗炎症・鎮痛薬のひとつとみなされ、多くの医師がrofecoxibを使用していた患者に勧めている。

2000年、rofecoxibによる心血管リスクの徴候が初めて確認されたとき、Merck社はナプロキセンの心血管保護効果が結果をゆがめた可能性があると示唆した。

21 日朝のNBC「Today Show」のインタビューで、FDA長官代行のLester Crawford氏はナプロキセンとcelecoxibに関する新情報がわれわれを混乱させていると認めた。どんな薬剤でも長期間あるいは高用量使用すれば障害が生じる、と同氏は述べた。

「CelebrexおよびAleveに対する措置を決定するのは時期尚早であろう」と、同氏は語っている。

12月20日午後に開催された記者会見で、NIA、NIH、FDAの職員は試験の中止および将来のNSAID使用について討議した。

試験の安全性データによれば、ナプロキセン投与患者では心血管イベントのリスク増加を示すいわゆる「弱い徴候」が認められた、と治験総括医師のJohn Breitner, MD, MPHは述べた。しかし、celecoxib投与患者ではリスク増加は示唆されなかった。同博士はワシントン大学(シアトル)の精神医学・行動科学教授であり、退役軍人医療センター(シアトル)に所属している。

12月10日、治験審査委員会は会合を開催し、治験を継続して行うとの決定を下したが、1週間後、celecoxibを用いた「cancer prevention trial」が中止されたため決定を変更した、とBreitner博士は述べた。

「マスコミで騒がれたため、患者を説得してCelebrexを継続させることは困難であった」と、Breitner博士は述べた。ナプロキセン群の心血管リスクはcelecoxib群のリスクよりも高かったので、celecoxibを中止し、ナプロキセンを継続することは論理的ではなかった、と同博士は付け加えた。

ナプロキセンは30年近く販売されているにもかかわらず、ナプロキセンと心血管リスクの増加を関連づけた試験はこの中止された試験が初めてである、とFDAのSandra Kweder博士は述べた。

「これまで多数の臨床試験が行われてきたにもかかわらず、これが心血管リスクを示唆する最初のエビデンスである」と、同博士は述べた。「このことが混乱を招くことは否定できない。すべての医師と患者が薬剤を選択する際に考慮すべき特有のリスク因子について話し合う必要がある」。

現在、ナプロキセンに世間の関心が集まっているが、心血管リスクに関して他の一般用NSAIDがより安全であるというエビデンスはないと、Breitner博士は警告した。
(m3.com配信 Medscape Medical Newsより)

ナプロキセンの続報です。すごいな、VIOXXショックがいろんなところに飛び火しまくっているようす。予想以上に大騒ぎとなってきています。VIOXXシリーズもすでにpart⑦・・・・。こんな長期シリーズになるとは思わなかった。微妙に製薬メーカーどおしの足の引っ張り合いというか・・・、ノーガードの殴り合いの様相を呈してきたように感じるのは私だけでしょうか??

医療問題を考えるためのお薦め小説

2004年12月27日 | よき医療とは…
破裂
著者: 久坂部羊
出版社:幻冬舎
ISBN:4344006984


医者の診断ミスで妻を傷つけられた元新聞記者の松野は、“医療過誤”をテーマにしたノンフィクション執筆を思いつく。大学病院の医局に勤務する若き麻酔科医・江崎の協力を得て、医師たちの過去の失敗“痛恨の症例”や被害患者の取材を開始した。その過程で、「父は手術の失敗で死んだのではないか」と疑念を抱く美貌の人妻・枝利子が、医学部のエリート助教授・香村を相手に裁判を起こす。が、病院内外の圧力により裁判は難航。その裏で医療を国で統制しようと目論む“厚生労働省のマキャベリ”佐久間が香村に接触を始める…。枝利子の裁判の行方は?権力に翻弄される江崎と松野の運命は?そして佐久間の企図する「プロジェクト天寿」とは?大学病院の実態を克明に描き、来る日本老人社会の究極の解決法まで提示する、医療ミステリーの傑作。
(楽天ブックスより転載)


物語の当初のテーマは医療過誤と思っていた。医師である筆者が本当に伝えたかったのは老人医療の現実なのだろう。医療の進歩はヒトの寿命を延ばし、我々にバラ色の未来を与えるはずだった。そして、そして、その恩恵を一番受けているのは老人だと信じこまされていた。しかし、多くの老人が孤独と老いによる哀しみで悩み傷つき、生きる目的を喪失している。もはや現代日本に老人の居場所はなくなり、幸せに歳を取ることの出来る人間は一部の恵まれた老人だけとなってしまった。しかし、この事実は我々国民になかなか知らされない。医学の進歩は、老人に死という安息の地を与えることを決して許さない。我々に必要なのは、幸せに死ぬための手段なのかもしれない。。

ISELスタディ 微妙です・・・・・

2004年12月26日 | よき医療とは…
<イレッサ>「延命効果なし」米FDAが回収も検討

日本や欧米で肺がん治療薬として承認されている「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)について、FDA(米食品医薬品局)が「延命効果はない」として市場からの回収も視野に入れた規制を行う方針を明らかにした。副作用で死亡したとみられる国内患者の遺族らで作る被害者の会は24日、厚労省に販売中止を申し入れた。
(毎日新聞より引用)

【ISELスタディ709の概要】
目的:イレッサ250 mgの延命効果の調査(1129例:イレッサ、563例:プラセボ)
対象:1回以上の化学療法が奏効しなかったNSCLC(進行非小細胞肺癌)患者1692例(:イレッサ投与群:1129例、プラセボ(偽薬)群:563例)
方法:イレッサ250 mg 、プラセボそれぞれ1日1回投与
結果:
●MST:生存期間中央値
全症例を対象とした解析ではイレッサ投与群のMSTは5.6 か月、プラセボ群は5.1か月であり(HR:相対死亡率 0.89, p=0.1)、腺がん症例を対象とした解析ではイレッサ投与群のMSTは6.3 か月、プラセボ群は5.4か月であった(HR 0.83, p=0.07)。いずれにおいても、イレッサが有意に生存期間を延長したとは認められなかった。
●奏効率
奏効率は有意な改善が認められた。
なお、東洋人の患者374例(日本の施設は含まれていない)を対象とした解析では、イレッサ投与群で、生存期間の改善することが示唆された(9.5カ月 vs 5.5カ月)。

微妙な結果が出てしまいましたね、とくにサブ解析。この東洋人のサブ解析を、どう判断するかがポイントでしょうね。。。後からとってつけたデータみたいにみえるのも事実だし・・・。。コレに差が出なければ、イレッサは厳しい立場に追い込まれたのでしょうが。ただ、もともとイレッサは症例を選ぶ傾向があるというか、効果がみられる症例と効果がない症例がハッキリしているといわれている。喫煙歴などの因子も大いに関わってるみたいだし。そう考えると試験対照をどう選択するかで、臨床試験の結論が変わる可能性もある。それに、例えイレッサに延命効果が期待できないとしても、膵癌におけるジェムザールのようにCBR(症状緩和効果)が認められるのなら、使用される価値は十分あると思う。現時点でイレッサの有効性について結論出すのことは難しい気がする。やはり、日本人を対象としたイレッサの大規模試験の解析が望まれる。。。。

NSAIDsを学ぶためのお薦め書籍

2004年12月26日 | よき医療とは…
NSAIDsやCOX-2阻害薬を知るのに有益な書籍を紹介します。


●COX-2阻害薬Q&A
販売元HP:http://www.iyaku-j.com/

●別冊「治療薬」非ステロイド性抗炎症薬の選択と適正使用 改訂第3版
販売元HP:http://www.jmps.co.jp//

●鎮痛・解熱治療ガイドライン
販売元HP:http://www.npojip.org/jip_menu/jindex.htm

●超薬アスピリン
販売元HP:http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/series.sinsho/

言葉の魔術/ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響⑥

2004年12月26日 | よき医療とは…
スーパーアスピリン
アスピリンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤は安価でよく効き広く使われているが、胃を荒らすのが難点。最近この常識を覆す「スーパーアスピリン」が登場した。リュウマチや関節炎の治療に使われるアスピリンは、古代ギリシャの時代から柳の樹皮に鎮痛効果があることか知られており、この成分をもとに合成された薬。アスピリンがどのように痛みに効くかわからなかったが、1971年英国の薬理学者のジョン・ベインが痛みや炎症に関係するプロスタグランジンという物質が出来るのを抑えることを明らかにした。最近遺伝子やたんぱく質の構造解析技術やコンピュータを使った薬剤設計技術を使って、胃を荒らすような副作用を抑えて鎮痛効果のあるレセコキシブという薬が開発され、米国で発売後半年間の売上がバイアグラを抜き一位に踊り出た。
(平成13年3月15日の朝日新聞より)

CELEBREXとVIOXXが世界中で大きな市場を獲得した理由は、宣伝の巧みさにあったのは間違いないでしょう。『スーパーアスピリン』、この言葉がなければ、コキシブ系はここまで売れてなかったと思います。
アメリカでは、アスピリンなどのNSAIDsが持つ胃穿孔などの重篤な胃腸障害の副作用で、亡くなる患者さんがたくさんいました(アメリカ人は、アスピリン大好きですからねぇ。その使用量はハンパじゃない)。そのため、製薬メーカーの間で、胃腸障害の少ないNSAIDsの開発競争が行われました。そのようななかで、胃腸障害の少ない極上のアスピリンを意味する『スーパーアスピリン』という単語が生まれました。そして、『スーパーアスピリン』は選択的COX-2阻害薬とほぼ同等の意味に用いられるようになり、CELEBREXやVIOXXなどのコキシブ系薬剤の代名詞としてに頻繁に登場するようになりました。
 しかし、コキシブ系が発売される以前から、胃腸障害の少ない選択的COX-2阻害薬は存在していました。エトドラクやメロキシカムといった非コキシブ系の選択的COX-2阻害薬がそれです。つまり、『スーパーアスピリン』とはコキシブ系薬剤の宣伝のための言葉だったんじゃないかと想像ができます。なにしろ『スーパーアスピリン』ですもん。すごく効き目が、ありそうじゃないですか。
しかし、この『スーパーアスピリン』にだけ、心血管系の副作用が報告されたのは皮肉としかいいようがありません。

非コキシブ系のメロキシカムは2002年の欧州リウマチ学会でメタ解析(117,755例)の結果が報告されています。消化管系の副作用はplaceboや非選択的COX阻害薬より有意に少なく、心血管系の副作用はplaceboや非選択的COX阻害薬と同等とのこと。また、エトドラクは、心血管系副作用の大規模臨床試験のデータこそないものの、治験時代を含めた20年以上日本で使用されてきましたが、重篤な心血管事故は報告されていません(ただし、今後なにか出てくる可能性はありますが・・)。

広告屋は巧みに言葉を用いて、新しく開発された薬をたくさん使わせようとします。それが仕事ですしね。ただし、新しい薬には常に未知の副作用の危険が潜んでいます。薬は他の製品と違い、新しいければいいというものではないということを肝に銘じる必要があります。


スーパーアスピリンジレンマ/ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響⑤

2004年12月25日 | よき医療とは…
【APC study (Adenoma Prevention with Celecoxib)の概要】
目的:celecoxib投与による癌予防効果の証明
対象:腺腫様ポリープの切除を行った大腸癌患者 約2400例
方法:celecoxib200mg、同400mg、対象薬の3群に分け、それぞれ1日2回服用した。
結果:冠動脈性心疾患イベントの発症リスクが、プラセボ群に比べ、400mg群では3.4倍、200mg群では2.5倍に増大(平均治療期間=33カ月)。 本試験はこの結果を受け2004年12月17日で中止となった。

なんか、Vioxxの時とそっくりだ。Vioxxも癌予防効果の効能追加の治験中に、投与18ヶ月以上の長期投与で心疾患系の副作用が認められたんだよね。コキシブ系の選択的COX-2阻害薬の長期使用が、心疾患イベントの発生リスクを高めるというのは、もはや疑いがないと思います。

以下に私の仮説を記します、ただし根拠はありません。COX-2は血小板の凝固を抑制する方向に働いています。これは、COX-2がPGIの生成を抑制するためです。PGIは血小板に対して血小板凝集抑制作用と血管拡張作用を有しているため、心筋梗塞を予防する効果があります。COX-1はTXA2の生成し、血栓を生成しやすくします。TXA2は血小板に対して血小板凝集促進作用作用があるためです。つまりCOX-1とCOX-2は逆の作用を有するわけです。。あーややこしい。
 アスピリンなどの非選択的COX阻害薬の低用量投与の場合、COX-1阻害による抗血小板作用とCOX-2阻害による抗血小板作用の抑制と相反する作用が起こりますが、COX-1阻害による抗血小板作用のほうがCOX-2阻害による抗血小板作用の抑制よりも優位に作用し、結果、抗血小板作用を発現します。
 そして、COX-2の選択的阻害が大きくなるにつれ、COX-1阻害による抗血小板作用が期待できなくなります。そのため、COX-2活性が非常に高いコキシブ系では、COX-2阻害による抗血小板作用の抑制が優位に発現し、血栓が発生しやすくなる。そのため、心疾患イベントが増大するのではないでしょうか。

なにかに、似てませんか? そう、アスピリンジレンマです。アスピリンは低用量の場合は、先に述PGI生成阻害効果よりもTXA2生成阻害効果が強く現れます。TXA2は血小板を凝固させますので、低用量アスピリンは抗血小板効果を有しますが、ただし高用量では PGIの生成も阻害してしまい血栓の発現をかえって促進してしまいます。これをアスピリンジレンマといいます。このアスピリンジレンマは、用量に依存しているだけでなく、COX-1/COX-2の選択性にも依存しているのでしょう。このCOX-1/COX-2の選択性に依存するアスピリンジレンマを『コキシブジレンマ』、または『スーパーアスピリンジレンマ』と呼んでいいかもしれません。

ちなみに、非選択的COX阻害薬のnaproxenもFDAから警告でています。適用用量を超えた使用量では、やはり心疾患系の副作用のリスクが増大するとのこと。
http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01148.html
ただ、こちらについてはアスピリンジレンマという周知の事実で理解できる問題ですので、大騒ぎする必要はないでしょう。。

ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響④

2004年12月25日 | よき医療とは…
NIH Halts Use of COX-2 Inhibitor in Large Cancer Prevention Trial

The National Institutes of Health (NIH) announced today that it has suspended the use of COX-2 inhibitor celecoxib (Celebrex(TM) Pfizer, Inc.) for all participants in a large colorectal cancer prevention clinical trial conducted by the National Cancer Institute (NCI). The study, called the Adenoma Prevention with Celecoxib (APC) trial, was stopped because analysis by an independent Data Safety and Monitoring Board (DSMB) showed a 2.5-fold increased risk of major fatal and non-fatal cardiovascular events for participants taking the drug compared to those on a placebo.

Additional cardiovascular expertise was added to the safety monitoring committees at the request of the Steering Committees for this trial after a September 2004 report that the COX-2 inhibitor rofecoxib (Vioxx(TM)) caused a two-fold increased risk of cardiovascular toxicities in a trial to prevent adenomas. The APC is a study of more than 2,000 people who have had a precancerous growth (adenomatous polyp) removed. They were randomized to take either 200 mg of celecoxib twice a day, 400 mg of celecoxib twice a day, or a placebo for three years. The trial began in early 2000 and is scheduled to have been completed by Spring 2005.

Investigators at the 100 sites in the APC trial located primarily in the United States, with a few additional sites in the United Kingdom, Australia, and Canada, have been instructed to immediately suspend study drug use for all participants on the trial, although the participants will remain under observation for the planned remainder of the study.

“Data from the report on rofecoxib (Vioxx(TM)) informed us of the need to focus on specific cardiovascular issues, and our Institutes brought in the experts to do so," said Elias A. Zerhouni, M.D., NIH Director. “Our overwhelming commitment is to advance the health and to protect the safety of participants in clinical trials. We are examining the use of these agents in all NIH-sponsored clinical studies. In addition, we are working closely with our colleagues at FDA to ensure that the public has the information they need to make informed decisions about the use of this class of drug.”

“The rigor of our clinical trials system has allowed us to find this problem,” said NCI Director Andrew C. von Eschenbach, M.D. “We have a strong system that provides us with the opportunity to both find ways to effectively treat and prevent disease and to do so in a way that protects the lives and safety of the participants.”

NIH sponsors over 40 studies using celecoxib for the prevention and treatment of cancer, dementia and other diseases. In light of these new findings, NIH Director Zerhouni requested:

* a full review of all NIH-supported studies involving this class of drug.
* NIH Institutes to inform the principal investigators for all of these studies and will ask them to communicate directly with their study participants and explain the risks and benefits
* NIH to ask each investigator to inform us of their plan to analyze their data in light of the information
* the Institutional Review Boards (IRBs) for all related trials to assess the new information and to conduct a safety review as well
(NIH newsより引用)


ブロックバスターVIOXX発売中止とその影響③』で、VIOXXのCV(心血管)リスク増大の報告を受けて、FDA(米国食品医薬品局)やEMEA(欧州医薬品審査庁)が、他のコキシブ系選択性COX-2阻害薬についても、CV(心血管)リスクの副作用について追跡調査していることを述べました。今回、FDAから最新の報告が17日に発表されましたので、その結果を紹介いたします。