「秋深し月次の軸定まりぬ」
昨年の秋に引き続き、京都の俵屋に一泊した。年に一度では常連とは言えぬが、二度目となると不思議なもので、初回に感じた緊張感というものがない。初回と比較して二度目は感激が薄くなるとよく言うが、こと俵屋においてはそんな心配は杞憂に終わった。
俵屋では月次(つきなみ)のしつらいにも拘っており、11月の泉の間の掛け軸は土佐派中興の祖といわれている土佐光起の「鹿園」という作品。江戸前期の芸術品を気楽にさり気なく使っている。作品の良し悪しは良くは分からぬが、その掛け軸は簡素な床の間に、いかにもという感じでしっくりと定まっていた。(08-11-9)