「頭からかじりて鮎のほろ苦き」
昼飯は蕎麦の「草庵」を目指したが、残念なことに定休日。であれば、この季節、やはり鮎であろう。道路沿いのあちらこちらに「鮎料理」ののぼりがたっている。ここは嗅覚が大事だ。老舗の和田屋は避け、というよりも金額的に敬遠し、程よい構えの「りんどう」という川魚料理食堂を選んだ。白山ひめ神社の門前近くに位置する。
店に入ると、入り口近くに立派な囲炉裏がある。炭は赤々と燃えており、準備は万端のようだ。こじんまりとした店内にはマニアなら興味しんしんのオーディオ装置からジャズが流れている。テーブルのメニューを見ると、鮎にロワールのプイイ・フュメのグラスワインが合います、とある。目を横に向けると戸棚の上には、何とオーパスワンの木箱が置かれている。「うーん、何者だろうか」と思い、若い店主に「ワインお好きなんですね」とたずねると、ニヤッと笑って「私、ソムリエなんです」と答えてくれた。これは、まあ、冗談だろう。
鮎は串に刺し、囲炉裏でじっくりと焼き上げる。客がやや待ちくたびれたかなという絶妙のタイミングで1700円の鮎定食が出てきた。天然の小ぶりの鮎は、頭からかぶりつくと香りが口の中に広がる。焼き具合も文句ない。これはワインを飲める段取りをして、もう一度来なくてはなるまい。(12-8-9)