学生の頃、たまり場になっていた先輩のアパートはストロベリーフィールズという甘い名前だった。そこにいけば必ず誰かがいて、年中出しっぱなしのこたつにはいつも誰かが眠っていた。その部屋に来ると眠くなるのは眠りばばあというお化けが住み着いているからだ、と先輩は笑った。必ず誰か居るという部屋に住む眠りばばあ。きっと寂しがりやだったに違いない。あたしも休講の度に訪れ、眠っていた。もう十数年以上前の話だ。懐かしくて胸が痛む。どんななに悲しいことやつらいことがあっても誰か居た。話し相手がいた。眠れた。今はもうそのアパートはない。震災で壊れたし、先輩は卒業してとっくにその部屋を出た。あたしが不眠症のときもその部屋があればきっと眠れていただろう。でも、あたしは考える。最近起きていられない。仕事以外は眠ってしまう。恐ろしいくらい何時間も。話し相手がいないから仕事の合間にブログを書いてあとはひたすら眠る、眠る、眠る。孤独を忘れるために。ストロベリーフィールズをなくした眠りばばあがあたしに取りついたのかもしれない。寂しがりやの眠りばばあ。ごめんなさい、あたしでは眠りばばあの孤独は癒せない。あたしの部屋はたまり場にはならない。眠りばばあもさぞかし落胆していることだろう。仕方ないから一緒に眠る。深く深く眠る。眠りばばあよ、どうかあたしもそっちの世界に連れていって。二人でまたストロベリーフィールズみたいなオアシスを探そう。また帰ったら眠る。眠る。眠る。覚めたくない。もうどうしようもないんだ。一緒に現実から逃げ出そう
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