自分で言うのも本当になんだけど20代のころはそこそこ美人だったのよ、鏡を見てため息を吐く。まあ女は加工品と豪語していたあたしはカラーコンタクトに沢山のピアス、長い髪は金髪に近い色に染めて、つけまつげにくっきり縁取られた唇。万年ダイエットでガリガリに痩せた体。ロードスターを乗り回し流行りの服を身に纏う。もはや原型など分からないがそこそこ見られたもんだった。変わったな、これが諸行無常というやつか…。幼い頃、母親に真面目に聞いた質問を思い出す。ねえ、なんで子猫は可愛いいの?母親は至極当たり前の様に答えた。だって可愛くないと捨てられちゃうでしょう?そうか、可愛いくないと捨てられちゃうのか、あたしが美容に目覚めたきっかけだったように思う。まあ現実は可愛いかろうがなかろうが捨てられちゃうときは捨てられちゃう。それを知るのはまだ後の話だ。さて、すっかりやる気をなくし本当に原型を留めないほど醜くなったあたしは若い頃化粧もせず日光に当たりまくって染みだらけになってあたしをうんざりさせていた母親に似てきている。いや、母親は醜くないんだけどね、若い頃は世界が自分中心に回っていて凄くわがままだったし、沢山人を傷つけていたに違いない。もしあの頃今の謙虚さが?少しでもあればあたしの人生も変わっていたかも知れない。たら、れば、の話は無いものと同じだ。本当に正に盛者必衰の理だわ。人生年をとってからの方が長いのになんて生きにくい世の中でしょう。若い頃に盛者必衰、感じないもんな、感じる前に家庭を持つのが多分普通。あたしはいつも気がつくのが遅い。ふと、思う。五年前、あたしがゆきぃ、だった頃あたしはまだ少しは綺麗だっただろうか?あの人の記憶に、ってもう記憶ないけど。少しでも美しい思い出として見えただろうか?これから本格的な冬が来る。今までで一番寒い冬だろう。凍えるような雪だろう。春になったら、きっと…。世の中そんなにうまくいかねーよ、とあたしを不安にさせるあたしも居るけど。諸行無常、盛者必衰、老いだけは誰にでも来るのだ。平等に。どう生きるか、だ。どうかあたしに暖かい春を
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