beautiful world 6
早見先生と約束をしている日曜日がとうとうやってきた!
いろんなことを考えてると頭が冴えて結局一睡もできなかった
カーテンを開くと…
ーー めっちゃ快晴
葉山さんは
“大雨にでもなればいいのに”
なんて言ったけどめっちゃ晴れてますよっ♡
ふと葉山さんの別れ際の悲しげな表情が頭に浮かんだ
気にしない 気にしない!
今から先生と会えるんだもの
待ち合わせの場所に着いて15分
1分毎に緊張が増していく気がする…
寝不足なはずなのに全然そんな感じがしない
腕時計を確認すると待ち合わせの時間になった
顔を上げると先生が軽快に走って現れた
わぁ… き、来た…
先生だ…!!
「田中さんこんにちは(笑) えーっと… 僕 遅れてないよね?」
先生は自分の腕時計を確認した
「こんにちは(笑) 大丈夫です、時間ピッタリです!」
うわぁ、心臓がバクバクしてきた
なんかデートの待ち合わせみたい
今日は先生と初めてのお出かけだから少し大人っぽいワンピースにしてみた
先生は朝からほんと暑いねぇ!とタオルを首にかけた
高校生の頃
学校で見かける先生はいつも首からタオルをかけるスタイルだった
なんだか懐かしいな… (笑)
私の視線に気付いたのか
「あ、つい、いつもの癖で(苦笑) 」
タオルを首から取ってしまった
そのままでも良いのに(笑)
電車に乗り込んで隣に座った先生に緊張して心臓がドクドクしてる…
「田中さんはいつもどんな写真撮ってるの?」
「えっ、あ、風景が多くて人物は撮ってないです(笑)」
先生を撮らせてもらえないかなぁ…
「人物って案外難しいからね。でも良く撮れたものはずっと眺めてしまうんです(笑)」
私も先生に撮ってもらいたい… なんて図々しいかな
鎌倉に到着し
先生の案内で神社に回ったり
土産物の通りを撮影してみた
先生はデジカメだから撮影した映像が直ぐに見られる
どうしてこんな風に撮れるの!?と驚くほど印象的な映像に撮れている
何故? どうして?
私となにが違うんだろう…
「田中さんはフイルムだから出来上がりが楽しみだね(笑)」
あ、高原での写真!
「高原の、現像した写真見ますか?」
「お、そうだね(笑) じゃあ昼飯行こうか。そこで見せてもらおうかな(笑)」
蕎麦屋さんに入って注文し
待っている間に写真を見せた
良いね…と優しく微笑みながら呟く先生は学校で見ていた先生より優しい表情で
ドキドキしながらもつい凝視してしまう
「今まで撮った早見さんの写真、見てみたいです(笑)」
「今度持ってこようか?って… これは同じ趣味の友達ができたって事で、、いいのかな(笑)」
ーー “友達”
嬉しい...!
また一歩近づけた気がした
照れくさそうな先生に胸がキュンとしながら距離が縮まっていく幸福感に満たされた
「もちろんです!あの、質問してもいいですか?」
「うん。何かな?」
「早見…さんは どんな人が好みのタイプですか?」
それは高校生の頃からずっと気になってた質問のひとつだった
先生はキョトンとした後 微笑んだ
「はははっ(笑) 写真の質問が来ると思ってた(笑)」
あっ、なんか恥ずかしい…
いきなりこんな質問おかしかったのかな
「タイプ、ねぇ?」
腕組みして悩んでいる姿もキュンキュンして困るんですけど
「綺麗な人… かな?」
え?美人ってこと??
まさか先生が
美人が好みだなんて言うとは微塵も想像していなかった...
私は…
お世辞にも美人とは言えない…
「そ、そうですか(苦笑)」
もう撃沈しちゃった…
「綺麗と言っても一般的に言う顔の造りが綺麗って事じゃなくて… んー。なんというか空気感?」
空気感???
「何かに打ち込んでる姿や生き生きしている人を直感的に“綺麗だな”と感じる。
また会いたい、もっと知りたいという欲求が強く湧いてきた時にはもう完全に心を奪われてる、かな。」
先生の心の内側にはそういう“想い人”がいて
その人を想い浮かべながら話してるように見えた
そうだよね…
先生にだってそんな女性がいてもおかしくない
胸が痛い…
「じゃぁ〜田中さんは?どんな男が好み?」
聞き返される事は考えてなかった
“先生が好きなんです”なんて言えないし …
「誠実で…穏やかで…爽やかで...大人で…ガッチリした人で...」
「なるほど(笑)それはイイ男だね(笑)」
他人事のように笑ってるけど先生のことです…
「は、早見さんも、そんな感じですよねっ?」
ドキドキしながら“あなたですよ”的に匂わせてみた
「僕が?いやいや(苦笑)」
小さく手を振って否定した
そんなヒーローみたいな男じゃないと先生は困ったように笑った
先生の写真を撮らせて欲しいとお願いしてみたら
先生は自分が被写体になるのは初めてだけど良いよと了承してくれた
勇気を出して良かった…!
「ありがとうございます、先生!(笑)」
「僕は先生と呼ばれるほど(写真)の腕はないよ(笑)」
つい“先生”と口走っていたことに気付いた
「が、学校の先生でもありますし…あ、もう着きそうですね!」
電車を降り
前を歩く先生の後ろ姿を撮った
肩や腕、背中まで筋肉がついているガッチリとした先生の後ろ姿は
高校の時に遠目から眺めていた姿のまま
ついて来ていない私に気付いて振り向いた瞬間にまたシャッターを切った
「あれっ!?もう撮ってるの?(笑)」
カシャ!
笑顔の先生もらった!(笑)
「もちろんです!沢山撮らせてもらいます(笑)」
「撮る時は一言言って欲しいよ(苦笑)」
先生が照れくさそうに笑った
キュン死しちゃうかも♡
本当にデートみたいで本当に幸せ…
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