気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Inside Your Head 3

2020-02-05 09:48:00 | ストーリー
Inside Your Head 3





3度目のデートでは
彼女の部屋に行くことはできなかったけど

5回目のデートで初めて俺は彼女の部屋に招待された

やっと彼女から信頼されたと喜んだ


それからは
彼女の部屋に呼び出されることが多くなり

会うスパンが短くなってきた

突然 夜中に呼び出されることが増え
その時は必ず彼女は身体の関係を求めてきた


彼女から求められることに喜びを感じる俺は
必ず彼女の呼び出しには飛んで行った


最近は突然 夜中に呼び出されることはなくなったけど

ある日彼女が ふと俺に “好き” という言葉を口にした


俺には彼女しか目に映らなくなった

恋の盲目ってこういう事だと自覚もしてる


他人から見るとバカじゃないかって言われるだろう



ーーー



彼女と外食し、今は飲みに向かっている

彼女の手を取り繋いだ


「莉桜 、俺のこと、ほんとに好き? 」


彼女がふと、俺に “好き” と言ってくれたあの日から俺は嬉しくて何度も聞いてしまう


「何度も言わせるたがるわね(笑)」

「だって、 嬉しいから!」



背後から男の声がした


「ーーあれ? 莉桜?」



俺と彼女が振り返ると

整った顔立ちのスーツが似合う、まるで伊勢谷友介のような大人の男が声をかけてきた


年齢は彼女より5つ以上は年上じゃないか… ?

男は彼女に歩み寄り にこやかに話しかけてきた


「久しぶり。元気だった? まさかこんな所で会うとは思わなかったな(笑)」

男はまるで俺がそこにいないかのように彼女しか見ない

俺は彼女の手を強く握り締めた


彼女は笑顔もなく 表情ひとつ変えず淡々と話しだした


「久しぶりね。こっちに帰ってたのね。」

「去年からこっちで仕事してるんだ。」

「今から私達、飲みに行くの。」


俺はホッとした
これでこの男と別れて二人になれると思った


「あなたも一緒に行く?」

はぁ!? 嘘だろ!?
とっさに彼女の顔を見た



「それは彼氏に悪いよ(笑) 」

「良いわよねぇ? 海人。」
彼女は俺の顔を見た


ヤダよ! 俺はイヤだっ!!

俺の困った表情もスルーし、彼女は男を誘った





莉桜とはどういう関係なんだ?

悔しいけどこの男 渋くて超格好良い
顔もスタイルもセンスも何もかも…


彼女から誘ったことが

… ちょっと (だいぶ) 寂しい



男は常に笑顔で彼女に話しかけているが彼女に笑顔は無く

まるでビジネスの話をしているかのように
ずっとクールな表情で落ち着いて話をしている



彼女から誘ったんだから

本来ならもうちょっと楽しそうな表情に
なりそうなものなのに…


まぁ、俺としては?

彼女が楽しそうに
愛想よくしてると妬けるから今ぐらいでいい!

彼女の電話に着信が入り席を立って店の外に出た


俺と男の二人になった



「君は彼女との付き合いは長いの?」

「まだ… そんな長くはないですけど… あなたは彼女とどういう関係ですか? 」


突っ込んで聞いてみた


「僕? “友達”(笑)」


友達!? そんなの嘘だ!

今、含みをもたせて言ったのを俺は聞き逃してないぞ!!



俺は表情を変えず爽やかな笑顔をキープする

こいつ 絶対 彼女となんかあったに違いない!



「よく彼女を落とせたね 」

はぁ!?
喧嘩売ってんのか!?


「それはどういう意味ですか?」

「 彼女、なかなか恋愛感情 抱かないからさ(笑)」


まぁ、、それは確かに…


てか、何でそれ知ってんだよ!
やっぱ何かあったな!


「あなたは“元彼”なんですか?」

男は まるで “そうだ” と答えるよに
クスッと笑った


彼女が電話を終わらせ帰ってきた

「何? 楽しい話でもしてた?」


してないっ!! 逆だよっ!!



「祥、私達もう帰るわ。」

あぁ、良かった…



「そうだ、莉桜に良い話があるんだ。後日 連絡していい?」

「良い話って?」

「ビジネスの話。今度 ウチの雑誌社の企画で
オーダーメイドブランドの特集をするんだ。

そこで君の会社の商品を掲載できないかと思ってね。」

「…そう。いいわ。じゃあ連絡先ちょうだい。」


えっ
そんな…


二人は連絡先の交換をした

「じゃ、また。」


彼女が立ち上がったから俺も立ち上がった



「ねぇ… さっきの奴と仕事するの?」

「 どうなるかしら。まずは話を聞いてからね。」

経営者の顔でクールに答える



なんか …
俺は不安だよ …

彼女の気持ちが揺らいだりしないかって


「どうしたの? なんで拗ねてるの?」

「別に。拗ねてなんかない。」


彼女がクスクス笑いだした


「なんで笑うんだよっ」
ムッとした俺の表情にますます笑う彼女


「 不安にならなくていいわよ?ビジネスなんだから。」

「だったらなんで下の名前で呼びあってた?
二人はどんな関係? まさか元彼?」

「昔から彼とはそういう呼び方だったからよ。」


あ、今はぐらかした


「“彼” なんて言うなよ… 」



「なぁにぃ?そんなに凹まないでよ(笑) 飲み直しにいこ?ね?」


なんか…
拗ねた子供をあやすみたいな言い方だ …


ーー 俺は足を止めた


「俺はっ!俺は… 莉桜が心配なんだ… 」

「大丈夫だから。私を信じて。」
彼女の瞳には俺だけが映りこんでいた



「… わかってる」


やっぱり元彼なのかな…

あんな仕事ができそうな色気のある大人の男


やっぱ 凹む…


「莉桜… 今夜 君の部屋に行っていい?」

「… いいわよ」





ーーー




彼女の部屋に入るなり俺は彼女に激しくキスをし激しく彼女を抱いた




ーーー



「ごめん。俺… めちゃくちゃ嫉妬して意地悪した… 」

眠そうな彼女はそのまま静かに眠りに落ちた


俺 嫌われるんじゃ…

彼女が目覚めるのが恐くなった


でも… あの男に抱かれたなんて想像するとやっぱり辛い


あの男 結構イイ男だったから


あーっ 聞かなきゃ良かった…
知らなきゃ良かった …


そんな自己嫌悪にさいなまれた


彼女が寝てる間
起きた時に彼女が食べられるよう

野菜のスープを作り
サラダをラップして冷蔵庫に入れた


どうしよう

メモを置いて帰ろうか
彼女が目覚めるまでここに居ようか


どうしよ…

彼女の寝顔を見つめる


やっぱり
起きるまで一緒にいよう…

彼女の隣で眠る事にした



ーーーー



翌朝 目が覚めると彼女は先に起きていて
隣にはいなかった


彼女がシャワーを浴びている間にスープを温めコーヒーを淹れ

朝食の準備をしテーブルに並べた時


彼女が髪をタオルで拭きながら出てきた



俺が起きていたことに驚いたのか
びっくりした表情をした



「おはよ… 莉桜 」

気まずい…


ムッとした表情に変わった

「ちょっとそこ座って。」

「… ハ イ 」

ダイニングの椅子に座った


俺の前の席に座って脚を組んだ

コーヒーの良い香りが部屋中にたちこめている


「コッ、コーヒー、入れようか… 」


コーヒーを入れ彼女の前に差し出し
また椅子に座った

俺はまるで 今にも母親に叱られそうな子供のようだ


黙ってコーヒーを飲む彼女

「 …… 」



気まずい!むちゃくちゃ怒ってる!

莉桜がこんなに感情を露にして
怒っているのが初めてで


恐い ーー



「あのさぁ!」

「… ハ イ 」

「いつ覚えたわけ!? 」

「えっ、、いつって、、何? 」

「年上の女でしょ!」


…え?


「何を言ってるの?」

「前々から思ってたんだけど!あなた、年上の女に “なにかと” 教わったわけ!? 」

「なにかとって、なんだ、そんなことで怒ってたの… 」

「そんな事ぉ!?」 ますます怒りだした

「あっ、ごめっ 、、」


なんだ …

昨夜 攻め倒したことを怒ってるわけじゃないんだと内心 ホッとした



「昨日は … ほんとごめん。あの男と莉桜との関係に嫉妬してあんなこと…

度が過ぎたなって… めちゃ反省してる…もうしないから… 」

「確かに ひどかった … 」

「ごめん… 」 だよなぁ…

「…私はあんな海人 見たことなかった。けど …まぁ、たまには いいわ。」



照れくさそうに視線を反らした



… え? そうなの ?


「あっ、今はその話じゃない!いつ教わったのよ!あなたまだ若いのにおかしいわよ! 」


莉桜が感情的になって俺にヤキモチを妬いてくれてる ーー


彼女の人間味を感じられることに喜びを感じる


「何笑ってるの?その女のことを思い出してるの?」

ムッとしてる彼女がさっきまで恐く見えたのに 今は凄く可愛い女に見える


「そんなことを聞いても何も変わらないし
逆に嫌な気持ちになるだけだろ?」

「でもずっと知りたかったから… 」

ムスッとする

「言いたく… ないな 」



言えば

君の俺への今の気持ちが変わってしまうかもしれない

そう思うと恐くて言いたくない


昨日の男と君との間に肉体関係があっただろう

そう気づいてしまった俺は
ただただ 辛い想いしか残ってない…


それと同じだ


俺の昔の彼女は莉桜よりもずっと年上で ひと周りも離れてた大人の女だった

彼女が要求することを叶えていたら
女の要求することを知ることができた


どうされたいとか
どう扱われたら嬉しいとか
それらを素直に俺に要求してきた女だった


セックスだけじゃない
エスコートの仕方
女性に対して配慮すべきところとか
男としてどうあって欲しいとか

女性の心理を 自然に教わった気がする


そんな元彼女は人としても魅力的な女だった …


見た目が良いという訳ではなくて

俺には 正直な想いを伝えてくれたし
人間としても尊敬できる大人だった

だから俺はそういうイイ女と思える女じゃないと物足りなくなった


でも それは莉桜に言う必要のないこと

今は莉桜しか見えないんだから…



ーーーー



あの男と仕事をすることになった彼女は自宅には滅多に帰らなくなった

心配するなと言われてもするに決まってるだろう

だって あの男と一緒に仕事してるんだから…


なかなか会えなくなって
不安で寂しい …


彼女にメールをするかどうか散々迷い
結局 送るのをやめた


しつこくすると彼女は嫌がる性格を知っているから
彼女から連絡が来るのを待つことにした



ーーー



前は一日一度はメールが返って来てたのに
次第にメールが来ない日が増えてきた


もう一週間 メールが来ない

こんなことは初めてじゃない


大きな仕事が入った時は仕事に集中してるのか
全く音沙汰が無くなった事があった



でも今回は あいつと一緒


悪い想像ばかりが浮かんでしまう

俺 どれだけ莉桜に惚れてるんだ…



一目だけでも顔が見られたら…

俺は彼女のマンションの下で待つことにした


いつ帰るのかもわからないのにもう3時間は待っている



もう帰ろうと思った時

高級外車がマンションの地下駐車場に入ろうとスピードを落とした

よく見たらその車に莉桜が乗っていた


ーー 莉桜!!


運転していたのは やはりあの男だった

ゆっくり地下駐車場に入って行く車を慌てて追いかけた

エントランスに繋がるエレベーターホールの前で車は停まっていた


彼女は車から降り

あの男に笑顔で軽く手を挙げ
裏のエレベーターホールに入っていった

彼女を追いかけたけれど
エレベーターはもう上昇し始めていた

彼女に電話をかけるが電源が入っていない…


彼女の部屋番号を押すが
まだ部屋に着いていないのか応答がない



焦る気持ちを抑えきれず
何度も何度も部屋番号を押し続けた



『はい。』 やっと彼女が出た


「莉桜、俺。開けて!」

『海人!? どうしたの?』

「早く開けて!」


ドアが開きエレベーターに乗り込む


彼女の部屋のドアの前に着いてチャイムを鳴らすと直ぐに彼女がドアを開けた



「びっくりした!どうしたの?」

「会いたくて… ずっと下で待ってたんだ 」


俺を部屋に通してくれた


「凄いタイミングね。久しぶりに落ち着いて帰ってきたところだったのよ。」

「…俺 見たんだ。さっきあの男の車で君が帰ってきたのを。」


彼女は振り返って俺の顔を見た


「だから?」





ーー だから?って…




「だから、それが何?」

表情を変えずクールに話す彼女






「何で… 」


「今は一緒に仕事してるからそんなこともあるわよ。」


そう言いながらビアスを外している



「だからって家まで送ってもらうことないだろ!?」

彼女はその言葉を聞いた途端、表情を変えた



「そういう勘繰りやめてっ。ーー 余計疲れるわ。」


溜め息混じりで
もううんざりだ!と言わんばかりの表情をした



「なんでだよ… 君から連絡するからって言ったから俺ずっと待ってた。

でも君からはメールひとつも来ない 。

ずっと気になって、心配してたけど俺からはメールも送らなかったろ?

しかも なんであいつと一緒に… 」



「海人。そういう話ならしたくない。もう帰ってくれない? 私 今凄く疲れてるの。」


眉間にシワを寄せ

面倒くさそうな表情で吐き捨てるようにそう言った


そんな彼女を見て俺は何も言えず
黙って彼女の部屋を後にした


涙が出そうなくらいショックだった…


完全に俺に愛想尽きたような
ウザいと言わんばかりのあの表情に



ーーー 俺の心は深く傷ついた


莉桜
まさか

このまま別れるなんてことになったりしないよな…



それから2週間が経ち…

1ヶ月経っても彼女からの連絡は来なかった


さすがに1ヶ月もの間
全く連絡がないなんてことは今までなかった


もうこのまま
関係が終わってしまうんじゃないだろうか

違う…
もう終わってるのかもしれない


そんなことを考えてしまう度に胸が痛んだ




ーー あの日から3ヶ月が経った



もう彼女の心の中に俺はいないのだろう

俺も心の整理をつけることにした


彼女が選んで買ってくれた服や靴を捨てるため袋に詰めこむ



そして
彼女と記念に撮ったフォトブックを手に取った


ゆっくり開いてみる

この頃は幸せだった…



1ページ 、 1ページ 、開けるごとに
いろんなことを思い出す



初めてクラブで彼女を見た瞬間

理由もなく心が惹かれ
彼女から目が離せなくなった


夜の観覧車で俺が歌った時の彼女の表情

好きと言われ 舞い上がったことや
感情を俺に見せるようになって嬉しかったこととか


なんか…
全てが夢だったのかな…


まさかこんなにも呆気ない終わり方になるとは思いもしなかった



ーー 涙も出ない


ただ 空しさだけが残った


そして俺は
彼女との愛が詰まったフォトブックを


ーーー 捨てた








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