晴手帖

読書感想・日々雑記

夏休みです

2008年08月15日 | 読書・映画三昧
夏休みに入りました

朝からクーラーつけずに頭に手ぬぐい、「香田さん」的スタイルで掃除。
時間をかけて家事が出来るのって、なんて幸せなんだ!
もう、週三でいい。会社は週三ぐらいで。

●「おしゃべりのできる小イヌ」 ベティ・ブロック/著
これもまた、小学校2年ぐらいのころ学校の図書室で借りて、
お気に入りだった本です。
「自分のヒジにキスが出来る子は妖精だ」というところだけ
印象に残っていて、タイトルも作者も忘れてしまっていたのですが・・
やっと判明して古本で購入しました。
たしか、同じクラスのちょっと頭のいい女の子が、
「この本面白いんだよー」と教えてくれて、わくわくしながら借りたんだっけ。

肩に小さなかわいいイヌを乗せた女の子がお屋敷の上空を飛んでいる絵が
表紙で、すでに面白そうな本の匂いがします。

おしゃべりができる、体長10cmの小さな小イヌ。
自分の背中に残された「F」のかたちをした不思議な痣(あざ)。
台風の日に現れた金色のネコが告げる秘密。
"きみは本当は人間の女の子じゃない。妖精なんだ・・・"

まあなんとも、自分ごのみな物語!
夢見がちでファンタジー好きな小学生のハートをわしづかみです。
もちろん、ヒジにキス出来ないかどうか何度もやってみました。
無理
わたしはヒジに痣があるから、これでなんとかならないか?と真剣に思ったものです。

読み返してみると、主人公アナベルの周りの大人たちが抱えている悩み
(それは7歳のアナベルにはまだよくわからない)がさりげなく、
でも結構ビターなかんじで描かれていて、ハラハラします。
お話はハッピーエンドで終るけれど、このお話、アナベルの年齢がもっと上で、
妖精の国の話やトミーの家出やグローリアの本当の姿・・などなど、
語りきれていないところまでがつんと描いてある大長編になったら、かなり面白いんじゃないだろうか・・と、余計なことを考えてしまいました。

●「チェーホフ・ユモレスカ」 チェーホフ/著

たしか江國香織が編集した短編集に、チェーホフの「かわいい女」が入っていて、
その読みやすさとあかるい皮肉さが面白くて、いつかちゃんと読もうと思っていたのでした。
これはチェーホフが若い頃、家計をささえるためにショートショートを書きまくっていたころの作品集だそうです。
ロシアのことをまったく知らないわたしが読むと、
ちょっと理解できない部分(時代背景とか、階級とか、ロシアンジョークっぽいところとか)もありますが、やっぱり読みやすくて面白いです。
難しい言い回しや比喩は一切なし、ほとんどがふつうの人たちのふつうの会話だけで構成された短編。
しかも、100年以上前の。
なのに、現代の日本女子が読んでも楽しい。こういう人、いるわ・・と思う。
いい話あり、風刺あり、悲劇ありで飽きません。
「猟犬の狼猟訓練場で」「男爵」「妻は出て行った」「偏見のない女」「策を弄する人」「女性法律顧問」「ヴォードヴィル」「駆け出し作家の心得」が面白いと思いました。
昨日読んだばかりの「ヴォードヴィル」は、素人作家が芝居の案(?)を友人の前で披露したところ好評得て、その気になりかけたのに、「あそこの部分は●●が読んだら気を悪くするから、やめたほうが・・」とか、「警察官のことをとやかく書くと面倒だぞ」とか、いろんな人にあーだこーだ言われるうちに、
「そうだな、そのとおりだな」と言って諦めちゃう、という話。

この話の最後の一言が、痛烈です。

「噂の種になるし・・・いろいろ取りざたされるからね・・・ひょっとすると、
僕のヴォードヴィルには、われわれには見えなくとも、別の人間なら気付くようなものが潜んでるかも知れないからな・・・。破いてしまおう・・・。君たち、なあ、頼むから、どうか、そのう・・・だれにも言わないでくれたまえ・・・」

作家にしろなんにしろ、100年前にしろ今にしろ、
ものをつくって世に問える人というのは、こういうことと闘える人なんだなあと思いました。そして、当時の厳しい検閲の下で小説を書きまくっていた若いチェーホフの怒りや苦悩が、この短い話の中に出ているよう思えてならないです。

それにしてもこの本、会話の中でやたら「!」を使う部分が多いんですが、
ロシアの方は情熱的なんでしょうかね??

●「VENGO」「僕のスウィング」 トニー・ガトリフ/監督
すっかりはまってしまったトニー・ガトリフ監督映画。
この2つもよかったわ・・・
思春期ブーム真っ最中の自分としては、「僕のスウィング」はたまらない映画でした。
あのあと、スウィングちゃんはどんな人生を送るんだろう。
あの夏仲良くなった白人のそばかすの男の子のことは、忘れてしまうかな?
公開当時は「小さな恋のメロディ」ジプシー版、みたいな紹介のされかたでしたが、観るとまったく、かわいい少年少女の淡ーい恋物語を描きたかったわけじゃない、むしろ全然そこじゃない、ということがわかります。

VENGOは、終盤のあるシーンがとても怖いです。

●「王と鳥」 ポール・グリモー/監督
やっとTSUTAYAの会員になりました。
ミニシアターコーナーがあるのが素敵です。

さて「王と鳥」。

あのエレベーター!まさにカリオストロ!
少年の運動神経が良過ぎる!王様がロリコンすぎやしないか!
屋根と階段急傾斜すぎ!巨大ロボットの動きが生理的にイヤ!

などなど、宮崎監督が多大な影響を受けたと思われるところを
見つけて楽しむのはともかくとして。

王様にすっかり感情移入してしまいました。
王様だって本当は気が付いてるんだ、自分が醜くて、誰にも愛されてなくて、
孤独だってことを。
でも、やっぱりきもくてやなやつなんだよな~
絶対結婚したくないよ、直視できないよ。
それにこの人、絶対改心なんてしそうにないし。

なんて思いながら観ていたのですが、最後の破壊っぷりが衝撃的です。
有無を言わせずゼロに戻す。
王様?そんなものはポイだポイ!
さあ、新しい夜明けがやってくる!
やったね!

・・・いいのか、これで。
そりゃ、今のままじゃいけなかったのはわかるけど。
だってこの人たち、もう自分の家すら壊れてなくなっちゃったよ?
これからどうするの?どうなるの?
あの男の子と女の子が、新しい「王様」になるの?
本当に「いいこと」をしたの?これでよかったの?

なんともいえない、観終わった後のどっちつかずの感覚。
これを味わうだけでも、見る価値あり、と思いました。

(あと、音楽が好きです。妙に残るメロディーです。)

●「ルナシー」 ヤン・シュヴァンクマイエル/監督
これもやっと観れた。
他の作品より陽気なかんじで肉行進。
つーか、この人にとって、肉って何よ?(性欲?)
タロットカードの意味は全くわかりませんでした。
鼻を切る、は去勢を意味すると聞いたことがありますが。
哲学映画だそうですが、ふつうに観て楽しみました。
へたれた主人公の、自分の考えや行動の矛盾に気が付かない(ふり?)ところやきれいごとばかり信じようとする姿に終始いらいらします。
侯爵が裏キリストだとすると、赤毛のアバズレちゃん(と命名)はやっぱり、マグダラのマリアな役どころなんでしょうか。
教会の中での乱交シーン、キューブリックの「アイズワイドシャット」を思い出しました。

わけわかんないんですが、主人公よりも侯爵の言い分に共感してしまいます。
もう一回観ようっと。

●「いのちの食べかた」 ニコラウス・ゲイハルター/監督
友だちと都合が合わず、1人で鑑賞。
本当に観て良かった。牛・豚の・解体映像があるのでPGー12の規制がかかっていますが、家族で観るとよいような気がします。
嫌悪感を覚えようとどうしようと、自分自身が既に参加していること。
食べることは罪じゃないけど、忘れることはよくないこと、と思いました。
パンフレット、小さいのに600円で高いなあと思ったのですが、
映像にナレーション等がいっさいないのでわからなかった部分が解説されていて、
買って良かったと思いました。

この映画、アネムさん→mamaさん経由で知りましたが、
女の子の友だちに話すと必ず「観たい!」と言われます。
劇場もほとんど女の人ばかりたったなあ。
しばらく布教しようと思います!

あ、映画のあと、ひさしぶりに会った友だちとビールを飲みながら
生ハムをがつがつ食べました。おいしかった。
ごちそうさまです

●創作ノートINDEX
せっかく夏休みなので、家の整理をしつつ、ブログの整理もしました。
創作ノートINDEXというカテゴリに、今まで書いた案(あれを、童話とか小説というのは、なんともおこがましい気が・・・)などの目次を作りました。
奇しくも、最初の登場人物メモを作ってから2か月目。
当初ぼんやり考えていた、書いてみたいことが、だんだん自分の中ではっきりしてくるのを感じます。完全に、自己満足なんですが・・・
文章にしてみようと思ってから、他人の人生に俄然興味が湧いてきました。
自分自身、まったく経験豊富な人生を歩んでおらず、また「自分に激甘」な性質なので、友だちの波瀾万丈を聞く機会があると、ほんとうに感心してしまいます。
なんで、なんでそんなに自分に厳しいの?!と思う。
その、どうにもならなさが、手の出しようの無い「他の人の生き方」が、なんか妙に、面白い。
年、とったってこと??

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2 コメント

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うぁぁ… (アネム)
2008-08-17 23:59:36
「いのちの食べかた」自分で見つけといて、結局観れなかったのだ。
DVD早く出ないかなぁ。
いのちの食べかた (はる)
2008-08-19 12:00:35
mamaさん連絡網(?)により、
なぜかわたしだけが観た・・
衝撃的な映像というだけでなく、
その伝える姿勢にしびれるような、かっこいいドキュメンタリーでしたよ
きっとDVDになってくれるはず!
この監督さんの他のドキュメンタリーも観たいものです・・・

あ、この間ちょこっと話した「潜水服は蝶の夢を見る」、よかったですよ~
http://www.chou-no-yume.com/