晴手帖

読書感想・日々雑記

養命酒と銀河鉄道

2008年12月30日 | 日々のこと
今日は朝から大掃除、のはずだったのに、
連日出かけては食べ飲みしゃべり、はしゃいだ疲れがたまったのか、
まったく身体が動きません
クリスマスに買った養命酒を飲んで、今日はこたつむりです。
こんなとき、家にパソコンがあってネットがつながっててよかったなと思います。

さて、この間おはなしの案を書いてからしばらくフヌケ状態だったわたしを、
ガツンとぶん殴ってくれたものがあります。

●「銀河鉄道の夜」 ますむら・ひろし原案

子どものころ、従兄弟の家で見たなあ、ぐらいの記憶しか残っていなかったんですが、
改めて観て驚愕。
原作も何度も読んでいて、現在の版とブルカニロ博士登場版も読んで、
すっかり知った気になってたのに・・・

こんな物語だったなんて、知らなかった
今まで、「宮沢賢治」を見るときにかけていた色眼鏡が吹き飛んだ。

小学校時代から今まで、「宮沢賢治マニア」を自称する先生たちに
幾度となく賢治の素晴らしさを説かれて来たけれど、
肝心のその薦め手の先生たちの「タイプ」がどうも好きになれなかったのです。
多少の例外はあるけれど、みんな同じように傷付きやすくて(生徒にバカにされて職員室で泣いたりする)、「雨ニモ負ケズ」の内容をスポ魂アニメの美談かのように信じていて、賢治っていうのは、途方もなく美しい心の人間なんだ、
そしてそれを好きでいる自分もまた繊細で美しい心の持ち主なのだ・・・
という雰囲気(大幅にわたしの思い込み)がぷんぷんしていて、嫌でした。
つまり、なんかうさんくせーなあ、と思ってたのでした。

そのせいで、「宮沢賢治」に対する印象も、
「独特の幻想的な世界はかっこいいけど、なんかみんなが本当の幸せを求めていて、おりこうな子ばっかり出て来る話を書く人」
という、大幅に偏ったイメージでわたしの中に登録されていました。

(おおお~ もったいないことしたあああ!!!)

ますむら・ひろし版「銀河鉄道の夜」のシビアさは半端なかったです。
逃げ場ゼロ、生理的にくる物語でした。
27歳が観てもトラウマになりそうです。怖い。

でもそれは、不幸な子のお話だから悲しくて怖いんじゃなくて、
意地悪なザネリだって、他の子だって、この映画を観ている自分だって、
誰も変わらず本当はそうなんだ、「そうなるんだ」、
ということを暴力的に叩きこまれるからです。
銀河鉄道がやって来るシーンの恐怖は、キューブリックどころじゃないと思いました。

こういうシビアさというか本気さに、映像で見せてもらうまで、
何度本を読んでも気付きませんでした。

2回観ましたが、ひとつひとつのシーンにきっちり描き込まれたかなしさに、
ため息というか、なんというか、うう・・・となってしまいます。

意地悪な友だちには何も言わず、放課後は大人たちに混ざって無言で仕事をして、
家に帰れば病気のお母さんをいたわって、
全編とおして、ひとりぼっちのジョバンニが無邪気な子どもでいられたのは、
カンパネルラの前だけだったんだと思うと、かなり、苦しい。
カンパネルラにしたって、無邪気に慕うばかりのジョバンニを置いて行かなくちゃならない。
でもしょうがないんだ、いつまでもずっと幸せに、なんて甘い嘘だ、
うーん、わかってるけど、あきらめきれん、
そんな気持ちになる。
そして、ラストの「ほんとうの幸い・・・」で完全に置いて行かれる。
自分のエゴを突き付けられたような気がする。

汲めども尽きぬだなあ。
返すまでにもう一回観よう。

ところで、田中真弓(ジョバンニ役の声優さん)好きだわ~
元気な役が多いけど、脆そうな役のほうがたまらんなあ。

それと、mamaさんに雰囲気が似てると言われた「牛乳屋のマントのおばあさん」。
てっきり、まあ自分を美化しすぎかもしれないけど・・・
「牛乳屋のマントの(やさしそうな)おばあさん」だと思い込んでいたら、
「牛乳屋のマントの(かなり怪しい)おばあさん」でした。

でも納得。顔も似てる
そのシーンだけ何度観ても笑ってしまいます。

スープみたいな

2008年12月16日 | 読書・映画三昧
おお、前回の更新からもう1ヶ月経とうとしている!

何をしてたかっていうと、仕事してたんですよ~ほんとですよ~

でもまあそんななかでも、読書は欠かせないわけで・・・
そして相変わらず、雑食だ。マンガも読んだ。

●「絢爛たる影絵-小津安二郎-」 高橋治・著

mamaさんオススメ・「東京物語」の助監督が書いた小津安二郎の本。
超ーーーーーー面白い。
どう面白いかって?読んでください。
「東京物語」を観た後で。

この間の出張先で入った本屋、DVDが20%オフセール。
思わず「晩春」を購入。まだ観てない。
フランコ・ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」も買って、
2本で2000円、ばんざーい

●「綿の国星」全4巻 大島弓子

ずっと気になっていてようやく読んだ。
ああ・・もっとはやく、読みたかった・・・!!!
猫は人の言葉を理解してるけど、人には猫の言葉はわからんのです。
だからいつも、人は猫に観察されているのです。

猫のカワイイとこしか見ないで、エサを与えすぎたり、
あげくに手に負えなくなって捨てちゃうような人たちが出てきます。
その描き方に、作者の並々ならぬ怒りを感じる。
そこが好き。

●「駅から5分」1・2巻くらもちふさこ

ある街の駅から5分圏内で起こるエピソードが、
多人数複数視点(うっとり)で展開していくマンガ。
くらもちふさこさんのマンガは初めて読んだけど、
絵柄がキビシイな~!
かなり個性が強いというか、表情が読み取りにくいというか。
慣れて愛着持てるまで、3回は読み直しちゃったよ。
でも面白い。
クジャクファッション(姫)の女の子・水野さんが好きだ。
なにしろ、彼女はトイレで化粧する。

●「赤めだか」立川談春

最近落語が気になってしかたない。
これは立川談志の弟子・談春さんの本。
講談社エッセイ賞だかなんだかをとっていた。
談春さんより、談志の行動・言動のすべてが面白い。
セリフを全部抜き取って書き写したいぐらい!
「落語は人間の業(ごう)の肯定だ」
業の肯定・・・
「東京物語」を見ていて、どうにも言葉にならなかったことを言い当てられたかんじ。
あの映画、せつないし、つらいところもあるけど、
人間の業を否定してなんかいない。
だからちゃんとあったかいし(共感できるし)、救われるんだと思う。

●「アタゴオルは猫の森」ますむらひろし

急に、ちゃんとますむらひろしのマンガを読みたくなって。
でもどうやらこれ、なにかの続編みたいなのよね・・・
ちゃんと本編が読みたいよ。
ヒデヨシはうちのモカです。間違いありません。

●「数の悪魔」エンツェンスベルガー・著

わたしが高校生のころ(つまり10年以上前?)話題なっていて、
人生最後の数学のテストが「5点」だったわたしの脳内に、
ずーっとひっかかっていた本だった。
(数学が面白くなる・・・ほんとに?ほんとに??)
思えば、数学が関わってくる小説はたくさんある。
大好きな「不思議の国のアリス」は作者が数学者だし、
ずいぶん前に読んだ「博士の愛した数式」は主人公が数学者、
最近読んだ「容疑者Xの献身」も容疑者Xは数学の先生だ。
理系が文系かといわれれば、わたしはもうヒャクパーど文系能だけど、
数学が出てくる小説はドキドキする。
「数学は美しい」といろんな人が言うのが、小説の中ではわかるような気がする。
というかわかりたい。そんなに面白いものがあるなら、ちょっとでもわかりたい~!
もしかしたら、もしかしたらこんなわたしでも、
算数とか、数学とかを、好きになれるのでは・・・
そういう小さな小さな望みをたくして買ってみた。
毎晩お風呂で1話ずつ読んで、風呂上りにノートに「フィボナッチ数」を
書き写したりて遊んでから寝る。地味・・・でも楽しいからよいのです。


●「国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて-」佐藤優・著

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出版社/著者からの内容紹介
『自壊する帝国』で第38回大宅ノンフィクション賞受賞した佐藤
優、衝撃のデビュー作。外務省、検察庁、永田町を震撼させ「国策捜査」を日本
中に知らしめたた告白手記!
外務省元主任分析官は、政治と外交の最前線で何を見たのか?
有能な外交官にして傑出した情報マン──。国を愛し、国のために尽くしたにも
かかわらず、すべてを奪われた男が、沈黙を破り、「鈴木宗男事件」の真実と、
「国策捜査」の実態を明らかにする。
「背任」と「偽計業務妨害」容疑で逮捕され、東京拘置所での拘留生活は、なん
と512日にも及んだ。2005年2月に下された第一審判決は懲役2年6カ
月、執行猶予4年。しかし、男の闘いはまだまだ続く──。

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はい、まったく今までのわたしの読書傾向と違いますね。
なんで読み始めたか。
先月号の「編集会議」が恩田陸特集で、そこで恩田陸が薦めていたからです!(ミーハー)
だって、好きな作家の薦める本が、面白くないわけないじゃないか!
こうして読書ツリーは枝を広げていく・・・はず。

デビュー作のせいか、ちょっと読みにくい?ところもあるけど、読ませます。
毎日通勤があっちゅう間。ありがたや。

何が真実かなんてもちろんわかりゃしないけど、
ワイドショーや週刊誌の中吊り広告で刷り込まれる、
「誰にでもわかりやすいように構成し直されたお話」で満足して、
自分の意見も見解もないくせにあーだこーだ批判はするような人になるよりは、
1冊ぐらい本でも読んでみて、自分なりにじっくり考えてみるのもいいんじゃないかと思う。
面白いし。

●「古事記」

mamaさん宅から、奪い取って(?)きた。
ちょこっとずつ読んでるんだけど、これはすごいよ・・・
とんでもないファンタジーな世界。
そして、エロ~ 

「わたしにはどうしてもふさがらない穴がある」
「わたしにはよけいな突起がある」
「ではわたしの突起であなたの穴をふさいでみよう」

・・・てなことで、日本は生まれたらしいです☆

●「ポテト・スープが大好きな猫」
テリー・ファリッシュ 作/バリー・ルート 絵/村上春樹 訳

大版の絵本で出ていた絵本が講談社文庫になっていた。
ずっと表紙の絵とタイトルが気になっていて、
買おうかどうしようかと思っていたから、ラッキーと思って買ったけど、
読み終わったら後悔。

・・・大型の版型で買うべきだった!!!

舞台はテキサス、登場人物ははえぬきのテキサスっ子であるおじいさんと、
年をとった雌猫。
翻訳してくれたのが村上春樹だったことにありがとうと言いたい。
おかげで、消え入りそうなぐらい控えめなこの本が、
ウチの近所の品揃えの偏った本屋でも手に入りました!

(余談・この本をレジに持っていったら、本屋のおばちゃんに、
「あらっ この本、薄いのに高い(500円)わね~!」と言われた。
元絵本だからね。安くしてくださいよう。
「よくこんなに薄い本見つけたわね!」とも言われた。
薄くたっていい子なんですよ!とかばってやりたくなった。)

ボール紙かクラフト紙か、黄土色っぽいベースに描かれた明るい絵が、
「テキサス」の乾いた空気を感じさせてくれる気がする。
(行ったことないけど!)
それから、1人暮らしのおじいさんの家の中の、細かなディティールがたまらない。
大きな花柄の、だっさいティッシュボックス
(きっといつもの店でいつもおんなじのを買ってるんだろう)や、
古めかしいダイヤル式の電話
(きっと電話なんか滅多にしないんだろう)、
流しにたまった洗い物の生活感、
おじいさんのじゃがいもの皮のむき方の荒々しさ
(得意料理らしいけど、ひょっとしてこれしか作れないのでは??)、
年とった雌猫(シャンプーなんか絶対しない)の、ちょっとパサついた毛皮のぐあい。

とにかく見ていて「ああ~、わかる!このかんじわかるよ~!」と、
誰かに言いたくなる。

目だった事件は何一つおこらない毎日。
でもおじいさんと猫にとっては心から離れなくなってしまうような、ある出来事が起こる。
その出来事のあと、何もなかったようにおじいさんと猫は暮らしていく。
でもたしかに、前よりもお互いを、ほんのちょっと大事にしようとしていると思う。

ほんとに、こんなにささやかな物語を、しっかり時間をかけて、
それこどスープを作るみたいに絵本にしてくれた、そのことに「ありがとう」と言いたいです。

はっ わたしって、地味な話が好きなんだろうか・・・