晴手帖

読書感想・日々雑記

映画ざんまい

2008年04月27日 | 読書・映画三昧
今週は映画ばかり見ていたなあ。

●「ルートヴィヒ」 ルキノ・ヴィスコンティ

3時間以上の超大作!

全く前知識の無いまま見始めて、どうやらバイエルン王国の話らしい、
と気が付き、ビデオを止めてwikiでお勉強しながら見ました・・
そんな勉強なんかせずとも、素晴らしく豪華なセットと、ルートヴィヒ2世を
めぐる人々を見ているだけで楽しめたんですけどね。
一気に観られなかったので、4晩続けて鑑賞。
そりゃあもう、見終わるころにはルートヴィヒが知り合いのようにさえ
感じました。
王族の没落のストーリーではあるものの、描かれているのはとても繊細な、個人的な感情だったからかもしれません。
ルートヴィヒ、王位継承者でなければ、ちょっと変わった芸術家パトロンとして
皆に愛されたかもしれないのに。
完璧でなくてもいいから、誰か一人ぐらいルートヴィヒと向かい合っていれば、
ああいう結末にはならなかっただろうに。
みんなで殺したようなものだと思う。

映画を観ていて、こんなに「一人の人間が今、死んでしまった」という思いを
したのは初めてだったかもしれない。

●「美女と野獣」 ジャン・コクトー監督
まさかの500円で、DVDを購入。そうか、著作権が切れてるのか・・

ベルが初めて野獣の城へ入って行くときのスローモーションの映像に感動。
ベルのドレスもいちいち美しくてため息です。
それと対照的に、いじわるお姉様たちの着飾り衣装はまるでピエロのよう。
お姉様たちのいるほうが「現実」の世界のはずなのに、なぜかちょっとずれている
ところが皮肉が効いてるなあと思いました。

●「オルフェの遺言」 ジャン・コクトー監督
「オルフェ」と間違えた~~~
でもせっかくなので、最後まで観ました。
コクトーさんって、変な人だと思いました。
次は間違えずに借りよう。

●「ラビリンス」 ジム・ヘンソン監督
「ダーク・クリスタル」と交換で、友だちに借りました。
面白かったー ファンタジー観たー 
でも出来ることなら小学校5年ぐらいで観ておきたかった!
そしたらかなり夢中になっただろうに!
14歳のジェニファー・コネリー、すでに美しい。
この映画でデヴィット・ボウイが好きになったといったら、往年のファンの
方は怒りますかね・・
ダーク・クリスタルと同じくメイキング映像が入っていて、これも楽しめました。
全部ゼロから作ってるんだから、無駄なものなんてあるはずもない。

●「恐るべき親たち」 ジャン・コクトー監督
近所のレンタル屋には、「子どもたち」がなくて、これがありました。

喜劇であり、悲劇であり、心理スリラーともいえる。
つまり、面白かったです。
「美女と野獣」と同じ主演コンビでしたが、全く違った雰囲気。
ジャン・マレー演じる超絶マザコン男が、気持ち悪くも美しくも見えて不気味。
エゴだらけでどうしようもない大人たちと、彼らによって永遠に損なわれた子ども。現代ではよくある話だけれど、60年も前の映画でこんなに辛口に、でも重々しくなくさらりと描かれていたことに驚きます。

ジャン・コクトーというと「なんか耽美なかんじ?」ぐらいのイメージしか
ありませんでしたが(最近、自分のこういう貧困な偏見にウンザリします・・)
こんなに面白かったなんてなあ。
まずは近くのレンタル屋にあるだけ、追っかけてみようと思いました。

少女小説

2008年04月27日 | 読書・映画三昧
これも時間が経ち過ぎて、記憶が曖昧になりつつありますが、
記録のため・・

●「ずっとお城で暮らしてる」シャーリー・ジャクスン/著(アメリカ)

魔女と呼ばれた作家による、1962年に刊行された小説。
集団毒殺事件の起きた資産家一家の生き残り姉妹の物語。
登場人物はごく少なく、メリキャットとその姉コンスタンス、
ジュリアン伯父さん、従兄弟のチャールズ、
そして、村人たち。

その全てが、メリキャットという少女の一人称で語られるが、
この一人称が、とても怖い・・
メリキャットは18歳と言う設定だけど、ずっと家族だけの閉じた世界で
暮らして来たため、とても幼い。
彼女にとって、世界は勧善懲悪(善は家族、悪は外の世界とその住人)で、
毎日、悪を退けるために独自に作ったルールに従って生きている。
「効力」のありそうな品物を土に埋める、
結界を作るために(村人が入ってこれないように)庭の木に本や金の鎖を
釘で打ち付ける、
長細いものを見たら、ジュリアン伯父さんに優しくする
・・などなど。
嫌なことが起きないように、彼女なりに真剣に行動している様子が
何度も描かれる。

彼女の視界はあきらかに狭く、偏って、歪んでいる。
こういう人物の一人称を読むと、なんとも落ち着かない気分にさせられるが、
なぜ落ち着かないかというと、それは多分、自分自身が、いろいろな人/環境に研磨される前は確実にこういう人物・・つまり子どもだったことを思い出させるからではないかと思う。
横断歩道の白いところ以外を踏まないようにしたり、靴下を絶対に右足から履くようにすることで、「何かとてつもなく嫌なこと」を回避しようとしていた自分を思い出す。
大人から見たら、何の効果もないバカバカしいことをせっせとしていて、
「子どもは無邪気だな」なんて言われたりしたけれど、果たして本当にそれは
効果のないことだったのか?結局私には「何かとてつもなく嫌なこと」はまだ起きていないので、今のところなんとも言えない。

多くの人は(自分もそうだけれど)年齢を重ねるにつれてそれなりに環境(現実ともいう)に適応していくものだと思うが、メリキャットの世界は壊れない。
生き残ったメリキャットたちを殺人者扱いし、遠ざけ、嘲笑い、羨望と嫉妬の
入り交じった悪意で接する村人たち、自分が普通だと信じて疑わない人たちの
個人名の無い悪意にも、メリキャットの世界は壊せない。
メリキャットの視線は、自分がとうに忘れてしまったもの、故意に忘れたふりを
しているものを洗い出して見せつける。

映画化してたら、淀川さんが「こわ~い、こわあああい映画です」と紹介しそうな
そんな小説でした・・
後味の悪さが最高です。

●「聖少女」倉橋由美子/著

ざっくり言ってしまえば、父と娘の近親相姦が描かれた物語。
だけど、話題性だけが先走りした中身カラッポの恋愛小説なんかでは全くなく、
読み終わって疲労感を感じるほどでした。
これが1964年の小説~?!

いろいろ考えてしまい、まだ感想がまとまらないので、別のことを。

1964年というと、安保闘争がひと段落したころらしい。
主人公の一人、Kも学生のころ「アンポ」に「コミュニスト」として活動していたという設定になっている。
それにしても・・
当時の大学生って、こんなに本を読んでたの??
大学で勉強している様子は描かれてないけれど、
哲学書や小説や、それに影響を受けまくっている様子がたくさん出てきます。
確固とした自分の思想があるというより、もうすっかり「かぶれちゃってる」
様子が、生意気でなんとも面白い。
この時代のことを、もっと知ってみたくなりました。
そうか、ちょうどわたしの両親の世代だなあ。
そういえば、主人公の未紀が、日記の中で「私の好きジェラール・フィリップ・・」と書いているところがありました。
他にも未紀は当時のフランス映画に影響を受けている様子があります。
ちょっと早い「オリーブ少女」みたいなものだろうか・・

小説の内容とは別に、(もちろん小説の内容と切っても切れないけれど)
わたしの知らない1964年を疑似体験させてくれた本でした。
もう少し考えがまとまったら、また記録しておこう。

ペーパー・ムーン

2008年04月23日 | 読書・映画三昧
●「ペーパー・ムーン」
出演: ライアン・オニール, テイタム・オニール, マデリン・カーン
監督: ピーター・ボグダノヴィッチ

10年ぶりぐらいに観た。
こんなにいい映画だったんだ・・

高校生のころ、
「映像科に行きたいから、とにかく映画を観るんだー有名そうなやつを!」
と思い立ち、近所のレンタル屋(安かった)にほぼ毎日通っていたころに観た1本。

当時はやたら見たのに、やっぱり子どもだったので理解できなかったものも多く・・
妙に記憶に残ってるのは今でも好きな「シャイニング」とか「まぼろしの市街戦」とか「みつばちのささやき」とかぐらい?
「ブレードランナー」もこのころ観たっけ。

「ペーパームーン」はわかりやすかったけど、さらっと観終わってしまった記憶がありました。
でも今回観たら、すっかり「モーゼ目線」になってしまい、かわいくないアディがかわいくてかわいくて・・

二人のやりとりや仕草に、爆笑はしないけど、何度もくすっと笑ってしまった。

30年代の音楽にのせて、いくらでも「泣ける」映画に出来そうなのに、
徹底的に感傷を排除した手法が「おしゃれやの~」と思う。
ピントを細部まで合わせたモノクロの画面も、甘ったるくなくてかっこいい。
甘ったるくないから、余計アディの孤独さ、ラストの嬉しさが際立つのかな。

特典の、監督の解説も面白かった。
当たり前だけど、映画って全部作り物なんだよなあ。
知らないうちに、作り手が仕掛けた巧妙な罠に引っかかって、その世界に引きこまれていく。
今感じている自分の感情は、作り手によって引き起こされた魔法なのかと思うと・・

いや~映画って、いいですね!(誰だ)

竹ざんまい

2008年04月23日 | 日々のこと
なんだかんだと忙しくて日記を書けずにいるうちに、
いろんなことがあったのに、だんだん忘れてきてしまった・・
健やかな証拠だろうか?

●水墨画教室のこと
先週土曜、前日にたんまりビールを飲んで家に帰れなくなり、
浜町の友人夫婦のお家から、初めての教室へ。
(どうしょもない・・いつもありがとうね~!!
 今度、おいしいものたくさん仕入れて持って行きます!)

またまた恐ろしく緊張しながら教室に入ったら、
先生だけでなく生徒さんからも、びっくりするほど大歓迎していただけました。
先生が「あなた、そのお年で水墨画を始められるのは、大変すばらしいですよ。やればやるほど面白くなりますから」とのこと。
(どうやら、わたしが最年少のようです)

他の生徒さんは「梅に鶯」を練習されていましたが、
私はまずは筆の下ろし方、墨の作り方、筆の作り方から・・
む、むずかしい・・

「本で読まれても、全然わからなかったでしょ?」

「は、はい・・墨の加減や筆の動かし方なんかが全くわからなくて」
(筆に水をふくませる)

「それは当然ですよ。みなさん工夫して本をお書きになるが、
本当のところ、本には書ききれないことばかりなんですよ」
(筆をしぼる)

「はあ・・そ、そうなんですか?」
(薄墨をたっぷりつける)

「ええ、それで、この授業のいい所はその本に書ききれないところを
僕が長々としゃべってしまうところにあるんです。いっぱい聞いておいてくださいね」
(しぼる)
「は、はい!」
(中墨つける、しぼる・・)

最初に習ったのは「竹」でした。
というか、この1回は竹(の幹)しか描かなかった、いや描けなかった!
何枚描いても竹というより、何これ、エノキ?
何だ~ 何が違うんだあああ
あまりの自分の下手さに、顔は紅潮、脂汗が出てくる・・

するとやさしそうな若い生徒さんが、
「竹って一番難しいんですよ」とにっこり。
もう1人の若い、きれいなお姉さん風の生徒さんも、
「私なんかこれ、50枚描いたんですよ!」と。

ああ、このかんじ、小学校低学年のころみたい
私はとにかく、体育でも図工でも、やることすべて一番ビリだったので、
頭のいいやさしい子たちが根気良く励ましてくれたんでした。いい時代だったなあ。
こんな器用そうなお姉さんが50枚描いたというなら、わたしは倍、
いやその倍は描き続けないとダメなのでは??

結局、授業が終わっても「竹」にはならず、ああ、初回ってこんなものか・・
と思っていたら、先生がこうおっしゃった。
「最初だから根気良くやりましょう。つかめるまで描きましょう」と。
延長すること30分ぐらいか?
ようやくちょっとまともに描けるようになったところで、終了。

なんだろう、「レイアップシュートだけを練習する桜木」のような。(古い・・)
先生は、「描けてますよ、よくがんばりましたね」とおっしゃいましたが、
持ち帰った先生のお手本を家で改めて見て衝撃が走りました。

た、竹だ・・!!!
あんな、一筆でススっと描いてただけなのに、遠くから見ると、まるで精密な
デッサンみたいな竹だ~~!!
こりゃあ印象派も抽象画家もビックリですな。

水墨画、すげえ。

次の授業まで1ヶ月。
時間を作って竹ざんまいじゃ。

自己満足

2008年04月14日 | 日々のこと
覚えたての「鶴」を折るぐらいしか利用できていなかった、
いせ辰の千代紙。
ほんと、すまない・・

さっき、ふと思い立って作ってみました。
ブックカバー!


「江戸千代紙」の解説に、姉様人形のことが書いてあり、
"千代紙はどこをとって合わせてもよく合い、合わせ方によっていろいろ楽しめる"
とあったので、いつかやってみたいと思っていたのでした。

千代紙セットを引っ張り出し、あれやこれやと柄合わせを悩むのは楽しかった~
合わせる柄や分量で雰囲気がガラっと変わるけど、なんとなくこれもあり?になるのは老舗の千代紙の柄の良さのおかげでしょうか・・

ちなみに裏に先月漉いた無地の和紙を貼付けて補強。
どうしてもしおりが欲しかったので糸をはさんで作った和紙を切り取ってはさみました。フル活用!
ついでに切り抜いた猫もペタっとな。

しかし和紙って、おそろしく丈夫なんですね。
そのまま手で裂こうとしても全然びくともしない。
昔の人が、紙で防寒用の服を作ったのも、和紙だからこそだと思われ・・

これが裏。
これは合わせる柄、失敗。



今度はもうちょっと切り替えの多い、かっこいいのを作りたい!
千代紙だと不器用が目立たなくて嬉しい

カバーの横っちょにあるのは、「パタパタする鶴」です。
作れましたよーー!