覚書あれこれ

かつて見た映画、かつてやったマイナーゲームなどの覚書と単発ラクガキなどなど

『バジル氏の優雅な生活』

2008年05月13日 | コミック詳細

『バジル氏の優雅な生活』坂田 靖子 コミック全?巻/愛蔵版全3巻/文庫版全5巻


●ワンポイントあらすじ

時はヴィクトリア朝、所は英国、社交界一のプレイボーイ、主人公バジル・ウォーレン卿の周囲には、常になにかしら事件が起こっています。(意外と巻き込まれ型主人公なのです)。
バジル氏がそれらの事件を捌く鮮やかな手腕の数々を四季折々の英国情緒と一緒にお楽しみ下さい。全話一話完結。


●お薦めポイント

わたくし、ほんとうにこのシリーズが大好きなのです。愛蔵版の他に文庫版も持ってるくらい(オマケに、文庫版は保存用にもう1冊ずつ買おうかとまで思ってる)。
あのモノローグの少なさ。ギリギリまで不要な言葉を省き、心理描写も省いた、淡々とした語り口。それでいながらきちんと登場人物たちの気持ちや心のうちを読者に分からせてしまう手腕たるや神業です。漫画と言うより、上質の映画を見るような感じ。一見無味乾燥であっさり風味に見えますが、読み終えたあとにクルのです。
それぞれの登場人物に向けられる暖かい視線も良い。かっこいい人や完全無欠のヒーローなど一人もいず、全ての登場人物がすべからくその辺にいそうな普通の人で、その人たちの普通の喜びや悲しみがぽつぽつとつづられます。一話読みきりがたくさん詰まっているので時には悲しい終わり方のものもありますが、たいていはほのぼのと心温まるような結末ですし、悲しい終わり方を迎える物語も、じんわり心に染み入るようなお話ばかりです。なんとも大人向けの漫画。

一度読んで面白くなくても、是非2度3度と読んで欲しい!

 

英国好き・名探偵好きのあなたにもお薦めしたい。ヴィクトリア朝に浸れます。メイドもわんさか出てきますし、社交界も執事も、馬車も、シーズンオフのカントリーハウスも、警視総監も出ますよ!『エ●』もいいけど、これも良いぞ!
言い回しもウィットに富んでて素敵です。きっと作者はヴィクトリア朝の文学が大好きに違いない!いちいちの台詞に「うまい!」とうなってしまいます。個人的に『スキャンダル・クラブ』の、明るいクラブの風景を背景に語られる

「ノーフォークのシーモア卿が18回目の家出をしたよ」
「ついにやったか!!」
「――で、今回の家出の理由は?」
「奥方に平手で打たれた。――3度」
「すばらしい」

の一連の台詞運びがお気に入り。
お話では『月の階段』『ランスロットの遺産』『夢の木馬』『夢見る頃を過ぎても』辺りが特に好きです。
BBCさん、ドラマ化してくれないかしら…


 

●難点

ただ、連載初期の頃は絵がまだ安定しなくてかなり見づらいです。見づらくても、2巻目辺りには見やすくなりますから、頑張って読み通してください。あの簡略化された絵であるにも関わらずバジルさんがかっこよく見えてきたらアナタも坂田中毒者の仲間入りです。
また、わたしはああいう自分の意見を声高に叫ばない言葉少ない作品が好きですが、もっと心理描写が書き込んであるほうが好き、という方には物足りないかもしれません。こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたいですが…なるべく行間を読むのじゃよ、皆の衆!!

 

 

●キャラ語り

 大抵わたくし、娯楽本を読んでいるときは、その本の中でマイ・アイドルを作り、キャラ萌えもしつつ読むのですが、この作品に関しては珍しく話の流れや雰囲気でもうおなかいっぱいなのです。
あえて言うなら真面目で不器用なウォールワース議員が好きかな。
バジル氏曰く「彼はあの固いところが面白い」のだそうで(全く同感です)。
同感といえば、『ロンドン橋』の中で語られるバジル氏の学問に対する考え方も、まさしくわたくし同感でございました。
また他に、バジル氏の語る、「好きになった女性はすれ違っただけでも忘れない」の台詞も、これまたわたしの中で燦然と輝く名言です。(そのうちバジル氏名言集でも作ろうかしら…)

 

コミック目次へ

HPへ


最新の画像もっと見る