予報は雪だった。
大阪では珍しく本当に降った。
どうせ降る降る詐欺でしょう、同僚との他愛のないLINEはいつものこと。
さすがに自転車通勤は諦めてバス停へと向かった。
大きな黒い傘の先客。会社員にも学生にも見えた。
なぜか彼は停留所の正面には立たず少々ずれた場所に立っていた。
このままバスが来たらきっと後から来た私が優先的に乗車することになるだろう。
割り込むつもりなど全くない私にとってはなんだか理不尽に思えた。
しばらくすると男性の待ち人らしき人物が登場。
どう見ても高校生、若く見積もると中学生に見えなくもない。
「お前ぇ〜ギリギリぃー!」
その話しっぷりは今までの彼の佇まいからはかけ離れた子供っぽいものだった。
大きな傘とマスクで見抜けなかった。
ギリギリどころかバスはなかなかやって来なかった。
2人が校庭さながらに傘を振り回しながらふざけあうまでに時間は十分あった。
2人と私、それにもう一人若い会社員、雑貨屋店主風の女性が1人。
皆が代わる代わるバスがやってくるはずの方へ首を伸ばす。
ルーフに5cm、10cmと積雪を乗っけた車が次々と通り過ぎる。
幸いじっとしていられないほどの寒さではない。
後10分来なければ駅まで歩こうか、いやこの慣れない雪の中30分歩くのは辛い。
どうしたものかと首をかしげたところへバスが来た。
稀にみる混みようで、ドアステップギリギリまで人でぎっしり。
密だった。
さすがにみんながマスクをして黙り込んでいた。
この状況ならと大人しく従った。
10分ほどの我慢大会。
メガネも窓ガラス、思考まで曇ってぼんやり。
いっその事積雪で電車も止まってくれ、そうすれば・・・と顔に書いているいくつもの顔。
意に反してやはり大阪の雪は冷やかし程度だった。
雪下ろしの苦労は想像を絶するだろう。
さっさと頭を切り替え、空に感謝し仕事へと向かう事だ。
そんなちょっといつもと違う朝だった。