Puboo公開、第8作「アゴのいる海」をアップした。
昭和49年、長崎の街は、恐らく史上かつてない賑わいを見せて
いた。丸山が完成し、料亭花月が創業したのが、1642年のこと
だから、約333年ほど経った歓楽街は、驚くほど刺激的だった。
思案橋の通りは人で溢れ、金曜日ともなれば丸山界隈にある
キャバレーでは競うように「Golden Show Time」が開催された。
バーブ佐竹、ピンカラ兄弟、青江三奈・・・と、当時の一流どころ。
中でも、主人公弘明のバイト先は、思案橋の目抜き通りにあり、
ホステス250名が所属、客は1000人が入った。フルオーケストラが
入るステージに、20-30人は踊れるダンスホール、広大な店だった。
階段状のボックス席が埋まると、ベテランのボーイが銀盆にビールを
満載して登場。下段に20本、中段に12本、上段に6本、たしか
そんな重ね。1本500gとして19kg、片手で持ち階段を降りた。
バイトとはいえ、20歳を過ぎたばかりの青年弘明に取っては、
めくるめくような毎日だった。そしてそこで出会った前座歌手。
ある意味、互いの幼さを補い合える、つましい恋の間柄だった。
やがてくる時の節目、否が応でも現実が、2人の前に立ちはだ
かり、怯み、脅え、目を逸らし、やがて取り返せない別れがくる。
青春の1ページ、酸っぱいというには、辛い現実となっていく。
弘明の青春の最後である。多分にマスターベーションの世界ながら、
歴史の間に埋もれさすには忍びない、長崎の良き時代を書き
こんだつもりである。同世代の琴線の一端にでも触れれば幸い。
三神工房