【IAEAは中立か】福島第一、第二原発津波の高さ14-15メートル | 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
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2023年8月21日 【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント | 国際環境NGO FoE Japan
2011年4月10日 福島第一、第二原発津波の高さ14-15メートル | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 (jst.go.jp)
福島第一、第二原発津波の高さ14-15メートル
東京電力は9日、初めて福島第一原子力発電所、同第二原子力発電所を襲った津波の規模に関する調査結果を公表した。
今なお、被害の応急対応に追われる福島第一原子力発電所では、海水面から14-15メートルの高さまで津波が浸入、海水面から10メートル高い場所に建つ1-4号機の主要建屋(原子炉建屋とタービン建屋)の海側面で4-5メートルの高さまで浸水した。主要建屋の海側、海面から4メートルの高さの敷地に設置されていた海水ポンプは完全に水没した。
福島第一原子力発電所の防波堤は最大5.7メートルの高さの津波しか想定して造られてなく、津波はやすやすと乗り越え、浸水個所はほぼ全域にわたった。
一方、福島第二原子力発電所では、主要建屋が海面から12メートルの高さに建っている。津波は第一原子力発電所同様14-15メートルの高さまで浸入したものの原子炉建屋とタービン建屋は1、2号機の周辺と3号機の南側が2-3メートル浸水しただけで済んだ。海水ポンプは海面から4メートルの高さの海側エリアに設置されていたが、海水熱交換器建屋の中に入っているため、建屋は4メートル浸水したものの海水ポンプの水没は免れた。
福島第二原子力発電所は1-4号機すべてが地震によって自動停止し、一時1-3号機の原子炉除熱機能が失われる事態も生じたが、その後、回復し現在、原子炉はすべて冷温停止の状態にある。
封印された原発事故の本質 ? 集中立地と連鎖のリスクに注目を(塩谷喜雄 氏 / 科学ジャーナリスト)
2012.09.11
3・11から1年半以上過ぎても、福島原発事故の「本質」に対する疑問と疑念はいっこうに晴れない。
どう壊れ、破損や障害がどのように拡大・進行して、隣接する4基の原発が、連続して致命的に損壊するという、世界に全く類例のない「同時多発の過酷事故」に至ったのか。
福島原発事故の「骨格と筋道」を、私たちはいまだに全く知らされていない。
2012年7月には政府、国会、民間、それぞれの事故調査委員会の報告が出そろった。容疑者が事件を捜査してみせるという奇怪な構図の東電の事故調も含めて、4つの調査報告が公表されている。残念ながら、4つの事故調報告をいくら読んでも、私の脳に染み付いた黒い疑問は、縮小も消滅もせず、逆に拡大・増殖し始めている。
責任回避の言い逃れに終始している東電の報告書を除けば、他の3つの事故調報告はいずれも、巨大事故の断面をいくつか鋭く切り取ってはいる。しかし、肝心要の事故の本質には迫っていない。これらはみな調査の「結論」とは言い難く、本格的な事故調査の出発点、序章と解釈すべきではないか。
3つの事故調報告を踏み台にして、強力な権限と調査機能を備えた「第2次事故調」を早急に発足させるべきだと思う。チェルノブイリの真実は、強権的な政治とコンクリートで固めた「石棺」によって、半永久的に封印され、世界は教訓と経験をきちんと共有していない。フクシマでもそれを繰り返すなら、日本は旧ソ連以下の秘密国家とみなされるだろう。
4つの事故調の報告に共通して希薄なのは、日本の原発の地理的、構造的、社会的な特性についての基本的な理解である。
日本の原発はみな、白砂青松の海岸線に、比較的コンパクトに集中立地している。欧米の原発は内陸の大河のほとりに、巨大なクーリングタワー(河川水を使って原発の余熱を大気中に逃がす装置)を伴って散在している。日本の原発は発電に使わない余った熱を温排水として海に捨てている。
この小さな列島に、世界で起きるマグニチュード(M)4以上の地震の4割が集中する。とてつもない地震列島である。過去1,000年以上地震の記録がない内陸の安定した岩盤の上、流量の安定した大河のほとりに建つ欧米の原発とは、風景だけでなく、地震・津波などの震災リスクも段違いである。このことを肝に銘じておきたい。
海岸台地の狭隘(きょうあい)な土地に、いくつもの原子炉が軒を連らねる異様な集中立地が、日本の原発の最大の特徴だ。東電が再稼働を目指す新潟県の柏崎・刈羽原発は7基もの原子炉が並び、出力合計で世界最大の原発サイトとなっている。
2007年7月に、同原発が中越沖地震で被災し、大きなダメージを受けた時、国際原子力機関(IAEA)の調査団が、おっとり刀で駆けつけ、海岸から原発サイトに入った。福島第一の巨大過酷事故でも、IAEAの天野之弥事務局長が事故直後の混乱のさなかに、放射線の計測チーム引き連れて急きょ来日した。
核不拡散のためのIAEAによる査察を進んで受け入れ、その活動資金の3割近くを拠出している日本。IAEAの優等生と言われた日本の原発事故に対する、いささか大げさなIAEAの組織的対応の背景には、地震列島の海岸線に集中立地する日本の原発の震災リスクについて、欧米が抱いている厳しい評価があることは疑いない。
原発の集中立地で、原子炉と核燃料というリスク要因の過密な集積が進み、足し算ではなく、掛け算で過酷事故のリスクを高めている。欧米の専門家が抱いていたその危惧が、今回、福島第一で不幸にも的中した。まずは日本的集中立地と4基連続過酷事故の関係を解き明かすのが、事故調査の原点であり、出発点であろう。
海岸の土地の多くは、砂や堆積土で分厚く覆われている。かなり掘り込まないと、原子炉を据え付けられる固い岩盤は現れない。岩盤の位置が低く、原発プラントの設置位置の海面からの高さが十分得られないため、岩盤の上に分厚くコンクリートを流し込み、その上に原子炉を据え付けた例もかなりある。福島第一もそのケースである。
流し込んだコンクリートの塊を、「マン・メイド・ロック=人工岩盤」と呼ぶ。福島第一ではその厚さが7〜8メートルにも及ぶという。メルトダウンして格納容器をも突き抜けたとされる1〜3号機の炉心核燃料が、まだ敷地外にメルトアウトした兆候が見られないのは、この人工岩盤の分厚いコンクリートのおかげかもしれない。まさにけがの功名である。
同じ程度の揺れと津波に襲われた3つの原発、東北電力・女川原発、東電の福島第一、同第二原発を比較すると、連続過酷事故を起こした福島第一は、プラントの設置位置の海抜が2〜4メートルほど低い。厚さ8メートルの人工岩盤をかましてもなお設置位置の海抜は低く、巨大津波に耐える高度は得られなかったということではないか。
3原発の比較で、もう一つ重大な事実は、過酷事故を起こした福島第一の1〜4号機は型が古い上に、みな運転開始が1970年代という老朽原発であることだ。いずれも、配管、炉心の構造物、冷却システムなどの経年劣化や構造欠陥が、何度も指摘されてきた「札付き」の原発である。
東電が米国のGEから直輸入した1号機などは、緊急対応マニュアルのまともな日本語訳もなかったといわれる。大陸の安定した内陸地盤に設置することを前提にしたこの「マークⅠ型」の原発は、設計の基本思想に、地震や津波に対する備えが希薄だとされ、長い配管網の老朽化と震災による破断というリスクが心配されていた。
福島第一原発を含めて、東電は原発の検査データ隠し、トラブルの隠蔽を幾度も繰り返してきた。内部告発によってそれが発覚した2002年に、責任を取って顧問や相談役を辞したのは、公益企業の社会的責任を重視する良心派の歴代社長、会長たちだった。後に残ったのは、「値上げは電力会社の権利」という意識だったということかもしれない。
東電の企業体質からしても、立地条件からしても、炉の構造と機能からしても、福島第一原発事故の大枠は、札付きのハイリスク老朽原発が十分な備えを怠り、予想されていた震災にも耐えきれずに起こした人災事故だと、推し量れる。
現在の電力供給システムでは、老朽原発をできるだけ長く稼働させれば、もうけが大きくなる仕組みになっている。廃炉には膨大な費用がかかる。廃炉を先延ばしにするだけで、相対的な利益は膨らむ。電力会社にとっては老朽電発の稼働は、やめるにやめられない禁断の蜜の味なのである。
集中立地と老朽原発の稼働というリスクは、日本の原発が抱える抜き差しならない「構造」である。地域独占という経営形態と原発の国策民営の存続に不可欠の要件でもある。その構造がもたらした当然の結末として、福島第一の過酷事故が発生したのだとすると、日本には原発ゼロを目指すしか選択肢はないことになる。そうでないことをきちんと証明できれば、原発は抜本的な安全策を施したうえで、電源の選択肢の一つとして今後も残ることになる。
このキーポイントを事故調が集中的に解析していないことは、不可解というしかない。国の政策選択にとって最も重要な問題を避けては、事故調の名がすたる。
すったもんだの末、原発サイトと本社を結ぶ事故当初のテレビ会議のビデオを、東電が公開した。現場も本社も、連鎖事故、もらい事故の拡大を防ぐ手立てがないことを知っていて、そのリスクを外部に知られないよう腐心している様子が読み取れる。
国会事故調は東電に要員撤退計画はなかったという、根拠のない結論を示しているが、ビデオは、事故の連鎖的拡大におびえた経営幹部が、要員の福島第二への退避を明らかに意図していたことを示唆している。700人中数十人の保安要員を残すから「全員」ではないなどという言い訳は通用しない。
福島の過酷事故が実際に連鎖か独立事象なのかは、第二次事故調の解析を待つしかない。ただ、連鎖事故のリスクが一般に知れわたってはまずい「極秘事項」だったことは容易に想像できる。
10数万人の穏やかで安定した日常生活を奪った過酷事故の本質に、科学もジャーナリズムも迫れない国を、民主主義国家と呼べるだろうか。
塩谷喜雄(しおや よしお)氏のプロフィール
岩手県立盛岡第一高校卒、東北大学理学部卒。1971年日本経済新聞社入社 科学技術政策、原子力、先端医療、環境問題、地震防災などを取材。科学技術部次長、筑波支局長、編集委員を経て、99年から論説委員(環境・科学技術担当、1面コラム「春秋」の執筆)、2010年9月末退社。93年に喉頭がん手術のため声帯の4分の3を切除、本人によると天性の美声を失う(旧友の多くは術前術後で大差無しとの評)。治療のため70グレイという大量の放射線を浴びる。趣味は飲酒。著書に「生命産業時代」(共著、日本経済新聞社)、「水を考える」(共著、日本経済新聞社)、「これでいいのか福島原発事故報道」(共著、あけび書房)