misty green and blue

Life is like an onion...

桃紅。

2021-05-22 | artist


“私の人生はなりゆき、希望とか計画を立てたことはない”桃紅
“生涯独り身で、幸福な家庭を持つことはできなかった”桃紅
だが、代わりに掴んだ“別の非常に幸福な生活” ― それが、“自分の仕事にアートを選んだこと”だった

“悲しい時、苦しい時、楽しい時、あらゆる場面で人の心を支え、慰め、和らげ、絶えず人に寄り添っている‘’アートを通じて、43歳の時に思い切って赴いた米国で“かけがえのない出会い”を体験、書の世界から飛び出し、“自分が感じるものを好きに表したい”思いを胸に、“墨を用いた抽象表現という新しいジャンルを切り拓いていった”桃紅
だからこそ、“現実そのものを写実するのではなく、現実の持つ夢や怒り・悲しみをその中から抽出して別の形に置き換えて生み出す、想像力が主体”の抽象画は、“創造する喜び・有難さ”を齎し、いつしか“かけがえのないもの”となったのだろう

禅林句集「桃紅李白薔薇紫 問著春風總不知 (桃は紅、李は白、薔薇は紫 それはどうしてなのかと春風に問うても知らぬの返答)」に由来する、雅号・桃紅
その雅号に相応しく、何事にも捉われず、あるがまま、個性のままに自然体で生きた、篠田満洲子の生涯 一
2005年には「世界が尊敬する日本人100人」に選出、建築や襖絵、装丁・題字・著書など、その活動は多岐に亘った


1913年中国・大連に生まれ、本年老衰のため107歳の生涯を終えた墨象画家・篠田桃紅の存在を知ったのは、『篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち』だった (2日)
奇しくも追悼展となった本展だが、その内容は、文字から始まった初期から文字を離れて墨の色や線を新たな抽象表現へと昇華させた現在に至るまでの変遷を辿る、貴重な約80点に及ぶ作品と資料を網羅したものだった
余分なものを削ぎ落し、一瞬一瞬を惜しみつつ‘人の生’を謳歌した桃紅の美学は、非常に興味深く、深遠なる世界観にしばし時を忘れるほどだった


 年の数ほどの線を引く
 一本の線は生きてきた一年一年、その積み重ね
 何か新しいものを加えて生きていきたい
 何か新しいものを創っていきたい
 半歩でも三分の一歩でもずっと前に出て
 昨日よりは今日のというように
 衰えというものはあるけれど
 老いてはじめて選べるものもある

                「百の譜」より


人生100年
あるがままに生きる勇気を教えてくれた
年を重ねるのも悪くないと、少し思えた

                        
                        


合掌



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