
軽ーい読み物が読みたくて、
文字の大きさと挿し絵の雰囲気で「これだ!」と思って手に取りました。
『天国の本屋』
ストーリーは、主人公さとしがコンビニでぶらぶらしていた時にアロハシャツのおっさんに声をかけられ、天国の本屋のアルバイトをすることになる…というお話。
突然舞い込んできた仕事に最初は戸惑うさとしだが、本屋さんに来るお客の要望に応えて本を読んであげるサービスの担当になり…。そして…。
本屋の店員になって、本を朗読してあげる仕事。
いいなぁ私もこんな仕事したいなぁ。
小さい頃は絵本だけじゃなくて図書館の紙芝居も借りて自分で読んでたくらいだし、少しは私も人の役に立てるんではなかろうか。
あ、でも万引きの起きない本屋さんが条件ですけど。
(本屋さんの万引き被害って結構ひどいらしいから)
ハートフルな本です。
物語の途中から大体、「あぁ~、なんかこういう展開になるんじゃないの?」と思うんだけど、
いい意味でそれを裏切らず、そのままきれいな協和音の旋律を奏で続けてラストに向かってくれていると思います。

もうひとつ同時期に読んだ『朗読者』
こっちは買うだけ買って、ずっと放っておいてたもの。
近々、ケイト・ウィンスレット主演で上映される映画『愛を読む人』の原作ですね。
通勤のお供にしては少し重たい小説だったかな。
「主人公が本を朗読する」という点だけ見たら同じなのに、
戦争が残したものが絡むとどうしてこうやりきれない感じでいっぱいになってしまうんだろう。
これはフィクションだけど、
戦争によってハンナのような人生にシミのような悲しい過去を持つ人が生まれてしまうことが容易に想像できる。
なのにどうして世界から戦争は消えないのだろう…と考えてしまう。
世界はふたつの大戦を通して戦争のマイナス面を目の当たりにしたはずなのに。
アメリカはベトナム戦争の時に戦場へ行った兵士がどんな心の傷を負うことになるかを知ったはずじゃなかったの?
誰も愛しい人に悲しい思いをさせたいなんて考えないのに、
例えば出兵すれば市民権を得られるとかそういうニンジンを目の前にぶら下げて
たくさんの人を戦場に送り込む構図が出来上がってしまっている世の中だったりする。
大切な人が悲しい重い過去を持っている時、
それを知った時にはどうすればいいんだろう、何ができるんだろう。
そのことを真摯に考える主人公の姿勢はやっぱり『天国の本屋』に通じている気もして。
偶然にもほんの少しだけ似通った点のある本を同時期に読んだのですが、
心に残る味わいは全く異なります。
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『天国の本屋』
松久淳+田中渉 著
新潮社 2004年5月
『朗読者』
ベルンハルト・シュリンク 著
新潮社 2003年6月