Drマサ非公認ブログ

はじめて入院した29

 理学療法士は丁寧で適切な対応をしてくれた。リハビリテーションセンターで自転車漕ぎをする時は、一度に私を含めて3人程度を担当する。それぞれに気を配りながら、血圧やサチュレーション、そして表情や運動状態をチェックし、何やら記録をつけている。後でコンピュータにデータとして登録していくのだろう。

 もうひとつ、彼らには仕事がある。そうは感じていないだろうが、営業活動である。退院後にリハビリに通うように勧めてくるのだ。それほど強く推してくるわけではないが、なぜ必要なのかを医療的、科学的知見から説明を施すのである。

 当然退院後もある程度の運動が必要になるわけだ。私自身が心不全になった原因については、その後診断書を医者に書いてもらったところ、「原因不明」とのことであった。ただ不規則な生活、運動不足、高血圧という問題があることは指摘された。

 しかし、それだけで説明可能かといえば、高血圧の原因は何か?心臓への過剰な負担の原因は他にもあるはず?との理由から「原因不明」との判断だ。結局生活習慣の問題程度は指摘できるわけで、医療が何もかも明らかにできるわけではないのは当たり前だ。

 そもそも病気の原因を身体の生理的機能の欠陥、身体を物と見立てて、その物質的な問題と捉えながら、数値的な、統計的な処理によって理解できるという人間機械論的認識枠組み(パラダイム)の限定的範囲で、病気を捉えようとしているわけで、「不明」という判断は当然の結果である。そもそも病気の原因を特定できるという考え方自体が思い込みにすぎないかもしれない。

 また、このパラダイムの中での実践が結果的に有効であれば、それを医療行為とすることに大きな問題があるわけではない。実際役に立つからだ。

 ただ注意しなければならないのは、役に立つのは短期的なスパンにおいて役に立つことが実証されたり、実感されたりするだけであり、長期的スパンであるとか、人間の構造的な問題とした場合、人間には気付かない程度のレベルで問題を残すことも想定できる。

 話を戻そう。理学療法士の営業だが、私の心臓の状態、あるいは身体の状態を考えると、当然のことながら、ある程度の運動が必要であるとのこと。それは主に血圧の状態と、病気と運動との関係からもたらせられた医療的知見を重ね合わせた結果からの判断である。

 いちいち科学的判断なるものが介在しているが、なんか胡散臭いとも思った。なぜなら、適度な運動が必要なのはすべからく全ての人間に当てはまることだからだ。加えて、正常血圧値がいかに恣意的な、あるいは学会や製薬会社との間で規定される政治的な値であるということも含めて。

 実際には科学が介在する必要もなく、常識的なことだろう。そこに科学という権威を組み込むことに、そういう権威に依拠することによって、正統性が付与されると信じている、私たちの社会構造の歪さが垣間見えたからだ。

 もちろん理学療法士はそんな“ひねくれた”思いを抱くことはないだろう。正しいことを推奨しているとの信憑の中にいるに違いない。そこから発する「やさしさ」なわけで、多くの人は「やさしさ」として受容したり、「そんなものか」という程度のある意味無関心を下敷きにした受容をするものだろう。

 それはともかくとして、理学療法士は結局運動しなければならないと思っても、実際に運動しない人の方が多いので、このリハビリテーションセンターを利用してはどうかと勧めてくるのである。実際多くの人が利用しているし、ある程度は健康保険の扱いができるとのことで「お得」だという主張だ。なんせ専門家がいつも付いていてくれるわけだし。

 私自身が通うとなると、バス利用で、面倒臭い。そういうことを理由にして、やんわりとお断りしたのだが、リハビリ終了後にリハビリテーションセンターの案内パンフレットを渡された。宣伝活動という意味で商業的活動でもあるが、表層的には「やさしさ」ということになるのだろうね。まあ仕事としてマニュアル化されているに違いないしね。

 この入院は運動不足を自覚する最大の機会であったので、自分で勝手にやりますよ!

 でも、やるかなあ?畑仕事でもしようかなあ。いい運動になるだろうなあ。でも都会のマンション住まいだしなあ。

 思いは面倒臭くて、やらない方に向かうのだろう。そもそもリハビリって、人によってはお節介になるけど、システムとして設定されれば、皆乗っかることにもなる。その分医療費増大だ。

 嫌味な物の見方だね。

(つづく)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「医療」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事