~マイネルスティングを愛してくださった皆様へ~
いつかは来る別れ…こんなに早く訪れるとは思いもしませんでした。
突然のことで、いまだに現実味がありません。
放牧地を眺めても、スティングの姿はなく、厩舎の中もがらんとしたように感じ、寂しさが増してきます。もっと長生きしてほしかった。
スティングが牧場に来て、丸5年…。
振り返るとたくさんの思い出があり、ずっと前から牧場にいたような気がしてなりません。
当初は、朝、放牧すると必ず、いなないて自分をアピールする様子が印象的でした。
牧場で日々を過ごすうちに、スティングの兄貴分としての素質が現れ、遊び盛りの一歳牡馬のサポートを教育係として2度もこなしてもらいました。
オキテが育成場へ旅立つ日
一頭は、競走馬オキテ号となり、会員さんたちにスティングの子供のようにかわいがられ、見守る会を立ち上げてくださいました。
もう一頭は、今年、スティングと同じマイネルの冠をつく牧場へと巣立ちました。
ビッグレッドファームへ旅立つハー君とのお別れ
これもスティングのおかげです。
会員さんが訪れると、なじみの方には、甘えてわがままなそぶりを見せるスティングですが、他の方には、やさしく接するという一面もありました。
ミニツアーで会員さんが訪れた時、放牧地の中で、スティングを囲んでいると、1人1人に挨拶して回ったことがあり、とても印象的で今でも脳裏に焼き付いています。
スティングが牧場に来て3年目の初夏。スティングが縁となり、ビッグゴールドが牧場へ来ました。
牧場に来た会員さんが、先にビッグゴールドとにぎやかにしていると、遠い放牧地にいるスティングは、ちゃんと誰がきたかをわかっていて、会いに行ったときには、気分を損ね、いじけてしまい、いくら呼んでも知らんぷりをする態度がとてもかわいらしく、そして、大好きなにんじんをバケツ食いする、という姿は、私たちを楽しませてくれました。
また、注射が嫌いで、私たちを困らせたこともありました。
心温かい会員さんたちに囲まれたスティングは、衣装持ちで、季節ごとの無口は数知れず…。
スティングの無口コレクションの一つ一つには、たくさんの思い出がつまっています。
冬の馬服は、スポーツブランドのミズノのネーム入り高性能馬服で、馬具屋さんがどれほどの名馬かと調べたというエピソードがあります。
スティングがいることで、たくさんの人が、牧場を訪れ、お話しさせていただく機会を与えてくれたことは、私たちにとっても癒しとなり、何よりも牧場を経営する中で、とても貴重な経験となりました。
そして訪れたスティングの最後は、奇跡的なものを感じます。
偶然にも静内に滞在されていた、引退馬協会の代表、スティングの会の方々、奇跡ではないかと思えるほど、たくさんの関係者に看取られ、旅立っていきました。
スティングがまるで、みんなにお礼を言うために呼び寄せたかのように。
21年という馬生は、幸せな日々を送れたのではないでしょうか。
そして、私たちにも幸せな気持ちをたくさん与えてくれました。
ありがとう、スティング。
これまで、スティングを愛してくださった皆様にも、感謝の気持ちでいっぱいです。
たくさんの供花をありがとうございました。
これからもスティングのような馬生を送ることのできる馬が一頭でも増えますように。
静内坂本牧場