キミオくんのエッセイ「道頓堀交遊録」にその石井先生のことも書いておられます。
「碁ワールド」2000年1月号からです。
--------------------------------------------------
これまで5人の棋士を「餌食」にしてきたせいか、どうもわたしの回りにはピリピリした空気が漂うようになってきました。
「いつかキミオのあのページを乗っ取って、ヤツの秘密を暴いてやる」と豪語する輩も出てくる始末。
それは困ります。
で、今月は先手をうって、懺悔することにしました。
みなさん、1999年はどんな年だったでしょうか?
ぼくはちょっとだらしなかった。いえ、かなりかな?
手合いはなんだか、いつも負けていたような気がします。
竜星戦では、初優勝できましたが、次期の予選で早々に敗退…。
嬉しさも中くらい、ですねえ。
うーん、碁の話をしても面白くありませんね。
品行方正なぼくには、あんまり問題行動はないんですよねえ…。
今でこそ「紳士キミオ」と呼ばれているぼくも、やはり少年時代はそれ相当に暴れていました。
この歳になっても忘れられない出来事がいくつかあります。
みんな話してしまうと色々な方面にご迷惑がかかるので、ここでは二つだけ白状します。
ぼくがまだ院生のころ、小学4年生のときです。
とにかく落ち着きがありませんでした。
学校が終わってすぐに関西総本部の道場へ通い、暗くなるまで碁の勉強。
こんな日々が続いて、喜ぶ子供はいないはずです。
それでぼくは何をやらかしたか?
みなさんも身に覚えがあるでしょう。
「落書き」です。
「○○くんのアホ!」
「○○さんのマヌケ!」
クレヨンを持参して書きまくりました。
車や富士山の絵もがんばって描きました。
えっ、どこにですって?
少年キミオは人目につかないことろに落書きをするほど、暗い人物ではありません。
もちろん堂々と、道場の壁一面にしたためました。
「みんな驚くだろうなあ。面白がってくれるだろうなあ」と期待していたのはいうまでもありません。
しかし待っていたのは、大きな大きなカミナリでした。
「明日からくるな!」
と、院生師範から一言。
つまり謹慎処分です。
当然ですよね、今考えれば。
でもここからが本題。
「フン!一生懸命書いたのに。芸術の分からない先生だな」
とぼくは事の重大さにまだ気付いていませんでした。
そして院生仲間からこう告げられ、愕然とします。
「I先生、泣いていたよ」
……。
人を泣かしてしまった。それも大の大人を。
親だって泣かしたことがないのに……。
十歳にして初めて、ぼくは反省しました。
「もうイタズラはやめよう。I先生のためにも絶対プロになるんだ。謹慎が解けたらすぐにI先生に謝りに行こう」
我ながら、けなげです。
みなさんも涙が出てくるでしょう。
そして1ヶ月後、ようやく謹慎解除。
久しぶりに道場へ入ると、なんだか雰囲気が違います。
ぼくが落書きをする前から汚れていた壁紙、ものすごくきれいになっています。
そこでぼくは何を思ったか、みなさん想像できますか?
「老朽化が進んでいたからな。ぼくの落書きはいい機会だったかもしれない。I先生もきれいになって喜んでいるはずだ。謝らなくてもいいや」
三つ子の魂、百まで。
そのときぼくは、ことわざをひとつ覚えました。
I先生にはそれからも大変お世話になっています。
いつも笑顔を絶やさず、アマチュア指導も人気があります。
碁だって強い。
本当にぼくは尊敬しています。
2,3年前、囲碁まつりで公開対局がありました。
ぼくは公式戦さながらに、気合タップリに打っていました。
でも、解説を担当していたI先生はアマチュアの方のために、猛烈なリップサービスを始めました。
「ここに打つようじゃ、キミオもまだまだ」
「キミオより、みなさんの方が強そうですな」
カチンときました。
終局後、対局者のぼくを交えて検討会。
I先生の質問をぼくは片っ端から玉砕しちゃいました。
あとから職員の方に言われました。
「言い過ぎだよ。涙目になっていたよ、I先生」
また泣かしてしまうところでした。
反省しています。
でもこれで、「三つ子の魂、百まで」が自信から確信に変わりました!?
拝啓 石井邦生様
その節は大変ご迷惑をおかけしました。
謝ろうと思ってはいるのですが、「魂」が邪魔しちゃって。
これからも遊んでください。
拝啓 読者のみなさま
文中に出てきた「紳士キミオ」の表現は誤りでした。
訂正してお詫びします……。
--------------------------------------------------
はは、はははは…(乾笑)
昨夜の私の、
>キミオくんは、「あのころから」変わったのかなぁ?
の問いの答えははっきりしてますね
絶対!変わってない!!
だって、「三つ子の魂、百まで」ですから
いろいろ書きたいことは山ほどありますが、
とにかく、全国のわんぱくぼーずのイタズラに悩むおかーさんたちに光を与えますね
ちなみに新築マンションの(もう新築とはいえないけど)リビングから廊下にかけて、壁一面、子供の落書きで目も当てられません…
我が家のヘタレ生意気ぼーず達も、キミオくんのように大成できるのかしらね
はぁ~
ふふ。
それにしても、キミオくんったら、石井先生にずいぶん甘えてるわよねと、
イタズラぼーずの成長に悩むかーさんは思ったのでした