「木瓜」(ボケ)又の名を「長寿梅」とよばれる色とりどりの可憐な花姿をしたバラ科の木。
盆栽でも良く見かける花木で昨年、我が家でも枯らしてしまった一鉢が、脇から新芽を吹いている。多分、地上の幹や枝は枯れても、根の方は生けていて、盛んに生命活動をしていたのかもしれない。
夏目漱石著「草枕」に木瓜のこんな一節があった。
『木瓜は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。
そんなら真直かと云ふと、決して真直でもない。
只真直な短かい枝に真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、斜に構へつつ全体が出来上って居る。
そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。
柔らかい葉さへちらちらつける。
評して見ると木瓜は花の中で愚にして悟ったものであろう。』
春先に咲く花で、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲いている様は遠くから見てもよく目立つ花だ。
上にはあまり伸びずに株立ち状の姿に向きによっては、斜めに構えつつ真直ぐな枝が地に向かって伸び、その真直ぐな枝に紅だか白だか要領を得ね花が、ひしひしと纏わり着くようにして安閑と咲いている。
土近くまでひしひしと木瓜の花 高濱虚子
by;MATSUKAZE