Fin-blog

フィンランドという国のライフスタイルや文化について心に思うことを記していくためのブログです。

個展 2日目 (その1)

2007-08-09 | Weblog


大学院というところは、それまでの大学4年間とは違って、
自分で一つ研究テーマを立てて計画的に研究を進め、結果を出すところだ。
それでは、大学4年間は何をしているのか?となるのだけれど、
私の通っている大学について言えば、
「やりたい!」と思ったことをひたすらに打ち込んで制作をするところだった。
漫画を書きたいのであれば、ひたすら漫画を描き続ける。
写真で表現したいのであれば、ひたすら写真を撮る。
私はイラストを描くのが好きだったので、ひたすらイラストを描いていた。
大学院に進学してからは、
毎学期ごとに研究届、研究報告書というものを提出しなければならず、
そこには「絵を描きたいので描き続けます」といった風には書けない。
今、社会はどういう状態にあって、そこにどんな問題があるのかを把握し、
その問題に対して自分はどう思うのか、自分には何ができるのかを、
道筋を立てて報告をしなければならない。

私の研究届の内容は、簡単に言うと、
「今、世の中に出回っているテキスタイルデザインのパターン模様は、
花や動物、幾何学模様が、おしゃれ、かわいいを象徴する
記号としてしかあしらわれておらず、表面的な装飾のものが多い。
そのような中で私は、もっと人の記憶や想像力に触れるような、
内面から暮らしを豊かにできるようなパターンデザインがあっても
良いのではないだろうか」というもの。
人の暮らしを豊かにすることがこのテーマの目的なので、
研究届の具体的な制作の計画には、
スケッチから起こしたパターンデザインを布にプリントをし、
その布を実際に生活空間に活かせるよう、日用雑貨品を試作する、と述べている。

今回の個展でも、本当は布にパターンをプリントし、
うまく行けばその布を使って小物をつくり、展示をする予定だった。
しかし、この小ギャラリーを埋め尽くすだけの布や小物を制作するには、
時間もお金も足らなかった。
というのは飛んだ言い訳で、実際には、する気になれなかったのだ。
もちろん、自分のデザインしたパターンが
生活にさりげなく置かれている状況を見てみたいとは思う。
けれど、私自身がやりたいと思う制作のコアの部分は、
絵を描いてパターンにつなげる、というところだった。
そして、私が本当に研究届に書きたいことは、
「具体でも抽象でもない、見る人に自由を与えられる絵を描きたい。
北欧デザインに触れたい。
インテリアに興味があるので勉強をしてみたい」というもの。
これは研究届ではなくただの願望届に過ぎないし、
社会に対して何か発表し功績を残すことができるのか?
と質問されると、何も応えられない。

結局、研究届ではなく願望届に忠実に制作を進めて作品を発表をしている今、
なんとなく罪悪感のようなものが付きまとっていたが、
「布にプリントをしたり裁縫をすることについては全くの素人なのだから、
それはあなたのするべきことではないのでは?
それより、もっと絵のバリエーションで見せたらどう?」
という言葉を今日、展示作品の前でいただいて、
あと残り半年と少しの学生生活は、
素直に秘密の願望届に沿って制作を進めていこうと決めてしまった。
秘密と言いながら、このブログで公開してしまったので、
もしかすると修了過程をもらうことができないかもしれないけれど、
そうなった時は仕方ない。




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