まさおレポート

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ティベリウスがカプリ島のヴィラ・ヨヴィスで遠隔統治を続けた理由

2024-08-10 | 紀行 イタリア・スペイン 
ティベリウスはローマ帝国の2代皇帝だ。不思議なことにローマから遠く離れたカプリ島のヴィラ・ヨヴィスで統治を続けた。18年前にカプリ島を訪れて以来なぜそのような複雑な統治を行ったのかとの疑問が居座り続けた。現代的な視点から推測してみると面白い。

ティベリウスがローマから遠く離れたカプリ島のヴィラ・ヨヴィスで統治を続けた理由は、いくつかの背景や要因が推測される。

ティベリウスはローマ皇帝として権力を握っていたが、彼の治世には多くの政治的陰謀や暗殺の企てがあった。彼がローマを離れてカプリ島に移った一因は、こうした不安定な政治環境から自分を守るためであった可能性がありカプリ島は海に囲まれた孤立した場所であり、外敵や反乱者からの攻撃を防ぐには理想的だったとの解説を見ることが多い。

またローマを離れることは、ある意味でティベリウスが自らの権威を強調し、直接的な政治の場から距離を置くことで、より一層の支配力を示す手段であったとも考えられる。また、彼はローマから離れることで、日常的な行政や雑務から解放され、より大局的な視点から帝国の統治に専念できたのかもしれない。

ティベリウスの養父であり、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスは、統治初期に自ら前線に立って政治を行っていたが、晩年には自分の代理として権力を委任することが増えた。義父であるアウグストゥスを真似たのかもしれない。

ティベリウスのカプリ島での隠遁生活は、統治者が側近に権力を委任し、政治的混乱や危険を避けるために距離を置くという行動の一例であり、歴史上の他の指導者にも類似した行動が見られる。しかしそれだけではなさそうだとわたしは思う。

「目に見えない方が支配力がある」という考え方は、ある種の心理的戦略や権力の行使に関する洞察を含んでいる。実際の権力者が物理的に目に見える場所にいなくても、神秘性が増しその存在感や影響力が強まるというパラドックス的な概念を反映している。

現代でも、リーダーがすべての決定に直接関与しないことで、組織内での権威や影響力を強化する場合があることを経験的に知っている。リーダーの意図や行動が見えないことが、部下や組織全体に対する支配力を増すことにつながる。

 
 
人は神秘を望むということも言える。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に登場するイワン・カラマーゾフのセリフには、「人は神秘を望む」という主題が織り込まれている。この考え方は、宗教や権力、そして人間の本質に関する深い洞察を含んでいる。

イワン・カラマーゾフは『カラマーゾフの兄弟』の中で、理性や合理性に基づいて世界を理解しようとするキャラクターとして描かれているが、同時に彼は人間の中に存在する矛盾や不可解な部分を認識している。彼のセリフには、次のような洞察が含まれている。

イワンは、人々が単純で明白な真実よりも、神秘的で理解しがたいものに惹かれるという考えを提示し、人間が無意識のうちに不確実性や謎を求め、それが信仰や権威に対する敬意を生み出すと考えている。

権力者が自らを神秘的に見せることで、その権威が強化されるという現象も、イワンの言葉と関連している。人々が神秘を望むという心理は、宗教だけでなく、政治や社会における権力構造にも影響を与えていると言える。

イワンは人間が存在すること自体、あるいは自由に不安を感じ、その不安を和らげるために神秘的なものを求めると考えるのだろう。神秘や不可解なものがあることで、人々はその中に安心と意義を見出し、生きる動機を得るという。「神がなければ作らねばならない」とはそういう意味だろう。

ティベリウスがカプリ島のヴィラ・ヨヴィスで遠隔統治を続けた理由は表向きの理由はいろいろあるが、神秘性の獲得ということが無意識下の動機ではなかったか。

 

 


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