バラを見ているとこの世に完璧というものはないのだなと思う、これくらい出来たてで完璧に近い真紅のバラなのにすでに花弁の一部に崩壊の兆しが見られるからだ。
ネアンデルタール人もクロマニヨン人も、そして20万年前のホモサピエンスも見た日の入りの茜、同じ荘厳、神秘、宇宙を感じたに違いない。赤は始原の色なのだ。
青と赤は太古から互いを莊嚴しあっていたことがわかる。
この日の出は茜と言ってもいいし黄金色と言ってもいいが。
カシューナッツの実は上部と下部に分かれ上部の実はこうしてみると勾玉の形をしていることがよくわかる。下部は赤いピーマン風で柔らかくて旨そうな赤で食べられそうに見えるがビラのスタッフに聞いてみるとこの部分は食べられないという。実に鼻を近づけると甘酸っぱい匂いがする。この赤は実直なりんごの赤と異なり誘惑の色であるとともにどこか毒を秘している。
バリの花々にも季節感はあるらしいが、年中咲いているものもありよくわからない。ハイビスカスは年中咲いている。これは長期滞在した最初のビラの中庭に咲いたハイビスカス。咲ききっていないところが気に入った。それにしても赤と緑は天与の完璧な配色だ。
クスコの山中に咲いていた花の赤がアンデスの色だといつの頃からか頭に定着している。
朱あるいは茜がふさわしいかもしれない。
朱は硫黄と水銀から人工的に作られバーミリオンとも呼ばれるが金属的な響きをもつ、茜は夕日の真っ赤な空をさす、どちらかといえば茜のほうがふさわしい。
この食べられそうで、拒絶しているような花はインカの繁栄と生贄の牛の血を想起する、つまりエロス・タナトスを象徴する赤だ。
日がアンデスの山並みに隠れる前の燃える茜色をみているとインカの神々を受け入れる気になってくる。
ウマワカ渓谷には観光地として旅行客が訪れる村が4つあり、プルママルカはその一つだ。標高2200mのプルママルカは渓谷で最も南に位置する村の周辺は、赤い色調の山々が広がっている。
モロッコ山中の街 山脈を車で進むと突然現れる。ピンクに近い褐色の壁と赤い土壌が印象的だ。マラケシュの名も赤から来ている。
エッサウィラの滞在ホテルで見た深紅のブーゲンビリア マラケシュは赤茶けた色調だがこのエッサウィラは白い建築物が多いので余計に花の赤が印象的だ。
シシリア島タオルミナ、コンドミニアムに咲くバラやゼラニウムの赤はラテン基質を表す赤。
ジェラートを連想させる赤いスーツはシシリア島のウィンドウに。
ベネチアングラスは単純な赤ではない。