まさおレポート

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11月に101歳で亡くなった中曽根康弘元首相 テレコムの時代を開く卓見

2019-12-30 | 通信事業 NTT・NTTデータ・新電電
 

テレコムの群雄割拠は平成に始まり令和に終息したというべきですが、実は2019年11月に101歳で亡くなった中曽根康弘元首相が政治家としてテレコムの時代を開いたと考えております。


「自省録」中曽根康弘著によると田中角栄と中曽根康弘、北原安定と真藤恒4者の関係、さらに山岸委員長との応酬がリアルに描かれ電電民営化を推進していったことが描かれている。自伝なので我田引水の嫌いがあるかなと注意して読んだがそれは杞憂だった。今でも「データ通信や電話工事部門などは分離して、情報通信の中枢の把握と研究をやれ」はそのまま提言として生きていますね。残念ながらその通りにはならなかったのですが。

電電公社のほうは国鉄とは異なり、黒字経営でした。そのため、あえて、民有化することはないという議論も起きましたが、全国一本化のこのようなものは民営化しなければならないという考え方がまず第一にありました。しかしながら、分割する必要性は感じられませんでした。「自省録」p179 

「分割する必要性は感じられませんでした。」は卓見で、結果として分割されましたが今でも分割する必要性は感じられません。

この日、閣議前に20分ほど鈴木首相に会い、行革推進において9月末までに出そろった各省庁改革案を説明したのです。続けて、電電・専売の打開策を両公社の首脳人事を含む断行方法として進言して、最後に鈴木総理再選に対する私の考えは変わらないと申し上げました。「自省録」p147

この段階で北原安定氏をさしおき真藤氏をトップに置く首脳人事が提案されている。

彼らの反対の根拠は、組合の意向と電電首脳部の姿勢でした。特に副総裁の北原安定君が抵抗の姿勢を示していました。だからこそ、族議員も一緒になって反対したわけです。最終的には議会で議論して、5年後には見直すとか、法案を若干修正して妥協したのです。・・・参議院段階で、一部修正して付帯決議で妥協し、山岸君の顔を立てました。それで、山岸君も賛成に回ってくれたのです。「自省録」p180  

この頃全電通と社会党それに副総裁の北原安定氏が強固な結束を示し民営化に反対したのです。おまけに田中角栄氏までが反対したとあっては絶望的な状況と言えます。

民営化する新しいNTTのトップに誰を据えるかという段になって、郵政族と田中角栄君は、北原安定副総裁を強く推してきました。北原君と言う人物は、優秀な技術者のうえ、そういうことも実に如才なくやっていたのです。

私は、今里広記さんと永野重雄さんに相談して、真藤さんを立てました。・・・真藤さんの話しぶり、創造性、積極性を見て、これはいいと思っていたわけです。「自省録」p181 

ここで「永野重雄さんに相談して、真藤さんを立てました。」に注目して頂きたい、永野重雄氏と真藤氏の線から江副浩正氏のリクルート事件へと負の連鎖も起こしています。

私は社員に、“外飯・外酒”を推奨し、自らも財界人に誘われ、日本YPO以外に、稲山嘉寛さんを囲む会、永野重雄さんを囲む会、三重野康さんを囲む会、眞藤恒さんを囲む会などに参加していた。それらの会のなかに政治家を囲む会があった。稲山さんは「政治献金は企業にとって必要なことである」と強調されていた。「リクルート事件・江副浩正の真実」P439

負の連鎖は江副氏自身で述べていますが江副氏もNTT民営化を普通の民営化と読み誤ったようです。偉大な貢献の陰に若干の影も差しています。

あなたはNTTを純粋な民間会社だと思ってるでしょう。・・・NTTの職員は準公務員なんですよ。・・・確かに私はNTTを民間会社だと思っていた。「リクルート事件・江副浩正の真実」P113

中曽根氏から流れるテレコム改革のラインは野田一夫氏を介して平成テレコムの大立者孫正義氏にも連なります。何か時代の因果を感じさせますね。

当時から遡ること20年ほど前、著名な経営学者の野田一夫さんが設立されたザ・フォーラムで私は役員を務めており、CSKの大川功さん、日本ソフトバンクの孫正義君ら活発なメンバーの勉強会を行っていた。「リクルート事件・江副浩正の真実」P148

テレコムの幕開きにあたって大きな変遷のキーポイントで明かされていない謎があります。田中角栄氏がなぜ突然「あれは承知する」といったのか。この一言がテレコムの歴史の変曲点になったのは間違いない事実でしょう。中曽根氏は「財界を敵に回すのはまずいと思ったのかもしれません。」とあっさりと流していますが、何か深い事情があったに違いありません。どなかたかこの電気通信史の秘密を解き明かしていただけることを切に期待します。

しかし、田中角栄君を口説かなくてはいけないわけで、中山素平さんと今里さんが角栄氏のもとへ行きました。ところが、角さんは、「いや、北原がいい」といって聞かなかったのです。

中山さんが困っていると、しばらくして、角さんが素平さんを興銀に訪ねてきて、「あれは承知する」といったらしいのです。どうした心境の変化だったかは知りませんが、妙なことがあるもんだと思いました。財界を敵に回すのはまずいと思ったのかもしれません。それで、真藤さんに決まったのです。

中曽根氏は民営化を推進したが東西分割には反対でした。このことはNTT東西分割が今日的に振り返っても何も意味を持たないことからも分かるように大変な卓見であることがわかります。

私が真藤さんに期待したのは民有分割論でした。山岸君にもいったことがありますが、「全国の電電の幹線は全国規模でそのまま維持する。それから、研究所もその優秀さは世界トップレベルなのだから、これもそのまま維持する。あの力を落としてはいけない。p182

「全国の電電の幹線は全国規模でそのまま維持する。」はNTTコミュニケーションズとして実現しています。「研究所もその優秀さは世界トップレベルなのだから、これもそのまま維持する。あの力を落としてはいけない。」は持ち株会社実現の重要な根拠となりました。優秀さは世界トップレベルかどうかは若干の異論はありますがおおむね卓見だと思います。異論は別稿に譲ります。

しかし、本体以外の関連業務や下部機構の工事関連部門は別に専門の工事会社をつくって分割してしまえ。データ通信や電話工事部門などは分離して、情報通信の中枢の把握と研究をやれ」と、そういったのです。しかし、山岸君は「分割反対」を譲らなかったので、今でも、その課題があるわけです。 「自省録」p182

中曽根氏の卓見「工事関連部門は別に専門の工事会社をつくって分割してしまえ」は孫正義氏の光の道構想へと連なっています。しかし残念ながら時至らずで現在は道半ばです。


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