我輩は犬である。
我輩は、小さい時に公園に捨てられていたのを、
心やさしい坊ちゃんが我輩のことを拾ってくれました。
それ以来、ずっとこの家に住んでいる。
それでこの家の事は、何から何まで知っているのさ。
この家は、昔は良かったのに、ある時期から旦那さんのことで
いつも夫婦喧嘩が絶えなかった。
ついに離婚して、今この家には母親と坊ちゃんの2人になってしまった。
最近の坊ちゃんは、いつもベットの中で泣いている。
机の上のノートには変なことがギッシリと書かれている。
坊ちゃんは、急に我輩を抱きしめたり、
急に何かを思い出したようにして立ちあがったり、
我輩を無視しだしたり、本当に何だかヘンなのです。
昨夜、母親が部屋に入ってきて
いつものように進学のことをいろいろと言っていた。
良い大学に入って、良いところに就職しないとだめだとか言っていた。
そのようにしないといつまでたっても偉くなれないとか、
父親のようにリストラされたりとかして、苦しむなどとガミガミと
言っていた。
坊ちゃんは、ただ黙って聞いているような感じだったが、
エンピツを持っているその手はふるえ、何かを言いたそうな感じだった。
やがて、母親は部屋を出て行った。
坊ちゃんは、母の苦労をよく知っていた。
坊ちゃんは、母親のことをいつも気になっていた。
坊ちゃんは、朝夕、新聞配達をしたり、ほかにアルバイトをしていた。
そのため学校では、それらのことで友達につき合いが悪いと言われ
いじめの対象になっていたようだ。
坊ちゃん、可哀そうな坊ちゃん。
我輩は何もしてあげられない。
ただ、坊ちゃんが悲しむと我輩まで悲しい。
坊ちゃんは、毎日のように我輩にいろいろ話してくれる。
そして、我輩をきつく抱きしめてくる
我輩は、言葉を話すことが出来ない。
ただ「クーン・クーン」と言ってじっと目を見ているだけだ。
我輩の目と坊ちゃんの目から同じくらいの涙が流れてくる。
あと10回泣いたら、
今度我輩は、坊ちゃんを笑わせようと思っている。
どのように笑わせるだって?
我輩が、歯を出してニコッっとするだけさ。
きっとビックリして、坊ちゃんも笑ってくれると思うのさ。
我輩は、いつも坊ちゃんと一緒だよと教えるのさ。
坊ちゃん無理しなさんなと・・・
マイペース・マイペース
母親も疲れているんだよ。
ドンマイ・ドンマイ ・・・ by masako
※結局、母親の限りない欲のようなものが子への負担へとなっているような気が
してならない。母親も一人の人間ではあるが、子はその母による育て方の影響が
ずっとそれこそ結婚してからも響いてくることになります。
今度は子ども側の捉えかたがその人格を形成していくことになります。