俺様はかつて「ペヤ●グの鬼」と呼ばれたほど、
カップ焼きそば作りのプロである。
俺様にカップ焼きそば作らせたら右に出る者はいない。
WYC(ワールドカップやきそばクラシック)なるものがあれば、
俺様が生きている限りチャンピオンは不動だろう。
日本一、いや世界一の“カップ焼きそばラー”なのだ。
カップ焼きそばごときに…と思うなかれ。
カップ焼きそばをバカにするヤツはカップ焼きそばの報いをうける。
そんなヤツに限っていつも麺がのびてるクソまずいカップ焼きそば食ってるはずだ。
そんな素人とは話をする時間もヒマもない。
さてこのカップ焼きそばをおいしく作る方法、それは、時間。
お湯を入れてから湯切りするタイミングが、味の勝敗を決めるのだ。
が、企業秘密をベラベラしゃべるほど俺様はアホンダラではないので、
これ以上は詳しく教えられんが、要は『時間との戦い』なのだ。
そう、カップ焼きそば作りは戦い。男の戦いなのである。
ストップウォッチ片手にお湯を注ぎ、全神経を注ぎ口に集中する。
何人たりとも俺様の邪魔はできない。話しかけることさえ許されない。
例え仕事の電話が鳴っても出ることはない。
それが校了前の切羽詰まった時でさえも、作業を途中で投げ出す訳にはいかない。
コンマ一秒の狂いもあってはならないのだ。狂えばのびた麺を食う地獄が待っている。
勝てば官麺、負ければ賊麺。そして俺様は修羅へと変貌し、
神の領域と言っていいほどの絶妙のタイミング、
“ゴッド・タイミング(カップ焼きそばラーの間でそう呼ばれてる)”で湯切りする……。
これぞ漢の戦い。
今日もカップ焼きそば作りの最中に電話が鳴った。
もちろん出なかった。
そしてまた極上のカップ焼きそばを食すことができた。
俺様は勝ったのだ……。
追伸:
その出なかった電話が、
校了前日にもかかわらず納品してない俺様への、
某編集部からの催促の電話だったのを、
一時間後にこっぴどく叱られて知ることになる……。