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ドイツ語練習帖

マルと亀のドイツ語学習メモ帳

象と泳ぐ-15

2016-10-28 21:49:07 | Schwimmen ...

前回から続いている文章。
<町で二メートル近い大男を見かけたときは、血の気が引いて足がすくみ、
テレビで世界一巨大なピザを約祭りのニュースが流れたときには、吐き気が込み上げてきた。
大きくなりすぎたために、マスターの死は見世物にされた。
インディらは屋上に閉じ込められた。ミイラは壁に埋もれた。
何より大きくなってしまったら、テーブルチェス盤の下に
身体を収めることが出来なくなってしまう。
”大きくなること、それは悲劇である”
この一行をリトル・アリョーヒンは深く胸に刻み込んだ。>

引用した日本語を(本当は一部分でも勝手に引用していいものかどうかわからないが)
全部ザビーネさんの翻訳本から書き写すのが面倒になってきた。
だから自分の興味を引きそうな部分だけ書くことにする。

1行目の後半 <血の気が引いて足がすくみ> はどんなドイツ語になっているんだろう。
<....wurde er leichenblass, ihm wich das Blut aus den Adern,
und seine Knie begannen zu schlottern. >だった。
ここを直訳すると、「彼は真っ青になり、血管から血が去った、
そして膝ががたがた震え始めた」となる。
日本語では「血の気が引いて足がすくむ」は慣用的に使うのだが
ドイツ語ではないのだろうか、いやに説明の多い言い方だなぁ。

2行目の<吐き気が込み上げる>も一種の慣用句だが、ドイツ語ではただ単に
<ihm war übel >吐き気がした となっている。
意味は通じているのだからそれでいいのだが。

”大きくなること、それは悲劇である”の部分は予想通りそのままそっくり訳されて
<Großwerden ist eine Tragödie.>だった。
日本語の書き方が欧米語風なのかもしれない。ザビーネさんが楽に訳せた文章だろう。

<深く胸に刻み込んだ。>がどんなドイツ語になっているか、これも気になった。
日本語ではちゃんと主語が来て、<リトル・アリョーヒンは> となっているのに、
ドイツ語では主語なしの受動文で書いてある。
sich in etwas4 graben で「~に刻み込まれる」 の意味になり、
これを過去の受動形にして
Diese Erkenntnis hatte sich tief in sein Herz gegraben. だそうだ。
あ、いいなぁ、主語を必要としない受動文はきれいだ。
だけど、日本語を読むと、その前の文章は五つほど連続して
「リトル・アリョーヒン」という主語が出てこないから、
ここできっちり少年の名前を出してくる必要があったのだろう。

こうして読んでみると、日本語もこの一連の段落では主語を省略した分をつづけさまに書き
最後に主語を強調してあって素晴らしい。
ドイツ語では必要上、どうしても主語が出てくる。
<何より大きくなってしまったら、テーブルチェス盤の下に
  身体を収めることが出来なくなってしまう。>
の文章には、er 「彼は」を2回も書いている。
だから、最後の文章では主語がない形にしてもよかったのだ。

そうか、ザビーネさんは苦労をし、工夫をしているのだなー。




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