その日、私は買ったばかりの家具調カラーテレビに齧りついていた。
その前の週に起きた富士スピードウェー・サーキットでの大事故についての特集番組を観るために・・・
あの日の出来事は子供心にも、忘れられない衝撃だった。
6月2日、入梅直前のその日は晴天に恵まれ、蒸し暑い一日だった。
昨今のオイルショックの影響か、スポンサーは撤退する所が多く、タイヤの供給など、劣悪な環境がドライバーを悩ませていた。
そんな中、富士グランド・チャンピオンレース・300kmの火蓋は切って落とされた。
午前の第一ヒート、ランチタイムを終え、午後の第二ヒート・・・
このレースで優秀なドライバーを亡くす事故が起こった。
午前のレースで、ローリングスタートのフライングが抗議され、出場者達には嫌な空気が流れていた。
第二ヒート。
そんな空気を背負ったままスタート、その直後、接触が発生・・・
大事故が起こった・・・
鈴木誠一37歳、風戸裕25歳は、30度バンクにて接触事故からスピン、バンク外側のガードレールに直撃し大破、炎上・・・
帰らぬ人となった。
将来を嘱望された風戸は、当時一番F1に近いレーサーとして認識されていた。
漫画:”サーキットの狼”の主人公、”風吹裕矢”は、風戸がモデルだったとの噂もある。
そして、職人気質で仲間を大切にする鈴木は、若くして会社を立ち上げ、TSサニーレースで有名な”東名ピストン”の創立者でもあった。
共に、レース界での可能性のある二人を亡くす事になったのは、誠に残念だ。
この事故をきっかけに富士の30度バンクは、危険と判断され使用されなくなった。
あの日の出来事は、日本のレース界に暗い影を落としたのだった。
炎上爆発するあのシーン・・・
私の頭の中には、今だに深く刻み込まれている・・・
(写真は風戸車両、ガードレール支柱を咥え込んでいる。)
(All for WIN!より借用)