以前、NHKの番組で日産のテストドラーバーのドキュメントを観た事がある。
競技レーサーとは異なる彼らは、試作車を世に送り出す前段階でのセットアップ、チューニングを行う仕事なのである。
このチューニング・・・ 実はとても難しい・・・
レースのような競技は、開発のベクトルを1点に集中できる。
それは、ベストタイムを出す事。
しかし、一般車はそうは行かない。
初心者運転の18歳も居れば、80歳過ぎの高齢者も居る。
国籍は日本のみならず、北米、、南米、アジア、アフリカなど多岐に渡る。
骨格も異なれば、感性も異なる。
そんな万人に受け入られなければならない、乗り心地、動力性能などのセッティングとなれば、どんなにか難しいことだろう。
最近、一人知り合いになった人がいる。
彼は、某メーカーのテストドライバーだ。
出勤先はテストコース。
日々、横Gやら減速Gを読み取るのが仕事のようだ。
例えば、ABS
言わずと知れた、アンチロックブレーキであるが、10年前のABSと現在のABSを比較すると雲泥の差なのだと言う。
雑誌などでも、制動距離そのものの比較は、数値に表しやすく比較検討しやすいのだが・・・
この効き具合、料理でいう”味わい”みたいなものだろうか・・・
極限にならなければ作動しない、このアンチロックブレーキの聞き具合は、劇的に進化しているのだそうだ。
特にドライの舗装路面では、人間のどんなテクニックよりも、「多分、勝るだろう」と、彼は言っていた。
職業柄、多くは語ろうとしない彼ではあったが、無類の車好きであり、全身全霊で、自動車の挙動を掴み取ろうとする彼の話に、私は食い入るように聞き込んでいた。
きっと、体の中には挙動を感じ取る肉体のセンサーが、普通の人の100倍くらいの感度で感じ取れる能力があるんだろうな、と感じさせてくれた。
こんな人と酒を酌み交わし、企業秘密などを聞き出してみたい、などと思ってしまういけない私がいたりする。
その日、雪のちらつく中で、私と彼の車談義は続くのであった。
(写真と文章の関連は無い)