その少年と出逢ったのは、北海道は道東地区にある街道沿いの、とある滝の下だった。
大学の夏休みを利用してやってきた、ミツバチ族の私はその滝を観ようとオートバイを停めた。
北海道は想像しがたいこんな街道沿いの脇に、大きな滝がゴーゴーと音を立てて流れ落ちている。
その雄大な景色に暫し見入っていると、その滝を別の角度から同じように見入っている青年と目が合った。
同じ旅する仲間のようで、青年の傍らにはキャンピング仕様のランドナー(自転車)が佇んでいた。
青年にこの滝はなんと言う名前なのかを尋ねた。
それから、会話が始まった。
彼は旅に出て1ヶ月程経過している事。
憧れの北海道に自力でやってきた事。
つい一週間前までは、ユースホステルでペアレント(家事手伝いの居候)をしていた事など・・・
実直でパワー漲る青年を観ていると、こちらまで元気を貰ってしまうようだった。
彼のランドナーは綺麗に磨かれ、乞食のような清潔感の無いキャンパーとは一味違った大人びた雰囲気を醸し出していた。
会話も終わり、それぞれが違う目的地へ向かい出発しようとしている時、私は彼に年齢を聞いてみた。
彼の年齢は、なんと16歳だった・・・
当時20歳だった私は彼の事を25歳位の先輩として認識していたのだが・・・
これにはビックリだった。
この時思ったのだ。
高等教育、大学進学・・・
確かにいろんな知識を身につける上で必要な学問を学ぶ施設なんだと思う。
しかし、人間が人間として成長できるのは、学校とは限らない・・・
むしろ、旅先での人との出会い、雄大な景色の中に居る自分の存在意義・・・
少年の延長とでも言える16歳くらいの感性の豊かな年代に、旅をすること・・・
これは今後の人生の価値観や考え方を変えるパワーをもった経験になるのだと思う。
彼は高校を中退して旅に出たと言う。
学校で勉強をする無意味さを遠まわしに言っていた。
そう、若いうちに旅をする事。
とても意味の在ることだと思う。
しかし、今の社会では中々肯定されない環境だ。
あの大人びた目を持った少年、今頃は何をやっているのだろうか・・・・
ふと思い出すのである。