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You make me feel・・・・

あの頃のわたしは彼女(キャロル・キング)にひどく憧れていた。
ちょっぴりハスキーな声。
空気の流れを緩やかに引っ張るようなアンニュイな歌い方。
洗いざらしのブルージーンズ。
シワの残ったラフなシャツ。

形から入るわたしは、あのヘアースタイルを模倣すべく、髪を濡らしては小さな三つ編みを何本も編みこんで、乾くのを待ったものだ。 ほどいた髪は、結果なまはげのような状態になったりしたが、それはそれで十分満足だった。
そうそう、ピアノを弾きながら歌うスタイルを真似すべく、真剣に鍵盤に向かい何度もトライしてみるなんて無謀な挑戦もしたものだった。結果手と足と口が全く協調性のない動きをするので、体がバラバラになりそうになってついには泣く泣く諦めた若き日をリアルに思い出した。

あの青かった時代から早や三十数年が飛ぶように過ぎ去り、わたしも彼女も歳を重ねた。
2008年11月11日 Bunkamura オーチャ-ドホール。
勝手な妄想だが、わたしが編んだ縦糸と彼女が紡いだ横糸で、あの晩は確かに色鮮やかなタペストリーが織りあがったような気がしている。

♪ You make me feel like a natural woman ♪
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西郷南洲も食しただろうか?

日頃あまり出合えない食材を手にしたとき、ベテラン主婦はなんとなく熱くなる。一体どんな風に料理してやろうかと・・・・・・。そしていままでに積み上げてきた味の体験から、ベストと思われる料理法を選択して早速調理に取り掛かるのだ。「隼人瓜」という薄緑をした野菜は、八百屋の店頭ではあまりお目にかかれない食材だ。隼人と呼ばれるということは、薩摩あたりの出なのだろう。
薄くスライスして軽く炒め、自家製梅肉ペーストとあえたら、サクサクとした食感の立派な一品となった。
噛みしめると奥歯のあたりでシャリシャリと小気味良い音が響いて、まるで薩摩の兵が行軍していく足音のような感じがした。
「おいどんも隼人瓜は好きでごわす!!」
西郷さんの声が、もしかしたら聞こえるのではないかと怪しい空想を繰り広げるわたしは、あしたも懲りずに、あさっても飽きずに、この薄緑色の瓜を黙々と調理するだろう。
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思うようにはならないだって、人生はね。

水曜日の朝、幼稚園に登園する みのりちゃん のテンションは、ものすごく高めだった。
ブルーのジャージ姿で両手のVサイン。
「今日は芋掘りなんだっ!! いっぱい掘ってくるからねっ!!」
声が張り裂けそうだった。

金曜日の朝、幼稚園に登園するみのりちゃんのテンションは、ものすごく低めだった。
園の制服姿で顔はうつ向き気味。
「。。。。。。さつまいも。。1個。。。。。。」
声は消え入りそうだった。

事情を聞けば、芋掘りに参加する園児の人数が予定より多くなり、1人あたり1個
の芋しか掘ることができなかったそうだ。

「小さな悔しい体験の積み重ねが、人生においてきっと大きな収穫になる。」
そんな教訓めいた言葉は、今の彼女には到底通じはしないだろう。
ポケットの中にあった黒糖味の飴を1つ小さな手のひらに乗せてあげたら、表情がパッと明るくなって、すっかり元気を取り戻した。
「人生とは何ぞ也?」といったテ-マで語り合うことができるようになるまで、まだあと数十年待たなければならないようだ。

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