貧乏人・島謙作

ただの貧乏人です

終わった技術:携帯OSになれなかった Windows10 ビジネスモデルの崩壊

2018-07-12 16:58:05 | 日記
Windows10 は終わった。まぁ「最後の Windows」と豪語しているくらいだから、終わってしまったことが口にされただけだ。

どうして、Windows10 は終わってしまったのだろう。それは Windows10 Mobile の終了と共に、終わってしまったのである。
Windows10 Mobile がある以上、Windows アプリはモバイルアプリとしての可能性を秘めていた。だが Windows Mobile が幕を閉めた時、Windows ストアを中心とした、Microsoft の Windows を中心としたエコシステム全体が崩壊したのである。

Windows のアップデートに関しては、少なくとも Microsoft は無償化を打ち出している。新規にハードウェアを買う場合や、パッケージを購入する場合は課金されるが、ハードウェアが元気に動いている限りにおいては、現行の Windows のアップデートは無償だ。

- GPS のないモバイル端末には用がない -

スマートフォンの何が便利かって言うと、キラーアプリである「地図アプリとナビゲーション」がある。

まず、あまりスマートフォンを使わないヒトでも、マップとナビゲーションアプリは使うだろう。いくら、Wifi 接続でも基地局レベルでまぁまぁの制度で現在地がわかっても、GPS には叶わない。

かといって、クラムシェル型のノートPC開いて道を探しているのは、あまりにもバカっぽく見えるから、GPS 内臓の Windows ノートってのは永遠に出てくることはないだろう。2 in 1 であろうが、Windows タブレットであろうが、GPSのない「道案内」というキラーアプリは、スマートフォンを超えられないのである。

PC端末の低価格戦争の中では、原価数百円と言えども使い道が考えにくい GPS ユニットを、タブレットPCが簡単に標準装備する事は考えにくい。

- ポータブルデバイスとポータブルアプリがないのにポータブルUIの不自然さ -

Windows10 ベースのPDAサイズのデバイスはないし、キラーなポータブル向けアプリケーションもないのに、無駄に iOS や Android に対抗しようという、UIのデザインの改悪、不自然さ。無理したオペレーションをユーザに押し付ける不可思議さ。それでいて、現行の PC 用オペレーティングシステムとしては他に例のない致命的なヘビーさ。

ネズミが猫になれないのと同じくらい、Windows10 の UI は無理をしている。既に Mobile 版を手放してしまった以上、 Windows というネズミは永遠に猫にはなれない。

どう考えても、Windows ストアアプリが充実してくるという事は考えにくい。もう Windows Store は崩壊している。


- キラーアプリがないゲームだらけの Windows Store -

iOS や Android なら、結局アプリをダウンロードするには、ストア経由になるのだけれど、毎日の生活インフラに必要なアプリが揃っている。というか、今では iOS か Android 端末がなければ銀行振り込みさえできない世の中になっている。銀行だけではなく、身の回りのちょっとした IoT だの なんちゃって AI グッズの制御にも iOS か Android が必要なのだ。ここには Windows の出番すらない。

PC離れ、スマートフォンへの移行、と言った世間の話題は、時代の波ではない。Microsoft + Windows が作り出した身から錆なのである。

にも拘わらず、Windows 環境では、こうした生活インフラに最低限なくてはならないアプリケーションがないのである。Microsoft Store のアプリケーションを開けば、何がキラーアプリケーションなのかが一目でわかる。ほとんどゲームだけなのだ。

Windows には ”10 S” という謎のバージョンがあるが、デスクトップモードを完全に捨てて Edge と Bing に特化したバージョンであるらしい。よほど特化した使い方ではない限り、Pro へのアップデートは残されているので、あまり意味がない。

Windows ユーザは、相変わらず、買い切りのビジネスデスクトップアプリか、アドオンに近いフリーウェアを好んで使う傾向がある。ストアアプリはゲームの配信だけの機能しかない。これは Windows PC というデバイスが、生産型のデバイスであるのに対して、スマートフォン、タブレットが消費型のデバイスであるためなのだ。間違えても、タブレットやPDAクラスのデバイスで見積書やプレゼンテーション資料を作ろうという人間を、私は知らない。「タブレットだけで、Office のデータが読めて、プレゼンテーションできる」と言うが、実際やっているヒトを見たことがない。

結局 PCというデバイスには、もっと便利なデバイスが出てこない限り、キーボードとマウスという入力デバイスは必須なのだろう。いい例が Cortana だ。マイクもついていないPCにどうやって話しかけろと言うのだろう。

Microsoft は、PCのホームユーザのキラーアプリの一つである年賀状ソフトを、無償でストアアプリとして配布するくらいの度胸はないのだろうか。

- イマイチな OneDrive -

Microsoft のクラウド戦略の一つが OneDrive なんだけれど、これが評判悪い。クソ重い、クソ遅いと世間の評判は散々だ。使ってみてわかるのは、恐ろしいほどの Out Going なパケットを吐き出すという事だ。あまりにも凄いので、ウィルスにでもやられたかと思ったくらいだ。

ライバルの Google Drive, DropBox, Apple iCloud へ逃げているユーザが多い。あるいは似て非なる Evernote には完全に後塵を拝している。Evernote は最近実質有料化したが、元々が使い勝手がよく、優良顧客が多かったし、初めから同期コストが低いので、有償化はショックだがボコスコに言われていない。

先発の優秀なサービスが既にある中で、後発の OneDrive がここで越えられるわけがないのだ。ここで Microsoft は Office 356 のサブスクリプション化により、最大容量1Tバイトという荒業に出てきた。月々900幾円がどれほどの価値かはそれぞれだが、私にはそれほどの価値と魅力が Office+OneDrive にあるとは思えない。

この金額なら、LibreOffice+Evernote で十分だ。


- Windows がオープンソース化する日 -

Microsoft が OSS に注力し始めたが、Windows 自体にオープンソースが取り込まれない。Windows が OSS に仲間入りできないのは、標準でコンパイラが付いていないからだ。コンパイラが付いていれば、Windows 用オープンソースプロジェクトが出来上がるのだろうけれど、そのためにはコンパイラもOSに添付しなければならない。となると、開発ツールを「売っている」Microsoft にとっては飯のタネがまた一つ無くなることになる。それから Windows 自体がオープンソースになることも考えにくい。ただでさえスパゲッティの味もよくわからないプロプラエタリだったコードは恥ずかしくて公開できないだろう。

- Windows サブスクリプション化の悪夢 -

Microsoft が GitHub を買収した後の悪夢、オープンソースに力を入れ始めた Microsoft が狙うのは、Windows 自体のサブスクリプション化だろうか。すでにWindows 10 Enterprise E3 in CSP は月額7ドルでサブスクリプション化しているが、引き続きWindows 自体は、完全に無償化しても、パッチのダウンロードには月々何百円かのサブスクリプション費用が必要である、という悪夢だ。もはや Windows OS というモノが、ビジネスのネタにならないのなら、 Windows をサービス化して、サブスクリプションの徴収という動きがあっても驚くべきことではない。Linux のサブスクリプションでよくあるように、「無償、不安定版」と「有償、安定板」、あるいは「サブスクリプション無償のホーム版」「有償のプロフェッショナル版」の二つのバージョンをリリースしてしまう、というのも手かもしれない。

問題は、その際の料金だろう。

プロフェッショナルであれば、有償版しかサポートしない、というのが前提なら、Windows10 Pro なら月々1,000前後が相場になってしまうのか。月々1、000円、年間12,000円、5年で6万円なら、異常な値段だ。これに Office 356 のサブスクリプションを含めれば、3年でそこそこのPCが買える。

まぁ、某 Linux ディストリビューションのデスクトップ版が年間数千円なので、いいところ、月額数百円がいいところだろう。

- Windows さえあれば... の世界は終わった -

いや終わってほしくないのが世間のご意見だろう。

だが、

- 使えないストアアプリ
- 使えない、重い、不安定な OneDrive
- 見捨てられたタブレットフォームファクタ

から、Windows は将来性のない、既に終わった技術である、と思う。