マグロは食卓から消えたか

日本のマグロが値上がりしない理由。寿司屋からマグロが消えない理由。

冷凍マグロが、今年も安い

2007-06-24 22:09:10 | マグロ
21世紀、世界の海ではマグロ資源が枯渇し、マグロを食べることができなくなる。世界のマグロの年間生産量は200万トン。日本のマグロ生産量は25万トン。台湾の生産量も25万トンだが、ほとんどは日本に輸出される。
日本の1年間のマグロ消費量は50~60万トンであり、約60%は輸入マグロである。
そのマグロ資源が世界的に枯渇に向かい、国際的漁獲規制を急がなくてはならない。2006年のマスコミ論調は、マグロ資源の枯渇が目前であると、危機感を強調した。
危機感に同調する消費者が大半だが、マグロ漁業関係者はマグロの値上がりを千載一遇のチャンスととらえ、マグロの漁獲増加に努めた。
この結果として、1997年の日本のスーパーマーケットは、特売用マグロの安売りが続いている。まるでマグロ資源は無尽蔵であり、マグロ資源の枯渇は杞憂のようであるが。

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魚介類のうちで価格が上昇傾向にあるのは、輸入の難しい「しじみ」と加工輸入のできる「さば」である。マグロをはじめ、他の魚介類の小売価格低下傾向にある。資料は総務省統計局「家計調査」0410。
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○次は2006年のマグロ資源の危機を訴えた代表的論調である。週間エコノミストは毎日新聞社発行の経済誌であり。見通しの的確さでは定評がある。しかし、マグロ資源の危機に関しては、東海地震予知のように、根拠の少ない記事であった。

マグロ価格急騰、安いマグロの時代の終わり(週間エコノミスト2006.8.1)
●マグロ価格の上昇
東京・築地市場のマグロ卸売場には、全国の漁港から生マグロと冷凍マグロが次々に運び込まれる。競り落とし、買い付けた仲卸業者がマグロを引き取っていく。しかし、このごくありふれた市場風景に異変が起きている。
ここ数年、安値安定していたマグロの卸売価格が急上昇している。通常、4~6月は近海マグロが入荷するので、冷凍マグロの価格は下がる。ところが今年2006年は、冷凍マグロが高値のままなのである。
漁獲量が多くマグロ相場の目安とされる冷凍メバチマグロは2006年6月、前年比28.3%も高い1kg997円をつけた。農林水産省が6月末に公表した1~5月の全国平均卸売価格でも冷凍メバチマグロは前年同期比で16%上昇している。
値上がりの大きな要因は、世界的な魚食ブームによるマグロ需要拡大。その一方で、マグロ資源保護の強まりによって国際管理機関は世界的に漁獲量を規制するという「需給要因」がある。また、短期的要因としても、原油高に伴う国内遠洋マグロ漁業者の経営破綻による供給減少がある。「マグロ価格を押し下げる要因が見当たらない」というのが、水産業界関係者の一致した見方だ。
●中国のマグロ消費量が増大
築地市場場内の寿司屋には、早朝のマグロセリ見物を終えた外国人観光客が押し寄せる。欧米人に交じり、最近、ひときわ目立つのが中国人観光客である。
「中トロとネギトロをお願いします」
「20食限定のマグロ丼をください」
たどたどしい日本語で注文する中国人観光客が、狭いカウンターを独占する。市場内の寿司店主が語る。
「にぎりセットではなく、単品で好きなネタを注文してくる中国人が増えた。中トロをはじめマグロが一番人気。外国人観光客だとあとの会計で『高すぎる』とトラブルになることがあるが、中国人は滅多にトラブルを起こさない。中国人はマグロの価格を、分かっているからだろう」
●中国内の冷凍マグロ流通整備
中国農村部では今でもマグロをCOパックで売っている。COの化学作用で生肉はピンクが維持されているが、色が新鮮なだけである。COパックでは中身のマグロの鮮度維持はできない。
2003年11月、中国は、日本の海外漁業協力財団の支援を得て、「中国マグロ市場開拓プロジェクト」をスタートさせた。2005年9月には北京に初めて超低温冷蔵庫が竣工し、マイナス60度で凍結して流通させる「コールド・チェーン」の整備が進んでいる。
中国では、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ発生による、肉食離れが進み、健康で安全な魚食ブームが到来した。上海をはじめ沿海部の富裕層から、刺身マグロ需要が生まれ始めた。北京の超低温マグロ流通量は2004年に27トン、2005年は2倍以上の59トンと急拡大している。13億人の中国で、国民の1割がマグロを食べ始めても日本と同じ規模の市場が出現する。
もともとは、安い労働力を武器に中国マグロ漁船が日本向けに大量の安いマグロを輸出していたが、供給過剰による日本の刺身マグロ相場下落を是正するための中国市場開拓だった。今でも、年間2.2万トン(輸入冷凍マグロの10%)の刺身用マグロを日本に供給する中国だが、近い将来、マグロ争奪競争の強力なライバルになる可能性が高まってきた。
●日本の魚介類の輸入増加
豊富な水産資源をもつ魚食大国・日本が、水産物を100%自給していたのは過去の話。今や食用魚介類の自給率は55%にまで落ち込んでいる。刺身マグロに至っては、国内市場に供給される50万トンの60%(30万トン)が海外からの輸入である。その半分を占める台湾のマグロ漁業業界が深刻な事態に直面している。
●台湾は,マグロ漁船194隻を減船
2006年6月8日、日本の水産庁と台湾政府とのマグロ資源確保のための協議がまとまった。2007年末までに台湾の遠洋マグロ漁船を194隻減船し、280隻とすることで合意したのである。
この結果に、日本国内の刺身マグロを扱う関係者からはため息が漏れた。日本と台湾の合意には、2007年以降は西経130度以東の太平洋における大型マグロ漁船(メバチ船)の操業を暫定的に自粛することも含まれていた。
台湾は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)から、大西洋で2006年のメバチ操業隻数を、2005年の98隻から15隻減船し、漁獲枠を16500トンから4600トンまで削減する制裁措置を科せられている。
これらの合意や制裁によって、台湾のマグロ漁獲量の大幅な減少は不可避の情勢だ。業界関係者によれば、1隻当たりのマグロ漁船の年間漁獲量は300~400トン。台湾のマグロ漁船は、2007年末までに194隻削減することから、単純計算で5.8万~7.7万トンの減少となる。ほぼ全量が日本向け輸出に回されていることから、これだけで日本の刺身マグロ供給量は12~16%減少する。
●国際ルール
なぜ、台湾だけが厳しい対応を迫られたのか。背景には、台湾マグロ漁船の国際ルールを無視した乱獲の歴史がある。マグロ資源保護の発端は、1999年の国連食糧農業機関(FAO)による「世界の遠洋マグロ漁船の20%減船の勧告」だった。これを受け、世界一のマグロ消費国である日本は2000年までに当時の20%に当たる132隻の遠洋マグロ船を減船した。
FAO勧告を契機にマグロ資源確保機運が高まり、各海域ごとにマグロ資源管理のための国際機関が順次作られた。ICCATをはじめ、南半球中高緯度海域を対象とするみなみまぐろ保存委員会(CCSBT)、インド洋を対象とするインド洋まぐろ類委員会(IOTC)がそれだ。毎年、各国際機関が海域のマグロ量を調査して加盟国に漁獲枠制限を課すなどの規制を実施している。こうしたマグロ資源確保のためのルールや規制を知りながら、それをかいくぐり世界中で操業を続けたのが台湾のマグロ漁船だった。
台湾漁船への批判は、「日本がマグロを買うから台湾漁船の違法操業が続くのだ」と、日本へも矛先が向けられており、日本としても台湾との減船合意などの形で、世界にマグロ資源確保で努力している姿勢をアピールする必要があった。
日本自身も、脂身が多く高級すし店や料亭で使われるミナミマグロに関し、4月から漁業者に一定の漁獲数量を割り当てる「個別割当管理制度」を導入した。違反した場合には、2年以下の懲役か50万円以下の罰金を科すという措置を講じた。また、CCSBT区域で年間6065トンの漁獲割り当てを自主的に4500トンにまで圧縮する方針を打ち出し、世界のマグロ資源を食べつくしている「日本悪玉論」をやわらげようと必死だ。
しかし、それでも違法操業は続くため、2006年7月5日にはWWF(世界自然保護基金)が地中海と東部大西洋地域のクロマグロ漁の即時禁漁を求めるという強硬手段に訴え、日本のマグロ関係者を困惑させている。
●遠洋マグロ漁業者の経営破綻
2005年末から2006年にかけ、マグロ漁業関係者の間に衝撃が走った。国内有数の遠洋マグロ延縄漁業基地で知られる宮城県気仙沼市の遠洋マグロ延縄漁業の老舗が相次いで破綻したからだ。
2005年12月に任意整理を決めた、菅長水産(菅長茂代表)は、1897年(明治30年)創業、ピーク時には漁船7隻を抱え、年間売上高約22億円(1990年)を計上するほどの有力漁業者だった。しかし、1999年以降、マグロ資源確保のための国の減船政策により、保有船を5隻に減船した。
日本のマグロ漁獲量減少が必至な局面で、台湾・韓国・中国のマグロ漁業者が大量に日本市場に輸出した。供給過剰によって、1990年頃には1kg約1300円だった冷凍メバチマグロの相場は2005年には800円台に低迷した。菅長水産は、さらに原油高騰に伴う燃料費負担増で「漁に出れば出るほど赤字を膨らませるだけ」と、操業継続を断念した。2006年1月から2月にかけて菅長水産の後を追うかのように同じ気仙沼市の老舗4社が任意整理を決めた。
他県でも遠洋マグロ延縄漁業者の廃業は後を絶たない。その結果、1967年に1286隻あった国内の遠洋マグロ延縄漁船の数は、2006年3月には381隻にまで激減した。
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世界のマグロ消費量総量は200万トン、そのうち日本の年間マグロ消費量は50万トンである。日本のマグロ生産量、つまり日本漁船によるマグロ漁獲量は25万トン、輸入マグロはほぼ同量の25万トンと推定されている。日本のマグロ消費量は、世界の4分の1を占める。消費量世界第1位であり、世界のマグロ資源維持には大きな責任がある。
減船の対象となった、日本と台湾のマグロ漁船とその乗組員は、どこに消えたのか。その多くは、マグロ船の国籍を隠すため、海洋管理能力のないパナマやベリーズなどの国に船舶登録し、マグロ漁業を続けている。便宜置籍船といわれる。国際的漁業規制を受けずに、違法操業ができる(IUU漁業)。
日本と台湾の超低温冷凍運搬船が、合法・非合法を区別せず、漁船の冷凍マグロを洋上で買い集め、最終的には日本へ運んでいる。日本国内で売られる冷凍マグロは値上がりもしないし、品不足もない。




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